農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 106 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/10/02 01:47   >>

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「策?」
「ただし、少々荒っぽいがな」
 そう言ってシュバルツはにやり、と笑うと、甲斐姫に次の指示を出す。
「だから済まないが……君は今から少しの間でいい。村人を連れて全力で城に向かって走ってくれないか?」
「そ、それは良いけど……何故?」
「私の傍に居ると、皆の命の保証が出来ないからだ」
 甲斐姫の問いかけに、シュバルツがそう答えを返す。
「だから、私の傍からなるべく離れてくれると助かる……。頼めるか?」
「分かったわ……。でも――――」
 頷いた後に、少し異を唱えようとする甲斐姫に、シュバルツは苦笑気味の笑顔を見せる。
「心配せずとも、私もこのような所で死ぬ気はないさ。自分独りの身だけならば、どのようにでも守れる」
「あ…………!」
 シュバルツのその言葉に、甲斐姫もようやく納得する。確かに、守る対象が背後に居ると居ないとでは、戦いやすさが断然違ってくる。それに、あの追手の軍団の中には、素戔鳴が居るような気配がない。そして、この人は充分強い。ならば、シュバルツの力量を信じて――――今は、独りにする方がいいかもしれない。
「分かったわ」
 そう得心すると、甲斐姫は立ち上がる事を選択した。
「村人たちの事は私に任せて。でも……貴方も充分気をつけてね?」
「ああ」
 シュバルツが頷くのを確認してから、彼女は村人たちの方に振り返る。
「さあみんな立って!! 今から全力で、城に向かって走るわよ!!」
「わ、分かりました!」
「お〜い、皆の衆! 走るぞ〜!!」
「走れない者には、手を貸してやれ!」
 村人たちも妖魔たちも――――互いに手を取り合って走る体勢に入る。

「行けっ!! 走れ!!」

 シュバルツの声と同時に、皆は一斉に走り出した。
(シュバルツさん……!)
 ケイタは走りながら、一瞬シュバルツの方に振り返る。
 シュバルツは、その面に綺麗な笑みを浮かべて佇んでいた。その姿に、何故かケイタの胸が締めつけられた。
(大丈夫……また、会えるよね? シュバルツさん……!)
 ケイタは、そう祈らずには居られなかった。

「……さて、私も急ぐか」

 村人たちが走り去ったのを見届けてから、シュバルツもまた、その場を後にしていた。


「あの森に入ったぞ!! 逃がすな!!」
 素戔鳴の命で村人たちを追いかけていた仙界軍は、逃げる村人たちの姿を視界に捉えたことで、勢いが増して行く。だがその前に、1人の男が立ちはだかった。茶色の革のロングコートを身に纏ったその男は、抜き身の刀を一本片手に携えて、無造作にそこに立っている。
「ムッ!? 何者だ!?」
「恐れるな! 相手は1人だ!!」
「構う事はない! 突っ込め!!」
 仙界軍は怒号を上げて、シュバルツを目指してと言うよりは、彼の背後にある森を目指して突っ込んで行く。刹那――――シュバルツが動いた。
 フッと、彼の姿が消えたかと思うと、いきなり仙界軍の兵士の目の前に現れる。

「何っ!?」

 彼は驚いている間に、シュバルツによって高々と打ち上げられてしまう。後ろから羽交い絞めにされ、綺麗な放物線を描いて錐揉みしながらその兵士は地面に叩きつけらた。彼もまた、『飯綱落し』を自身の決め技として、持っていたのだ。
「な………!」
「こ、こいつ―――!」
 兵士たちは、いきなり目の前に現れたこの男が、先程戦った黒の忍者と同じぐらいの強さを保持していると悟って動揺してしまう。その隙をシュバルツは逃さなかった。兵達の集団に突っ込んで、さらにその動揺を煽る様にその集団の中を駆け回り、混乱を助長していく。彼が懐から投げた焙烙玉や火薬付きのクナイが、ドカン! ドカン! と、あちこちで爆ぜて、炎と煙を巻きあげていた。
「皆落ちつけ! 体勢を立てなお――――!」
 混乱の中、指揮をとろうとした隊長格の何人かが、シュバルツによって倒されてしまう。村人たちを追跡しようとした何隊かは、完全に統制を失って瓦解して行った。
 それでもよく訓練されている素戔鳴の兵達は、村人の追跡をあきらめず、その後を追おうとする。だからシュバルツも、敢えてその兵士たちを森へと誘い入れた。先程自分が仕掛けた、火計の『爆心地』へと――――

 ドカン!!

 派手な音を立てて、森の中から巨大な火柱が上がる。
「おお……!」
「何だ何だ?」
 驚き振り返る、村人と妖魔たち。その燃え上がる炎を見ながら、甲斐姫がポツリと言った。
「きっと、シュバルツさんよ……!」
「え?」
 傍に居た青年がその小さな声に反応する。甲斐姫はそちらには振り返らずに、ただひたすら炎だけを見つめていた。
「きっと……シュバルツさんの『策』が、成功したんだわ……!」
「そ、そうだべか……」
「やっぱりすげぇな……あの方は……」
 皆はしばし、魅入られたようにシュバルツが上げた炎の柱を見つめていたが、やがて甲斐姫ははっと、我に帰った。こんな事をしている場合じゃない。もう、悲劇を防ぐためにも、動き始めないと、と強く思った。
「みんな! よく聞いて!」
 故に甲斐姫は村人たちに呼びかける。
「もう城は目と鼻の先よ! みんなはこのまま――――城に向かって走り続けて欲しいの!」
「あ、ああ……わしらはそれで構わないが……」
「お姉さん―――! シュバルツさんは、どうするの!?」
 村人たちをかき分ける様にケイタが進み出てきて叫ぶ。ケイタは不安でたまらなかった。あの佇んでいたシュバルツの笑顔が、あまりにも綺麗過ぎたから――――。
 どうしても嫌な予感が頭によぎってしまう。
 あの人の姿を見るのが、
 あれで最後になってしまうのではないかなんて――――!
「大丈夫よ、ケイタ君」
 ケイタの想いを察したのか、甲斐姫が力強く頷く。
「私は今から、あの人の所に向かう。必ず、連れて帰ってくるから――――」

 そう。
 とにかくあの人を、『独り』で素戔鳴の所に向かわせてはいけない。
 行くのなら皆で。出来れば、援軍を連れて。
 そうしなければ、この悲劇は回避できない。
 甲斐姫は、そう強く確信していた。
 

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