農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 163

<<   作成日時 : 2014/12/22 23:20   >>

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「ハヤブサ。劉備殿の援軍は、あてにして良いのか?」
「…………!」
 シュバルツからの問いに、ハヤブサは一瞬考える。だがすぐに「ああ」と頷いた。あの孫尚香の援軍の要請に、あの関羽が応えぬ筈がない。
「そうか……。なら、援軍が来るまでが勝負だな。何処まで持ちこたえさせることができるかだ」
 シュバルツのその言葉に、皆が頷く。ハヤブサも、入りかけていた肩の力が少し抜けた。
 そうだ。前の時とは状況が違う。
 あの時は夜で、敵味方の区別もつかなかった。そして、素戔鳴の襲撃がいつあるかも分からない、切迫した状況だった。そしてここに至るまでに、既に村人が何人も犠牲になっていた。
 しかし今は違う。陽の光の元、味方の妖魔たちが額に挿している鳥の羽根のおかげで、敵味方の区別がつく。避難も早く始めたおかげで、まだ誰も犠牲になっていない。問題は素戔鳴の襲撃がいつあるかだが、百々目鬼軍と素戔鳴軍の間に協力関係は存在しない。百々目鬼軍の襲撃と、素戔鳴軍の襲撃は、全く別物と考えて良いだろう。
 まだ油断はできないが、素戔鳴軍が来ないのなら、この戦場にかかってくる負担が全然違ってくるはずであった。
「正真正銘、撤退戦と言う訳だな」
 そう言うハヤブサにシュバルツも頷く。
「ああ。だから皆に指示を出して、前の部隊を最小限に、そして、後方の守りを厚くする」
 そう言いながらシュバルツが、拾った木の枝で即席の陣形図を書いて行く。
「殿はハヤブサを中心として、お前たちで勤めてくれ。ただ、決して突出しすぎず、無理はしないこと。常に味方との距離を意識して、敵を一隊ずつ、確実に仕留めて行ってくれ」
「分かりやした」
「任せておいて下せえ!」
 意気高く頷く妖魔たちに、シュバルツも笑顔を見せる。そしてハヤブサの方に視線を移し、少し真剣な眼差しをした。
「ハヤブサ……。お前がこの戦いの要だ。頼んだぞ」
 その言葉に、龍の忍者は我が意を得たりと言わんばかりの笑みをその面に浮かべた。
「任せておけ」
 実際ハヤブサは、天にも昇らんばかりの心地であった。シュバルツから盤石の信頼を感じる――――それがどんなに喜ばしい事か。その信頼に全力で応えねば、と、ハヤブサは拳を握りなおした。
「それでは、頼んだぞ」
 そう言うとシュバルツは、踵を返して走り出した。前方の部隊に指示を出しに行くのだろう。
「…………」
 ハヤブサはその愛おしいヒトの後ろ姿を見送ると、前方の百々目鬼軍へと視線を返した。その軍隊が巻き上げる砂埃を、厳しい目つきで睨み据える。その手が龍剣の柄に伸びると同時に、武器を構えた妖魔たちが、ハヤブサの後ろを守る様に固めた。

「シュバルツ殿がやけにあんたの腕を買っていたが、あんた……強いのか?」

 そのうちの妖魔の1人から、そう問われる。ハヤブサはそれに、振り向きもせずに答えた。
「俺は、為すべき事を為すだけだ。俺の腕は、お前自身が見極めろ」
 その言葉に、妖魔たちもにやりと笑う。
「へっ! 言いやがるな!」
「そうまで言うならその力……存分に見極めさせてもらう」
「……好きにしろ」
 後ろでいきり立つ妖魔たちに、ハヤブサは多少苦笑しながら言葉を返す。なる程、シュバルツが『腕が立つ』とお墨付きをしただけの事はある。彼らからは、それぞれ自らの技量に対する自信の程がうかがえた。

「………来るぞ!」

 迫りくる砂埃と怒号に、ハヤブサは龍剣を抜刀して身構える。後ろの妖魔たちもそれに倣った。
(シュバルツ……待っていろ……! 今度こそこの戦いに勝利して、お前とキョウジの未来を取り戻してみせる!)
 強い決意と共に、龍の忍者は今まさに、敵を迎え撃たんとしていた。


「敵が来たの!?」

 先頭を走っていた甲斐姫は、背後からの情報に驚きの声を上げる。
「…………!」
 行かなければ、と、甲斐姫は後ろを振り返ったが、すぐに頭を振った。自分は今、先頭を走っている。その自分が、足を止めてしまう訳にはいかないのだ。
「みんな!! 走って!! 足を止めては駄目!!」
 懸命に声を張り上げて、皆を先導する。すると、そんな彼女に声をかけてくる者が居た。

「お姫さん!! あんた、戦えるだか!?」

「えっ!?」
 驚く甲斐姫に、その村人は更に言葉を続けてきた。
「あんた、武装して、立派な武器を身につけているではないか……。戦えるだか!?」
 その問いに甲斐姫は、戸惑いながらも頷く。
「え、ええ。一応……。人並みには――――」

「ならば頼む!! 皆のために、後ろの守りについてくれ!!」

 驚き、意気を飲む甲斐姫に、村人は必死の形相で言葉を続けてきた。
「おらは農作業しかしたことが無くて、戦い方はよく分からない……。だけども、皆を守りたい! おらは村からよく行商に出ていた。だから、劉備殿の城へも、皆を案内できるから――――」
「…………!」
「だから頼む!! お姫さんは、皆を守りに行ってやってくれ!! シュバルツさんも『後ろの守りを厚くしろ』と言っていた……! こんな、何も出来ねぇおらみたいな人間でも、何かの役に立ちたいんだ!!」
 そう叫んで必死に頼んでくる村人。彼女は一も二もなく頷いた。
「分かったわ……! まかせて。皆の案内をよろしくね!」
「ありがとうごぜぇます!!」
 その村人に案内を任せると、甲斐姫は踵を返して走り出した。

(ここからね……! いよいよ、『借り』を返せるときが来た……!)

 甲斐姫はそう感じて、拳を握りしめていた。
 氏康やハヤブサが戦う前に言っていた通り、この戦場で受けた屈辱は、この戦場でしか返せない。普通ならばこんな機会も無いままに――――苦い後悔を噛みしめ続けなければならないのだ。だからこれは――――本当に、皆が与えてくれた、絶好のチャンスなのだと、甲斐姫は感じていた。
(見ていて……! 御館様……! 尚香……! 今度こそ、私は後悔の無い様に戦って見せる――――!)
 甲斐姫の決意に応えるように、腕の中の金拵えの鞭が、チャリ、と、音を立てていた。

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