農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 108 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/10/07 09:45   >>

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「…………ッ!」
 甲斐姫は歯を食いしばった。
 シュバルツの言い分も分かる。素戔鳴と戦っているハヤブサの方を、楽観視してはいけない事は分かっている。
 だが、ハヤブサの気持ちも分かる。ハヤブサは『シュバルツに死んで欲しくない』と、望んでいる。彼を死なせたくない一心で、今も命をかけて懸命に戦っている。そこにシュバルツを行かせてしまったら――――その努力を全部、水の泡にさせてしまう。そんな予感がした。
 結果、シュバルツを失ってしまって慟哭する。あんな、悲劇的なハヤブサの姿を、また見てしまうくらい、なら。

 駄目だ。
 やはり、止めないと。
 何が何でも、引き止めない と。

「…………ダメ……!」

 震えながら、涙を流しながらも甲斐姫は、尚も両手を広げてシュバルツの前に立ちはだかった。
「村人は……村人たちは……どうするの……?」
 震える声で問う。だが、その問いの答えはあっさり返されてしまった。
「もう城は目と鼻の先だ。村人たちが城の前で助けを求めれば、劉備殿の事だ。例え城に劉備殿の部下しかいなかったのだとしても、それを無下にはしないだろう」
「……………!」
 何処までも正論なシュバルツの言葉に、甲斐姫は反論の余地を失って行く。確かにそうなのだ。今の時点では、シュバルツの提案に乗る事こそが――――『正しい』

 でも、駄目なのだ。
 このままでは絶対に、駄目だ。
 このまま流れに任せていけば――――また、シュバルツもハヤブサも『救えない』と悟る。

 そんなのは、嫌だ。
 絶対に 嫌だ。

「さあ、もう良いだろう。君も村人たちと共に、劉備殿の城へ行ってくれ。その方が1人でも2人でも――――村人たちを救える筈だ」

「………そうよ。『救いたい』のよ……!」

「…………?」
 不意に紡がれた甲斐姫の言葉の真意を測りかねて、シュバルツは少し首を捻る。甲斐姫はたまらず叫んでいた。涙を飛び散らせながら――――

「そうよ!! 私は救いたいのよ!! ハヤブサさんも!! 村のみんなも!! そしてシュバルツさん……! 貴方も!!」

「…………!」
「貴方を死なせたくなくて……救いたいと願って、ハヤブサさんは頑張っている!! 貴方が死ねば、哀しむ人が居るのよ!! 何故そんな単純な事が分からないの!? シュバルツさん、貴方は――――!!」
 甲斐姫の怒鳴り声に、シュバルツは押し黙ってしまう。甲斐姫は尚も懸命に叫び続けた。とにかくシュバルツに分かって欲しい、独りで行くのは思いとどまって欲しい――――そう、彼女は祈り続けていた。
「ハヤブサさんは、ずっと、貴方を探してた……! やっと見つけた貴方を目の前で失って……ハヤブサさんがどれだけ哀しんだか分かる……!? 今だって……1人戦いの場に留まったのも、貴方に『生きて欲しい』と願っているから――――!」

「そう……そうだな……。ハヤブサは………」

 不意に響いてきたシュバルツの声に、甲斐姫は顔を上げる。すると、少し哀しげに微笑むシュバルツと、視線があった。

「こんな私に、手を差し伸べてくれた……。それこそ、命かけて――――」

 歪な『モノ』で構成されているこの身体故に、自分は普通に生きて、死ぬ事が出来ない。
 ハヤブサが懸命に伸ばして来てくれている手を取るには、自分は既に、闇にまみれすぎているのに。

「それでも構わない」
 ハヤブサは、笑ってそう言ってくれた。
「愛している」
 そう言って、抱きしめてくれた。

 これ以上
 何を望めと言うのだろう。

「そんなハヤブサだからこそ……私は――――」

 得難い人。
 貴重な、優しさを持っている人。
 だから
 だからこそ――――

「救いたいんだ」

「―――――ッ!」
 何処までいっても話が平行線のままである事に、甲斐姫は思わず天を仰ぐ。ハヤブサを助けに行きたいと願うシュバルツの意志は、酷く固いのだと悟らざるを得なかった。
 でも
 それでも――――
「シュバルツさん………」
 甲斐姫は小さく息を吐くと、静かにシュバルツに呼びかけた。
「ハヤブサさんは、決して貴方に『助けて欲しい』なんて望んではいないわ……。それでも………」
 行くのか、と、問う甲斐姫に、シュバルツは迷うことなく頷いた。
「ああ………行く」
「……………」
 甲斐姫は、酷くやるせない気持ちになっていた。
 どうしてだろう。互いが互いを、これ以上ないと言うほど思いやっているのに――――。

 何故
 どうして
 行きつく先には、『悲劇』しか待ち受けていないの――――?

(駄目だ……! やっぱり止めないと……!)
 このままシュバルツがハヤブサを助けに行けば、確かにハヤブサの身体は救えるかもしれない。でもその結果、シュバルツが死んでしまったとしたら。
 それは、ハヤブサの心を絶望へと叩き落とすものだ。
 やっぱり駄目だ。
 何としても、止めないと。

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