農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 107 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/10/05 01:29   >>

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「だからケイタ君は、皆と城へ向かって……。 ね?」 
 甲斐姫に諭すように言われて、ケイタもようやく頷く。
「わ……分かった……」
 その言葉に、甲斐姫も微笑みながら頷いた。
「よしっ! じゃあ、俺らはもう少し走るべ!! 後、もうひと踏ん張りだ!!」
「ああ! 我らも協力する! 絶対に皆で城にたどり着こう!」
 村人と妖魔たちが、手を取り合って互いを激励し合う。
(この人たちは、きっと大丈夫ね。必ず城にたどり着くはず)
 甲斐姫はそう確信すると、「じゃあ、お願いね」と、言い置いて踵を返して走り出した。シュバルツを戦場から離脱させるために――――。


 火勢の強い所を避ける様に、甲斐姫は森の中を走る。シュバルツの姿を求めて辺りを見渡していると、幸いな事に、すぐに彼の姿を見つける事が出来た。
「シュバルツさん!!」
「ああ、君か。ちょうど良かった」
 シュバルツの方もどうやら甲斐姫を探していたようで、彼女が呼びかけるとそう言いながらこちらへ近づいてくる。
「シュバルツさん! 今の内に皆と城へ――――」
 そう呼びかける甲斐姫に対して、しかしシュバルツは頭をふった。
「いや……悪いが、私は城へは行かない」

「…………え?」

 何か聞いてはいけない言葉を聞いた様な気がして、甲斐姫は思わず聞き返してしまう。
「ど……どうして?」
「こちらに進軍して来ている兵士の数が、多すぎるんだ………」
 甲斐姫の動揺に気づいているのかいないのか――――シュバルツは言葉を淡々と紡ぎ続ける。
「いくらハヤブサが『独り』で戦っているとはいえ――――あいつなら、これぐらいの力量の兵士たちなら、充分に足止め出来る筈なんだ」
 それが出来ていない、と言う事は
 それが『出来ない』事態が、ハヤブサの方に起こったとしか思えない。
 シュバルツはそう考えていた。
「だから、私は今から、ハヤブサの方へ向かおうと思う。君は、皆と一緒に城へ向かって――――」

「そ、そんな……! 駄目よ!!」

 嫌な予感が当たってしまったと悟った甲斐姫は、思わず大声で叫んでいた。
 どうして
 どうして分からないのだろうか、この人は。
 ハヤブサさんは、決して貴方に『助けて欲しい』とは望んでいないのに。
 貴方に『死んで欲しくない』から、独りで戦う事を、選んだのに――――。

 分かる。
 ハヤブサさんは今、素戔鳴と戦っている。
 そこにこの人を向かわせてしまったら――――絶対に『悲劇』を止める事は出来ない。
 これは、甲斐姫の中の確信だった。

 だから、止めないと。
 何が何でも、引き止めないと。

「………何故だ……?」

 しかし、甲斐姫の想いを図りかねるシュバルツからは、疑問を呈する言葉が出てきた。
「君は先程から、ハヤブサを助けに行く事を反対する事ばかり云うな……。何故だ? 君はハヤブサを見捨てたいのか?」
「違う違う!! ハヤブサさんを――――『仲間』を見捨てたい訳無いじゃない!!」
「――――!」
 甲斐姫の大声に、シュバルツは一瞬気圧される。彼女の瞳からは涙があふれ、その拳が震えていた。今まで共に戦ってきたハヤブサは、もう自分達にとっても大切な仲間だ。決して、見殺しにして良い存在なんかじゃない。
 素戔鳴と独りで戦っているハヤブサは、助けに行かなければならないと、分かっている。あれは、誰か一人の力で抑え込めるような――――そんな生易しい相手ではないのだから。
「だけど駄目なの!! 貴方が独りで行くのは――――絶対に駄目なの!!」
「何故だ………?」
「何度言ったら分かるのよ!! シュバルツさん!!」
 甲斐姫はいつしか大声を張り上げていた。
 必死だった。
 この悲劇へ悲劇へと転がろうとしている流れを、どうにかして引き止めたいと願った。

「……死ぬのよ!? 貴方……!」

「…………!」
「『仙界軍の人たちと戦ったらいけない』って、ハヤブサさんも言っていたじゃない!! 貴方を死なせたくないからハヤブサさんは――――!」
「『死なせたくない』と言うのなら、私も同じだ……。私だって、ハヤブサを死なせたくはない――――」
「あ………!」
 シュバルツの静かな反論に、甲斐姫は一瞬言葉を失ってしまう。

 同じだ。
 二人ともが――――同じ事を、願っている。
 恐ろしい程の『両想い』
 だからこそ、何と――――厄介なものなのだろう。

「さあ、もう行かせてくれないか……。ハヤブサを、助けに行きたい」
 そう言って、シュバルツがずい、と、前に進み出ようとする。その行く手を、甲斐姫が両手を広げて立ち塞がった。
「その気持ちは分かるけど……! でも、待って……! せめて、援軍が来てから――――」

「援軍は、おそらく来ない……」

「な――――!」
 シュバルツの言葉に絶句する甲斐姫に、彼は更に言葉を重ねてきた。
「もしも、先に行った孫尚香の援軍の要請がスムーズに行っているのであれば、時間的にも距離的にも――――もう援軍と合流できていなければおかしい……。それが出来ていないと言う事は――――」
「………!」
「おそらく、援軍の要請に失敗しているのだろう……」
「そ、そんな………!」
 的確に現状を分析するシュバルツに、甲斐姫は反論できる言葉を持たない。茫然と佇む甲斐姫にシュバルツは優しく微笑みかけると、再び己が望みを告げた。
「さあ、だからハヤブサを助けに行かせてくれないか? 彼を死なせたくないんだ」

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