農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 137 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/11/17 00:32   >>

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「そうなんだ……」
 孫尚香の言葉に、甲斐姫は一瞬複雑な表情をする。だがすぐに、その面に笑みを浮かべた。
「すごいじゃん!! 頑張って来てよ!!」
「甲斐………」
 無理やり笑みを浮かべている友人の姿に、孫尚香は逆に瞳を曇らせた。
「私はここで……応援しているからさ」
「一緒には来ないの?」

「えっ………?」

 友人の言葉に驚く甲斐姫に、主である北条氏康が声をかけてきた。
「今から行く過去に、後もう一人だけ連れて行く事が出来るんだ」
「だから甲斐……。私は、貴方に一緒に来て欲しいんだけど……」
 そう言って孫尚香は、甲斐姫に手を差し出す。
「あ…………」
 甲斐姫は、しばし友人の差し出された手を眺めていたが、一歩後ずさって首を振った。
「ううん、遠慮しとく」
「甲斐………」
 瞳を曇らせる友人に、甲斐姫は努めて笑顔を見せた。
「あ、ほら! 頑張っているかぐちんの事をほっとけないっていうかさ! もうちょっとだけ、ここで落ち着いておきたいっていう感じで……!」
 そう明るく切り返してくる甲斐姫を見て、孫尚香の瞳はますます曇ってしまう。そんな二人の様子を見て、氏康はふっとため息をつくと、甲斐姫の頭に手を伸ばしてきた。そのまま彼の武骨な手が、彼女の頭をグシャッと、撫でる。
「………坊主、お前がそう言うなら、もう無理に誘いはしねぇが……あんまり考えすぎるなよ」
「御館様……」
「無い頭で考えた所で――――ろくな答えなど出やしねぇんだからな」
「な――――! 余計なお世話ですっ!」
 眉を吊り上げて怒る甲斐姫に、北条氏康は軽く笑った。
「そう言い返せるのなら、大丈夫だな。坊主、留守は任せたぞ」
「は、はい!」
 氏康の言葉にしゃきっと姿勢を正した友人の姿を見て、孫尚香もようやく笑顔になる。
「じゃあ甲斐。行ってくるからね」
「うん! 御館様! 尚香! 気をつけてね!」
 ぶんぶんと元気よく手を振って、二人を見送る甲斐姫。そんな彼女に見送られながら、氏康と孫尚香は、かぐやの『光陣』の中へと進んで行って、そのまま消えて行った。

(いいな……。尚香には、できる事があるんだ………)

 二人を見送った後、甲斐姫は何とも言えない気持ちになる。
 本当は、少しも大丈夫ではなかった。
「考えるな」と言われても、どうしても考え込んでしまう。

 あの戦で自分は
 どうすれば
 どうすれば――――よかったのだろう。

 守られてばかりだった。
 本気で役に立たなかった。

 あの人に、余計な怪我を負わせて
 止める事が出来ず
 揚句――――間に合う事も出来ずに

「…………!」

 ギュッと、握りしめられる拳。

 何がいけなかったのだろう。
 何を、間違ってしまっていたのだろう。

 ただ明確に分かる事は、『今の自分は力不足だ』と言う事だけだった。

 悔しい。
 強くなりたい。
 強くならねばならない。
 だけど、一朝一夕で強くなれる訳など無い事も、彼女はよく分かっていたから。

「……………」

 何をどうすればいいのか分からなくなって、彼女は立ちつくしてしまう。

 先程の友人の誘いを断ったのもそうだ。
 自信が無かった。
 もしも自分が戦いに関わったせいで、また尚香たちの足を引っ張ってしまったら――――

 そう考えてしまうと、身動きが取れなくなってしまう。
 こんな自分が、堪らなく嫌だった。
 でも、ならば、どうすればよかったと言うのだろう。
 いくら考えても、答えなど出はしないのに。

「甲斐様……? 大丈夫ですか?」

「――――!」
 目の前に自分を気遣う様な、かぐやの優しい顔があって、甲斐姫ははっと我に帰った。
(いけない……! 何をやっているの!? 甲斐! かぐやの方が大変なのに―――)
 甲斐姫は一つ息を大きく吸い込むと、おもむろに両の手で自身の頬を、パシン! と、強く叩いた。
「か、甲斐様!?」
「おっしゃああっ! 気合注入!!」
 茫然とするかぐやの前で甲斐姫は、一声、そう雄たけびを上げると、ニカッと笑ってかぐやの方に振り返った。
「大丈夫だよ! かぐちん! 心配してくれてありがとう!」
「か、甲斐様……!」
 そろり、と、かぐやの手が甲斐姫の方に伸ばされようとする。だがすぐに、太公望の彼女を呼ぶ声が飛んで来て、その動きを遮った。
「かぐや!! 何をしている!! 次の術を急げ!!」
「――――ほら、かぐちん、呼んでるよ。行って来ないと」
「ですが、甲斐様……!」
「私は大丈夫だよ! それよりも、かぐちんお腹すいてない? おにぎり握って来てあげるね!」
 そう言うと甲斐姫は、小走りに走りだした。
(とにかく今は、後方支援に徹しよう)
 術をかけ続けるかぐやを、せめて力づけてあげられるように。
 戦に向かう皆に、余計な気遣いをさせないように――――
 それが、今自分の出来る精一杯なのだと、彼女は感じていた。

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