農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 111 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/10/12 01:21   >>

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 そう言って孫尚香は、懸命に関羽を見つめる。そのまっすぐな眼差しは、決して逸らされる事はない。
「むむっ」
 関羽は髯をしごきながら、少し考え込んでしまっていた。前方の森で火の手が上がった所を見ても、この前方で何かが起こっている事は、ほぼ間違いないと見て取れた。しかし、関羽には孫尚香の後ろに控えている『妖魔』の存在が、どうしても引っかかってしまう。
「………………」
 妖魔たちの方も、先程からちらちらと関羽がこちらに視線を走らせている事に気がついていた。自分達の存在が、援軍に二の足を踏ませている――――そう感じ取った彼らは、孫尚香の方へと寄って行って、小声で話しかけた。
「尚香さん……やはりワシらの存在が、邪魔になっているのでは……?」
「我らはここで、離脱した方が――――」

「何を言っているの!? 貴方たちには、何もやましい所など無いでしょう!?」

 傍から離れようとした妖魔たちを、彼女は大声で引き留める。
「貴方たちは何も悪い事をしていない! だから堂々と胸を張って――――ここに居なさい!」
「尚香さん……」
「しかし――――」

「そうだべ。あんた方は、何も悪くない」

 戸惑う妖魔たちに、同じように孫尚香に付き添ってきた村人たちが声をかける。
「おらたちは一蓮托生だ。あんた方を見捨てて、自分達だけ助かろうなんて考えてねぇ」
「あんたたちがこの城に受け入れられない、と言うのなら、おらたちもこの城に入るのをあきらめるだけの話だ。だから気にするな。傍におったらええ」
「…………!」
 村人たちの言葉に、その場から去りかけていた妖魔たちの足が止まる。それを見た孫尚香は頷いて――――再び前を向いた。

「関羽将軍!! お願い!!」

 もう一度、孫尚香は関羽に呼びかける。

「助けを求めている人たちのために――――門を開けて! 援軍を出して!!」

「父上………!」
 孫尚香たちの間で交わされた会話の内容が聞こえていただけに、関平は父親の方を振り返る。関平にはあの妖魔たちが、どうしても『悪』だとは思えなかった。
「父上……! 門を開け、援軍を出しましょう! あの様子では、本当に助けを求めている人たちが、居るやもしれません」
「む………」
 息子の言葉に関羽は唸るが、しかし彼の険しい表情は変わらない。あの者たちの言葉を信じて、城の門を開けるのは簡単だ。だが万が一、騙されていた時の事のリスクを考えると、どうしても城の門を開ける事に、二の足を踏んでしまう。
 確証が――――確証が欲しかった。
 あそこに居る孫尚香は間違いなく本物で、門を開けても良いのだと言う確証が。
『騙される事が常』と言う戦場にあって、信じることの難しさを、関羽は痛感していた。

「関羽将軍……!」

 孫尚香は、関羽に呼びかけながら、歯を食いしばっていた。
 玄徳の傍に居る時はあまり感じないのだが、こんな時どうしても痛感してしまう。自分は所詮、政略結婚で玄徳に嫁いできた身。玄徳は愛してくれているが、その家臣たちからは、自分は決して認められている存在ではないのだと言う事を。もしも、自分がもっと彼の奥方として家臣たちに信頼されていたならば――――この援軍の呼び掛けも、もっとスムーズに事が運んで行っただろうに。

「…………ッ」

 でもここで、自分がこの城の開城と援軍をあきらめてしまう訳にはいかない。後からここに逃げてくる、村人たちや妖魔たちのためにも。彼らの生き残る道を、自分が閉ざしてしまってはいけないのだ。悔しさを噛み殺して、孫尚香は顔を上げ続けた。自分は、訴え続けるしか術がないと知っていた。

 やがて、火の手から追われるように――――森の中から村人たちが飛び出してくる。
 そして、その間に混じる様に妖魔たちも。
「――――ムッ?」
 村人たちの間に混じる妖魔たちの動きを見て、関羽は我が目を疑った。何故なら、その妖魔たちが――――村人たちを助けているように見えたからだ。
「…………!」
 関平にも妖魔たちが村人たちを助けているように見えたらしく、同じように息を飲んでいる。
(いいや、まだ分からない)
 しかし関羽は城門を開ける事をまだ躊躇う。妖魔たちの動きが、偶然、そんな風に見えただけかもしれない――――どうしても、そんな事を考えてしまう。そこに、皆から少し遅れて、甲斐姫が走り込んできた。
「尚香!! こんな所で何やってんのよ!?」
「甲斐!?」
 友人の怒鳴り声に驚いて、孫尚香は振り向く。そして、その友人の横に、もう一人この場にいなければならない人物の姿が無い事に気が付いた。
「甲斐――――シュバルツさんは?」
 孫尚香のその問いかけに、甲斐姫の顔が、くしゃっと哀しげに歪む。
「行っちゃったわ……! ハヤブサさんを助けに……!」
「ええっ!?」
 友人の驚く声を聞いた瞬間、甲斐姫の中で何かが堪えられなくなってしまったのか、彼女は大粒の涙を流し始めた。
「私………止められなかった……」
「…………!」
「止めたかったのに………何にも、できなかっ………!」
「甲斐………」
 そのまま泣きじゃくりだす友人の姿に、孫尚香もかける言葉を失う。そのまましばらく、甲斐姫の嗚咽だけがそこに響き渡っていたが、やがて、このまま膠着状態ではいられない事に彼女は気が付いた。何故なら――――森の中から、シュバルツの火計をかいくぐった仙界軍が現れたからである。
「仙界軍が……!」
「――――!」
 孫尚香の声に、泣きじゃくっていた甲斐姫もはっと、顔を上げる。森の中から抜け出してきた仙界軍が、隊列を整えて、こちらに向かって突進してくるのが見えた。

「このぉ!!」

 泣いている場合じゃないと悟った甲斐姫が、涙を散らしながらも踵を返す。そんな友人の姿を見て、孫尚香もまた覚悟を決めた。
「みんな!! なるべく城門の方へ下がって!!」
 村人たちにそう呼びかけながら、彼女もまた、仙界軍の方へ向かって馬を走らせる。今はとにかく一人でも二人でも、村人たちを救わねばと思った。関羽からの信頼を得られない以上、態度で訴えるしかないのだ。

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