農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 146 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/11/28 20:45   >>

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 その問いかけに、ハヤブサが立ち上がった。
「避難場所については、俺から提案がある。ここから西に10里ほど行った場所にある、劉備殿が統治する城だ」
「劉備殿……」
『劉備』の名に、場が少しざわつく。
 前の時間軸では、村人たちは『劉備』の事をあまり知らなかった。だが、この時間軸では――――
「劉備殿か……確かに、あの方ならば、わしら民を受け入れてはくださるだろうが――――」
「民を思いやる、名君だという噂だからな……」
「城下町にも行商に行ったが、そんなに悪い印象は受けなかったなぁ」
 ぼそぼそと、そう話す声が聞こえる。どうやらこの村人たちは、ある程度『劉備』と言う人物を把握しているようだった。

「しかし……我らはともかくとして、妖魔の方々も、劉備殿は受け入れてくれるか――――?」

「―――――!」
 1人の村人の言葉に、話をしていた村人たちもはっと息を飲む。再び重い空気がその場を支配しそうになった時、「大丈夫です!」と、声を上げる者が居た。彼女はすくっと立ち上がると、大声で名乗りを上げた。

「私の名前は孫尚香! 劉玄徳の妻です!!」

「玄徳様の!?」
「おお………!」
 ざわめく村人たちを鎮めるように、孫尚香は言葉を続ける。

「玄徳様は、困っている人たちを見捨てる様な方じゃありません! 必ず、受け入れてくれます!」

「あの城に居る関羽殿には事情を説明してある。こちらが避難して行っても、必ず門を開いてくれる筈だ」
 孫尚香をフォローするように、ハヤブサが口を開いた。
「ハヤブサ……!」
「そうでなければ、俺だってそこを避難先に勧めたりはしない。絶対に大丈夫だ」
 驚いたようにこちらを見るシュバルツに、ハヤブサは微笑みかけた。
「だから安心して、避難を進めて欲しい」
「分かった」
 シュバルツはハヤブサの言葉に頷くと、改めてもう一度、皆に呼びかけた。

「聞いての通りだ。もう一度言う。皆、今すぐこの村から避難をしてくれ」

 シュバルツの言葉に、村人たちはシン、と静まり返る。
(避難をしなければならない、と、頭では分かっているのだろうが、納得できないのだろうな……。事実、今は桃の収穫期だ。やらなければならない仕事が山積しているし、明日は感謝の祭りもある)
 村人たちの気持ちを慮って、シュバルツは瞳を曇らせる。と、そこに今まで黙っていた長老が立ち上がった。

「……皆、避難の準備を始めよう」

「長老様!?」
 驚く村人たちを鎮めるように、長老は振り向いた。
「これは、天の御意志だ」
「しかし………!」
 意見を述べようとした村人の1人を手で制すると、長老は言葉を続けた。
「ここを離れがたく思う皆の気持ちも分かる。我ら百姓にとって土地は財産であり、命だ。我らは何十年もかけてこの地をここまでに育ててきた。それを手放してしまえば、元に戻すのに、また莫大な労力がかかる事も分かっている」
(ああ、前の時間軸でも同じような事を、この人は言ったな……)
 長老の話を聞きながら、ハヤブサはそう感じていた。違うようで同じ時間をたどっている。繰り返される事もあるのだろう。
「しかし、それも死んでしまえば総てが終わりだ。我々は幸いにして、襲撃される事も、そこから逃げる術も、指し示されている。ならば……生きるために差し出されている手を、掴むべきではないのか」
「長老様……」
「それに、土地神の代理であるシュバルツ様も『逃げよ』仰っておるではないか。我らはここで死ぬべきではない。生きるべきなのだ」
「―――――!」
 長老の言葉にシュバルツは驚き、村人たちははっと気が付いた様にシュバルツを見る。
「我らは今一度、考えねばならんのだ。なぜ今年に限って神様が『人型』であったのか。我等に意志を伝える『言葉』を持ちえた存在であったのか……その、意味を」
 長老の言葉に静まり返る村人たち。あちこちで、咽び泣く声すら聞こえてきた。
「土地神様の……強い『意志』を感じぬか?」
「……………」
 長老のその言葉に、シュバルツは答えなかった。ただ、彼の拳が強く握りしめられ、小さく震えている事に、ハヤブサは気が付いていた。

「分かりました……」

 やがて、下を向き、咽び泣いていた村人たちが顔を上げる。
「長老様、シュバルツさん……我々は、避難の準備を始めます」
「何がどうなろうと……生きる事が、大事だからのう……」

「みんな………」

 硬い表情をしていたシュバルツの瞳が、哀しみゆえに曇る。
「済まない……! 私の力が足りなかったばかりに――――」
「気にする事無いだ! シュバルツさん!」
 頭を下げようとしたシュバルツの動きを、村人たちが止めた。
「これは仕方のない事なんだ。シュバルツさんのせいでは絶対に無いから――――」
「そうだべ。あんたはよくやってくれている。寧ろこちらがお礼を言わねばならないぐらいだ」
「……………!」
 村人たちにそう言われ、シュバルツの面に笑みが浮かぶ。
「ありがとう………」
 その表情に、村人たちの顔も和み、場が和やかな物になる。
 だがハヤブサは見ていた。
 シュバルツの拳がきつく握りしめられ、小さく震え続けているのを。
 ただずっと、見つめ続けていた――――。

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