農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 138 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/11/17 23:09   >>

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(甲斐様……)
 無理して笑い続ける友人の姿に、かぐやの胸が締め付けられる。
(やはり……早く、先の悲劇を御救いしなければならない……)
 強く感じてかぐやもまた顔を上げた。太公望がどうやって時間の流れを書き換え、状況を動かしているのかが自分では分かりかねるが、前に進んでいるのは確かな事なのだろう。

 だから、自分は太公望の求めるままに、術を発動させ続ける。
 友人の真の笑顔を取り戻すためにも――――

「今度こそ、悲劇を救う」
 皆がそれぞれ強い想いを込めて、動き続けていた。そうして、幾日かが過ぎて行った――――。


「……………」
 寝台に腰をかけ、日課の素振りを終えたハヤブサは、ふうっと息を一つ吐いていた。
 身体に巻かれていた包帯は、大分取れた。痛みも、かなりましになって来ていた。ただ一ヵ所を除いて――――
「…………」
 ハヤブサは立ち上がろうとして、足に力を込める。しかし。

「――――ぐッ!」

 激しい痛みを感じて立つ事に失敗してしまう。
(……当たり前か。完全に折れていたんだ。そう簡単にくっ付く筈がない――――)
 そう感じて、ハヤブサは思わず苦笑してしまう。こんな怪我、簡単に治るのはシュバルツぐらいなものだ。当たり前な話だが、こんな時、自分はどうしたって普通の人間であると言う事を、否が応でも痛感せざるを得ない瞬間でもある。
(やはり……俺にはDG細胞は感染(うつ)らないのか……。あれだけ濃密に触れ合っているのに……)
 そう感じて、ため息をつく。シュバルツならばこんな怪我、1時間としないうちに治ってしまうのだろう。

 感染(うつ)してくれていいのに。

 ハヤブサは強く思う。
 俺も、お前と同じ『人外』になれれば――――
 お前が今感じている苦しみや孤独を、共に背負ってやる事が出来るのに。
『お前は独りじゃない』
 本当に、そう思わせてやる事が出来るのに――――。

 だが現実は、何処まで行っても自分は人間の身体のままだ。ため息を付きつつ、ハヤブサは杖を持って寝台から立ち上がろうとする。体力づくりとリハビリを兼ねた歩行訓練に出るつもりであった。―――と、そこに、伏犠がかぐやを伴って入ってきた。
「よう、ハヤブサ。調子はどうじゃ?」
 そう陽気に声をかけてくる伏犠の後ろで、かぐやが軽く頭を下げてくる。ハヤブサも立ち上がるのを止めて、寝台に腰を下ろしたまま軽く会釈をした。
「おかげで怪我はだいぶ良くなりました。しかし……」
 そう言いながらハヤブサは、動かぬ己が足に視線を落とす。それを見て伏犠は「ふむ」と、一声発すると、持ってきた袋の中からある物をハヤブサに差し出した。
「…………!」
 それを見たハヤブサの顔が、一瞬強張る。何故なら、伏犠の手の中にあった物が『仙桃』であったからだ。
「ああ、そう警戒せんでも良いぞ?」
 ハヤブサの『仙桃』に対する複雑な心情を察した伏犠が、苦笑しながら声をかけてくる。
「これはわしの管轄する農園で採れた、正真正銘、わしの手持ちの『仙桃』じゃ。変なしがらみも無い故、遠慮せずに食べてもらって構わん」
「……………」
 ハヤブサは、とりあえずそれを無言で受け取ったが、すぐにそれを食べる気にはなれなかったようだ。
「気持ちはありがたいが……何故、これを俺に?」
 至極もっともな質問を、ハヤブサは伏犠に投げかけてきた。
「うむ、それはじゃな……」
「太公望様の『策』が滞りなく進み……後は、ハヤブサ様を待つだけになりましてございます」
 伏犠の後を受けて、かぐやが答える。その言葉に、ハヤブサは驚いた。
「本当か!? それは……!」
「はい。ですので、早急にハヤブサ様の傷を癒すようにと……。私も治癒の術の心得がございますので、微力ながらお手伝いさせていただきたく存じます」
 そう言って頭を下げるかぐやに、ハヤブサはただただ息を飲むしかない。
「存外、早く策が進んだようじゃ。その進捗ぶりに、太公望の方が目を回しておったぐらいでのう!」
「…………!」
「さあ、ハヤブサ様、仙桃をお召しになってください。その力を借りて、ハヤブサ様の足の傷を治します故――――」

「何故だ………?」

 思わず仙桃を持つハヤブサの手が震えてしまう。
「何故、とは……?」
「『シュバルツを助けたい』と言うのは、妖蛇討伐には全く関係の無い話だ。俺の個人的な願いなのに、何故皆そこまで………」
「それはもう、言わずもがなじゃろう、ハヤブサ」
 ハヤブサの言葉に伏犠は苦笑する。
「『仲間』の危急には、手を差し伸べずには居られない――――それが、人の子と言う者ではないのかね?」
「――――!」
「ここに至るまでにお主は、仲間のために戦い続けてきた。皆を助けておるのだ。それが実を結んだ。……ただそれだけの事と、わしは思うぞ」
「あ…………!」
 茫然とするハヤブサの肩を、伏犠がポンとたたく。
「だから堂々と仙桃を食べて、身体を治せ、ハヤブサ。今はまだ、状況が整っただけにすぎん。総てはこれからだ」
「分かった」
 伏犠の言葉に、ハヤブサもようやく仙桃を食べる決意がついた様だ。彼は伏犠に向かって軽く頭を下げると、仙桃をかじった。一口食べるごとに仙桃の薬効成分がハヤブサの身体に沁みわたり、力がみなぎってくる。

「ハヤブサ様、怪我をなさっている方の足をお出しください」

 仙桃をハヤブサが食べ終わるのを待ってから、かぐやは彼に声をかけた。言われたとおりにハヤブサが足を出すと、玉串である榊の枝を、そっとハヤブサの足に当てた。
「……………」
 口の中で誦が詠唱されると同時に、榊の枝が金色に光り出して――――
「―――――」
 足からもたらされていた痛みと熱が、劇的に引いて行くのが分かる。ハヤブサは目を閉じて、その感覚を味わっていた。
「もういい筈じゃ。ハヤブサ、立ち上がってみるんじゃ」

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