農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 142 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/11/23 23:12   >>

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  「第6章」


 次にハヤブサが目を開けた時、あの村の風景が、目の前に広がっていた。
「こ、これは……」
「私たち……戻れたの……?」
 ハヤブサの横で、甲斐姫と孫尚香が茫然と呟く。
「そうらしいな」
 そう言いながらハヤブサも、周りの様子を見回していた。
 ここは確かに――――あの村の風景だ。あの時見たものと同じ風景。
 ただ違うのは、今回はケイタの『縁』を使っていないから、自分達の横にケイタの姿が無い――――ただそれだけだと、ハヤブサは感じていた。
(シュバルツは、何処だ……?)
 確か以前の時間の中で聞いたケイタの話によると、この時間帯はいつも畑の方の手伝いをしていると言うシュバルツ。早く彼に会いたいと願い、ハヤブサが一歩、足を進めようとした時。

「誰だ!? お前たちは!!」

 鋭い一喝を浴びて、思わず足が止まってしまった。ふと見ると、村の男衆たちが、鋤や鍬をその手に構えて、警戒心も顕わにこちらを睨み据えている。
「――――!?」
 流石にハヤブサもこれには驚いて、慌てて顔を覆っている覆面を外した。ここまで警戒される理由がまるでわからず、ハヤブサは困惑してしまう。
「いや……その……」
 敵対する気が無い意志を示そうとするのだが、村人たちは後ずさるばかりだ。
 と、そこに甲斐姫と孫尚香が、ハヤブサの前に飛びだしてきた。
 ハヤブサを庇う――――と言うよりは、怪しい物を村人たちから隠す、といった色合いが強かった。
「ご、ごめんなさい! 私たち、怪しい者じゃないんです!」
「私たち、シュバルツさんに会いに来たんですけど……」

「何だ、お前さんたち、シュバルツさんの知り合いだっただか?」

 そう言うと同時に、村人たちの警戒心がふっと緩む。
「ちょっと待ってけろ! シュバルツさんを呼んでくるから!」
 見覚えのある、朴訥な村人たちの姿に戻って、ハヤブサたちはホッと胸を撫で下ろしていた。
「それにしても、ずいぶん警戒されちゃったわね。どうしたのかしら?」
 孫尚香の言葉に、甲斐姫も首を捻る。
「やっぱり……ケイタ君が居ないせいかな?」
 前の歴史ではケイタと一緒にこの村に来た。確かに、今回はその縁を使っていないから、ハヤブサたちの傍にケイタはいない。しかし――――
「いや、これはそんな単純な問題でもなさそうだ」
 周りの様子を見ながら、ハヤブサが口を開く。確かに、村人たちはあからさまに敵意を向けてきてはいないが、こちらの事をまだ少し、遠巻きに警戒している。以前の歴史の村人たちには、明らかに見られなかった反応だ。
(これが、太公望がこの時間軸に手を加えた故の物なのか? しかし――――)
 それを判断するには、まだ材料が少なすぎると感じたハヤブサが少し考え込んでいると、そこに村人たちに伴われて、シュバルツが姿を現した。

「ハヤブサ!?」

 愛おしいヒトがこちらを見つけて、走り寄ってくる。
「シュバルツ……!」
(ああ、生きている)
 当たり前の話だが、立って動いているシュバルツの姿を見て、ハヤブサは素直に嬉しさを感じてしまう。だが、涙を流す事も、その身体を抱きしめる事もしない。まだ、戦いは始まったばかり。彼を完全に助け切るまでは、油断してはいけないのだとハヤブサは感じていた。
 それでも、ハヤブサが驚くほど柔らかい表情をしていた事に変わりはない訳で。
 それを見ていた孫尚香が、甲斐姫に小声で囁いてきた。
「今度こそ、ちゃんと助けたいわね」
 その言葉に、甲斐姫も頷く。
「ええ、本当に――――」

 この戦いが、皆がこのように幸せそうな笑顔で終われればいい。
 甲斐姫も心底、そう祈っていた。


「それにしてもハヤブサ……。よく来てくれたな。もう会うことは難しいと思っていたが――――」
「お前、俺を舐めているのか?」
 シュバルツのその言葉に、思わずハヤブサは彼を睨みつけてしまう。
「随分探した……! この俺が、お前を見つける事を、簡単にあきらめる――――とでも思っているのか?」
「いや、そう言うつもりではないが……」
 ハヤブサの言葉に、少し困惑したような表情を見せる愛おしいヒト。ハヤブサはそんなシュバルツに笑顔を見せながら、その肩を叩いた。
「とにかく、会えて良かった……。嬉しいよ、シュバルツ……」
「ハヤブサ……」

「シュバルツさん、その人たちは誰?」

 シュバルツの脇から、ケイタがひょこっと顔を出してくる。どうやらこの時間軸でも、ケイタはシュバルツの傍にくっついているようだ。
「ああ、こいつはリュウ・ハヤブサと言って、私の知り合いだ。そして、そちらの二人は……」
「あ、私たちの事?」
 シュバルツと視線が合った女性二人が、ケイタの前に進み出てくる。
「『はじめまして』 私の名前は孫尚香よ」
「それで、私の名前は甲斐。よろしくね。ケイ――――」

 ドカッ!!

 いきなり孫尚香が甲斐姫をどつき倒したものだから、甲斐姫はびっくりしてしまう。
「痛い!! 尚香!! 何するのよ!?」
「それはこっちの台詞よ!! 貴女こそ、いきなり何を言い出すのよ!?」
「えっ?」
 少し眉をひそめる甲斐姫を、孫尚香がガシッと抱きかかえて、その耳元で小声で囁く。
「いい? 私たちとこのケイタ君は、あくまでも『初対面』なのよ? それなのに、名前を知っていたらおかしいでしょう!?」
「あ…………!」
 孫尚香の指摘に、甲斐姫もようやくどつき倒された事に合点がいった。
 確かにそうだ。
 今目の前に居るケイタは、自分達と共に時を遡っている訳ではないから、自分達の事を知っているはずもない。それなのに自分がケイタの名を呼んでしまうのは、おかしいにも程がある事象だった。
「そっか………」
 甲斐姫は、納得したようにポリポリと頭をかく。ただ、前の時間軸の中で、ケイタと少し仲良くしていた甲斐姫は、一抹の淋しさを感じた。たった1人でもシュバルツのために叫び、皆のために涙を流し、自分の事を『お姉さん』と慕ってくれたあの少年は、ここにはもう居ない。そんな経験を、ケイタは『していない事』になってしまっているのだから――――。
 だけど、今目の前に居る少年が、そう言う優しさと強さを兼ね備えている事に間違いはない。だから、今度のケイタともきっと仲良くなれるだろうと、甲斐姫は確信していた。

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