農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 140 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/11/20 10:16   >>

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「そうか」
 ハヤブサの答えに武蔵は満足そうに頷くと、その面にニカッと笑みを浮かべた。
「ハヤブサ! 今度は絶対勝てよ? で、帰ってきたらもう一回手合わせをやろうぜ!」
「承知した」
 ハヤブサも頷き、ほっと一つ息を吐いた。以前と同じかそれ以上に動いてくれた身体が、ハヤブサには素直に嬉しく感じられた。
(良かった……。これでもう一度、シュバルツを助けに行ける……)
 とにかく一度龍剣を取りに幕舎に戻ろうと、ハヤブサは踵を返す。そこで、木陰から隠れるようにこちらの様子を伺っていた甲斐姫と、ばったり目があった。

「――――!」

 甲斐姫は一瞬強張った表情を見せたが、すぐに踵を返して走り去って行ってしまった。
 甲斐姫はあの戦から帰って来てからずっとこんな調子で、まだ一度も口をきいていない。ただ、あんなに明るく闊達だった姫が、ずっとふさぎ込んでいるのが、ハヤブサには気になっていた。

「…………」

 夢中でひとしきり走った後、甲斐姫は後ろを振り返る。誰も追って来ていない事を確認してから、彼女は足を止めて、ほっと息を吐いた。
(良かった……。ハヤブサさん、身体治ったんだ……)

 これであの人は、もう一度、あの戦場へ行くのだろう。
 助けられなかった人を助けに――――。
 強い人だと甲斐姫は思う。
 対して自分は駄目だ。
 本当ならばもう一度、自分もあの戦場に舞い戻って、何もかもをやり直してみたいとも願うけれども。

「…………!」

(駄目だ………!)
 甲斐姫はそう思って頭を振る。
 前の戦場でも、全く役に立てなかった自分。行った所で、また、同じように役に立てなかったら。また――――あの『悲劇』が防げなかったら。

 怖イ……!

 今度こそ、自分は立ち直れなくなってしまうかもしれない。
 そう感じてしまうと、自分の足は全く動かなくなってしまう。
 駄目だ、こんな事では、と、自分で自分を強く叱咤してみるけれども、一旦怯えてしまった自分は、本当にもうどうしようもなくて。
「……………」
 でも、ハヤブサさんの身体は治っていたから、きっと、すぐにでもあの戦場に行くのだろう。ならば、見送りに行かないと、と、甲斐姫は思う。
 大丈夫。
 きっと、今度あの戦場に行く時にあの人が手を伸ばすのは、私ではない。
 もっともっと頼れる仲間が、彼の周りには居るから――――

 ふうっと、一息大きく吐きだすと、甲斐姫は太公望とかぐやの居る方に向かって歩き出していた。


「来たな、リュウ・ハヤブサ。身体は大丈夫か――――などと聞くのも野暮、と言うものだな」
 太公望の言葉にハヤブサは無言で頷く。気力体力ともに充実している。今すぐにでもあの戦場に戻り、シュバルツを助けに行きたいぐらいだった。
 頷いたハヤブサに、こちらが憂える事は最早何も無いのだと悟った太公望は、フッと軽く笑ってから口を開いた。
「では……約束通りお前の『縁』を使って、あの戦場へ飛んでもらう。一度に過去へ飛べる人数は限られているのでな……。また、お前が共に戦う仲間を選んでくれ」
「分かった」
 ハヤブサはそう頷いて振り返ると、武将たちが皆こちらをじっと見つめている。どの武将たちも皆『自分を連れて行ってくれ』と訴えているのが分かった。
 だが、ハヤブサは最初に声をかける人物を、既に心に決めていた。だから、武将たちの間に分け入ってその人物の姿を求め、見つけたと同時に迷わず手を伸ばした。

「えっ………?」

 ハヤブサから手を伸ばされた甲斐姫は、何度も確認するように、ハヤブサとその手を見る。しかし、自分に向かって伸ばされた手は微動だにしないし、ハヤブサの視線も逸らされる事はない。
「え……? え……? 私……? どうして――――」
 かなり戸惑っている甲斐姫に向かって、ハヤブサは自分が手を伸ばした理由を口にした。
「もしも、お前が先の戦いで何か戦いに手を抜いたとか、判断を誤ったと俺が感じていたなら――――こうして、手は伸ばさぬだろうな……」
「…………!」
「お前は、常に全力だった。その時その時で、出来る最良の手を、お前は打っていた筈だ」
「あ…………」
「俺も、そうだ……。それでも、防げなかった悲劇。この無念は、同じ戦場でしか晴らせない……。俺は、そう思っている………」

 普通なら、取り返せない。
 悔しいまま、悔やんだまま
 一生この傷を負い続けなければならない所だ。

 だが、取り返す機会(チャンス)がある。
 かぐやのおかげで。皆のおかげで。
 ならば――――

「行こう、お前も」

 龍の忍者は、真っ直ぐ手を差し伸べる。

「敗けっぱなしは、悔しいだろう」

「―――――!」

 良いのだろうか。
 許されるのだろうか。
 もう一度自分が、あの戦いに挑んでも――――

 甲斐姫は、まるで何かの許しを請うかの様に、周りを見回す。すると、自分のすぐ近くで控えていた、主である北条氏康と、目があった。

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