農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 134 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/11/13 07:40   >>

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  「第5章」


 ブン!!

 幕舎の中に、木刀が空を切る音が響き渡る。寝台の上で身を起こしているリュウ・ハヤブサが木刀を素振りしている音だった。あちこち傷を負ったその身体には白い包帯が巻かれているが、ハヤブサの素振り自体の動きはとても綺麗な物だった。

 ブン!!

 彼は目を閉じ、左手一本でひたすら素振りを続けている。木刀は正中線からまっすぐに、迷いなく振り下ろされ続けている。もうどれくらい彼がそれを続けているのかは不明だが、彼の上半身からは汗が滴り落ちていた。

「お、やっているな」

 ハヤブサにそう声をかけながら、宮本武蔵が幕舎の中に入ってくる。ハヤブサは素振りを止めて顔を上げると、その面に笑みを浮かべた。
「木刀の貸与、感謝する。良い木刀(もの)だな」
「何、戦の合間に手慰みに作ったものだ。良かったらそのまま使っていてくれ。こういう時――――素振りをする得物は要るだろう?」
「そうだな……」
 ハヤブサはそう言うと、一つ大きな息を吐いて、木刀を中段に構えた。そして左手一本でまた素振りを始める。

 ブン!!

 また、迷いなく綺麗に振り下ろされる木刀。
「…………」
 武蔵はしばらく腕を組んでハヤブサが素振りをする様子を見守っていたが、やがてふっとその面に笑みを浮かべた。
「……ハヤブサ。早く傷を治せよ。また、お前と手合わせがしたい」
 武蔵のその言葉に、ハヤブの面にも笑みが浮かぶ。
「……そうだな。こちらからもぜひ――――」

「こらっ! 早く傷を治したいのなら、あんまり無茶しちゃ駄目だよ!? ちゃんと休んでないと、また傷が開いたりするんだから――――」

「――――!」
 そこにねねが入ってきたため、二人の会話は中断される事となった。ねねはハヤブサに持ってきた食事を脇へ置くと、すたすたと傍に寄ってきた。
「気分はどうだい? 顔色は、だいぶ良い様だね」
「ああ。無理はしていない。ただ……少しでも身体を動かしておかないと、なまってしまうからな」
「そうだぞ? 素振りは剣士にとっては呼吸をするようなものだ。こんなの、無理の内にもはいらねぇよ」
 武蔵のその言葉に「ふ〜ん、そんなもんかねぇ」と呟くと、持ってきた手ぬぐいと包帯を取り出した。
「ほら、とりあえず木刀を置いて、これで汗を拭きな。終わったら、包帯を取り替えてあげるから」
 ねねの言葉に、ハヤブサも大人しく従った。


「――――うん! たいぶ傷も良くなってきているね。若いって良いね〜!」
 ハヤブサの包帯を変え終わったねねが、そう言って満足そうに頷いている。しかしそれに対してハヤブサは、「もっと早く治って欲しいのだがな……」と、少し零し気味に呟く。彼の視線の先には、折れて動かない足が横たわっていた。
「こればっかりは仕方がないよ。日にち薬だ」
 ねねはそう言いながらハヤブサに食事を差し出す。
「ほら、これをしっかり食べて、少し休みな。ちゃんと食べて、ちゃんと寝る。これが結局、身体を治すのには一番効くんだから」
 ハヤブサは寧々から黙って食事を受け取ると、丁寧に手を合わせて食事に向かって一礼をして――――それから食べ始めた。
(……食欲もある様だね……。良かった……)
 ハヤブサの食事の様子を見ながら、ねねは秘かに胸を撫で下ろす。一番最初にシュバルツを失った時のハヤブサの様子からすると、今の彼はずいぶんと落ち着いているように見える。やはり、過去に戻ってシュバルツを救える『希望』があると言う事と、太公望の「最後にはお前の『縁』を使う」と言う言葉が、ハヤブサを支え、立ち直らせているのだろう。
 しかし――――
「……………」
 ねねは、無言でハヤブサの寝台の横に立てかけられている龍剣の柄を見る。そこに巻かれているシュバルツのロングコートの切れ端が、いつの間にか二つになっていた。

(……人の『死』に慣れる事なんてない……。やはり、ハヤブサは傷ついているし、苦しんでいる……)

 この切れ端の数が、そのままシュバルツを救えなかった『回数』だ。おそらく自戒と自責の念が込められているであろうその切れ端に、ねねは何とも言えない気持ちになる。

 でも――――だからと言って、今のハヤブサに自分が何を言ってあげられるだろう。

 そう考えた時に、言ってあげられる言葉が咄嗟に思い浮かばなくて、ねねは少し困ってしまう。結局はハヤブサ自身の『強さ』に頼るしかない、静観するしかないのかなと、苦笑するしかなかった。
「ところで――――太公望の策ってあれからどうなっているんだ? ちょっとは進んでいるのか?」
 武蔵からの質問にはっと我に帰ったねねは、「え〜と……」と、首を少し傾げた。
「何かいろいろやっているみたいだけどね。傍から見ていても訳が分からなくて――――」
 ねねがそう言っている間にも、幕舎の外から太公望の話し声が聞こえてくる。何人かの武将に指示を出し、その後ろからかぐやがいそいそとついて行っていた。また誰かを、『時渡りの術』で過去へと送るらしい。
 暫く無言でその様子を幕舎の中から見つめていた3人であったが、やがてハヤブサがポツリと口を開いた。
「……俺は、早く傷を治さなければならないな……」

「焦るなよ、ハヤブサ」

 その声を聞き咎めた武蔵が、そうハヤブサに声をかけてくる。
「そうだよ、ハヤブサ。今はきっちりと怪我を治す事だけを考えるんだ」
 ねねも笑顔でそう声をかけてきた。
「太公望だって、ハヤブサの怪我が治るのをちゃんと待ってくれるよ。だから、良いイメージを持つんだ。今度はきっと、何もかもがうまくいくってね」
「イメージか……」
 茶から立ち上る湯気を見つめながらハヤブサはポツリと呟く。
「………………」
 そのまま押し黙ってしまうハヤブサ。その姿は思い詰めているようにも見えるし、何かに集中しているようにも見えた。

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