農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 132 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/11/10 14:54   >>

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「ごめんなさい……! 私がもう少し、しっかりしていれば――――」
 報告の途中から、既にしゃくりあげていた甲斐姫は、涙ながらに謝罪の言葉を口にする。それに対して「いや、違う」と、声を上げたのは関羽だった。
「一番責めを負うべきは拙者だ……。拙者がもう少し早く、尚香殿を信じられていたら………もう少し、あの仁王に対して踏み込めていたら――――」
「関羽将軍……」
 戦が終わって城に帰った後も、ずっと硬い表情を崩さなかった関羽。彼は目の前であの『悲劇』を見てしまったのだ。目の前に居ながらそれを防ぐ事が出来なかった事実は、彼に想像以上に重くのしかかって来ているのだろう。
「…………」
 太公望は、孫尚香たちの報告を、終始無言で聞いていた。打神鞭を両手で持ち、無表情でその場に佇んでいる。

「太公望殿、お願いがござる」

 やがて関羽が、何かを思い切ったように顔を上げ、太公望に声をかけてきた。
「何だ?」
「拙者を――――もう一度、過去に戻してはもらえないだろうか?」

「何?」

 関羽のその言葉に、少し眉をひそめる太公望。それに対して関羽は、ガバッとその前に膝を付き、頭を下げて懇願しだした。
「あの時、拙者がいろいろと決断出来なかったばかりに、結局、あの義士たちを救う事が出来なかった……! これは、拙者にとって一生の不覚でござる! 出来ればもう一度過去に戻り、今度こそ、あの二人を救いたいのだ!!」
「…………!」
「関羽さん……!」
 関羽の言葉に、泣きじゃくっていた孫尚香と甲斐姫もピタリと泣きやみ、思わず顔を上げていた。それに対して太公望は、腕を組んで、小さく息を吐いていた。

「……関羽将軍。話を聞く所によれば、素戔鳴と言う仙界の将軍の目には、あの『シュバルツ』と言う青年は、人の子にとって『害悪な存在』と言うふうに映っているようだ。下手をしたら本当に、そなたたち人の子に、害を為すかもしれぬ。それでも――――将軍は、かの青年を助けたいと言うのか?」

 太公望からの試すような質問に、しかし関羽は迷わなかった。
「無論だ」
 力強く頷く。
「あの青年は、他者を守ると言う事に何の躊躇も無かった。最期まであのハヤブサと言う青年を守りとおしていた。そのような事をする青年が『悪』とは、拙者には到底思えぬ」
「たとえそれが『人間』ではないとしてもか?」
 更に試すような太公望の質問にも、関羽は揺るがなかった。
「『良い行い』をする者に、『人』も『妖魔』も、その区別をされるべきではない」
「―――――!」
「たとえあの青年が『人』であろうが『妖魔』であろうが、あの青年の行いは『善良』だ。ならば、助けるべき者だと、拙者は思う!」
 後の世に『神』にまで祀り上げられる篤実な男が、こう断言する。それに対して太公望は「ふむ」と頷いてから、孫尚香と甲斐姫の方に視線を走らせた。
「そなたたちは、どう思う?」
「あの人は、村人たちにとても慕われていました。私も、あの人が『悪』だとはとても思えません。助けることが可能なら、助けるべきと思います!」
 そう言い切る孫尚香の横で、甲斐姫も頷いていた。
「私はあの人がどれだけ村人を守るために身体を張っていたか、一部始終見ていました! あの人は絶対に『悪人』なんかじゃありません! あの人は、あそこであんな風に死んでいい人なんかじゃないんです!!」

「そうか……」

 太公望は、手の内で打神鞭をトントン、ともてあそびながら眼を閉じていた。何事かを熟考しているかのようにも見える。と、そこに、1人の人間が乱入してきた。

「シュバルツを助けるために、俺を過去へ戻してくれ!!」

「―――――!」
 その声の主の正体を知った皆は、一様に息を飲んでしまう。何故ならそれは――――先程戦場から大怪我をして帰って来て、幕舎に伏せっていた筈の、リュウ・ハヤブサの姿がそこにあったからだ。
「駄目だよ! ハヤブサ!! 大人しく寝ていないと――――!」
 そう言って必死にハヤブサを引き留めようとするねねの手を払いのけると、彼は太公望の方へふらふらと歩み寄ってきた。
「お願いだ……! 俺を過去へ戻してくれ……! 今度こそ、シュバルツを助けたいんだ!!」
 そう。
 自分は、もう何度も素戔鳴と刀を合わせた。
 素戔鳴の剣の軌道がどう動き、雷撃がどう走るか――――それこそ、今の自分ならば、手に取る様に分かるのだ。
 ならば、立ち止まっている暇はない。
 すぐにでも、愛おしいヒトをこの手に取り戻したいと、願う。
 例え皆に反対されても、自分はもう引く気はなかった。
「無茶だよハヤブサ!! まずは身体を――――!」
「……………」
 太公望は、フッと小さなため息をつくと、つかつかとハヤブサの方へ歩み寄ってきた。

「リュウ・ハヤブサよ」

 怜悧な声でハヤブサに呼びかけると、彼はおもむろに打神鞭でハヤブサの折れている方の足を打った。
「うぐッ!」
 当然その衝撃に今のハヤブサが耐えきれる訳もなく、彼は太公望の前に膝をついてしまう。そんなハヤブサに向かって、太公望は打神鞭を眼前に突きつけてきた。
「まず貴様は――――傷を治せ! その身体で過去へ飛んだ所で、一体何が出来る!?」
「…………!」
 正論を言われて、ハヤブサはギリ、と、歯を食いしばった。
 確かにそうなのだ。まずは、身体を治さなければならいと言う事を、ハヤブサも頭では理解していた。
 だが今回の戦で、ケイタ達親子は助かっているし、村人たちと妖魔たちも、ある程度は助けられている。戦の功績的には満足してしまってもいい様な内容なのだ。それに皆が納得してしまって、シュバルツが置き去りにされてしまう――――そうなってしまう事を、ハヤブサはとても恐れていた。
「焦るな、龍の忍者」
 ハヤブサのそんな心情を何となく察したのか、太公望が苦笑しながら諭す様な声を出す。
「誰も、『シュバルツ』を助けないとは言っていない。ただ、今はまだその時期ではないと言っているのだ」
「…………!」
 驚き、息を飲むハヤブサに向かって、太公望は更に言葉を続ける。
「関羽将軍も、もちろんハヤブサ、お前も――――過去に戻ってもらう必要があるが、今すぐは駄目だ。いろいろと段取りを踏む必要がある」
 ここまで言うと太公望は、ハヤブサから視線を上げて、時を渡る能力のあるかぐやの姿を求めた。
「かぐや! かぐやはいるか!?」
「はい、ここに―――」
 太公望の呼び掛けに応じて、なよ竹の巫女かぐやが、楚々と前に進み出てきた。

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