農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 151 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/12/05 00:55   >>

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 そう言って村人は、祭壇の方に手を合わせて頭を下げる。
「シュバルツさん……。えと……つまり、この人たちは………」
 おずおずと、甲斐姫が声をかけて来た。
「泣いている、貴方の姿を見て………」
「―――――!」
「どうも……ここの『土地神様が泣いている』と、感じちゃったみたいで………」

「えっ?」

 思わず変な表情を浮かべて聞き返すシュバルツに甲斐姫は頷くと、更に説明を続けた。つまり、泣いているシュバルツの姿を見た村人たちが、とぼとぼと集会所を後にしたかと思うと、同じように泣きながら、誰からともなく祭壇の準備を始めたのだと。そして見るみるうちに祭壇の上は、お供え物であふれかえっていったのだと。
「ここの村人たちは、本当に……ここの土地神様が、大好きなんですね………」
 そう言う甲斐姫の瞳も、涙ぐんでいる。
 甲斐姫は以前この村を訪ねてきた時、村人たちの朴訥ともいえる信仰心に触れていた。だから、この村人たちの行動も、素直に腹に落ちたのである。
「あ…………!」
 茫然としているシュバルツの肩を、ハヤブサがポン、と叩いた。
「どんな形であれ、ちゃんと村人たちはお前の心を受け取っている」
「ハヤブサ……」
「お前がこの村の人たちを守るために、どれだけ心を砕いて来たか――――ちゃんと、伝わっているんだ……」
「…………!」
 だから大丈夫だ。何も心配するな。と、言うハヤブサに、シュバルツは少し複雑な表情を見せる。そこに、ケイタをはじめとした人間と妖魔の子供たちが、「シュバルツさん!」と、走り寄ってきた。
「ケイタ! みんな!」
 子供たちと同じ目線になる様に座りながら彼らを迎えたシュバルツが、ケイタに問いかける。
「妖魔の子たちはどうするんだ? 一旦自分達の村に帰るか?」
 シュバルツの問いかけに、妖魔の子供たちは首を振った。
「ううん、今、お姉ちゃんが1人、村の方に走って行ってくれたよ! 僕たちはここに居るから、迎えに来てもらって、一緒に逃げようって!」
「みんなが居てくれるから、ぼく、怖くないよ!」
「あのね、さっき、おばちゃんからお菓子もらったの!」
 そうやって皆が口々に元気よく答えてくるのを、シュバルツは「そうか」と、穏やかに微笑みながら聞いていた。すると、その中の1人がシュバルツに声をかけて来た。

「……シュバルツさん……泣いていたの?」

「えっ?」
 きょとん、とするシュバルツの瞳の付近を、その子供は指差した。
「だって……涙の跡が……」
「あ…………!」
 慌てて瞳の周りをごしごしと拭く。
「あはは……ごめん、ごめん。大したことじゃないから――――」
 そう言ってシュバルツは顔に笑みを浮かべるのだが、子供たちの方は逆に、ふにゃ、と、涙で表情が歪んで行った。
「嫌だ……! シュバルツさんが泣いたら、嫌だよう〜〜〜!」
「僕たちも、悲しいよ〜〜〜!!」
 そう言いながら子供たちが、次々と泣き出してしまう。
「ちょ……ッ! 本当に大したことないって、言っているのに――――!」
 シュバルツは慌てて子供たちの頭を撫でたり肩を抱いたりするのだが、子供たちの泣き声の大合唱は、ますます大きくなっていくばかりで。
「こらっ! お前たち!! シュバルツさんに迷惑かけちゃだめって、言っているだろう!!」
 村人の1人が、子供たちに声をかけてくる。しかし。
「おっちゃんだって、泣いているじゃないか!」
「うるさい!! おっちゃんだって……! おっちゃんだってだなぁ……!」
 ボロボロと涙を零していたその村人は、子供たちと一緒に泣きだしてしまった。
「大作さん! 泣くのやめろって! でないとわしだって……ッ!」
 そのまま次から次へと大泣きする連鎖が大人の方にも広がって行く。
「いやあの! 私はもう泣いてなどいないから――――!」
 シュバルツは必死になって呼び掛けるのだが、村人たちの方が既に聞いていない。そのまま大泣きの大合唱が始まってしまう。
「何か……すごいな……」
 ある意味収拾がつかない目の前の事態に、ハヤブサももう苦笑するしかない。
「済まないな……。こちらの感情に、時々こんな風に過剰に反応されることがあって……。なるべく感情の起伏を面に出さないように、注意してたんだが――――」
 頭をかきながらそう言うシュバルツに、ハヤブサも「そうか」と返事をする。シュバルツの気苦労の一端を、垣間見た気がした。
「しかし、まずったなぁ。うっかり緩んでしまったのは、私のミスだ」
「―――どうして、緩んだんだ?」
 シュバルツのその言葉に、ハヤブサは少し意地わるく問いただす。それにシュバルツが一瞬言葉にぐっと詰まった後、じと目でこちらを睨んできた。
「……どうしても、私の口から言わせたいか?」
「いや? 別に?」
 シュバルツのその言葉に、ハヤブサは素っとぼける。
 シュバルツの気持ちは分かっているから、改めて確認する必要はない。強いて言うなら、彼をからかって遊びたいだけだった。
「―――もう、知らん!」
 そう言いながら、赤くなってそっぽを向く愛おしいヒト。ハヤブサは思わず声を立てて笑っていた。至福のひと時だった。

「冗談はともかくとして……良くも悪くも、情が深い村だな。ここは……」
「ああ。そうだな」
 ハヤブサの言葉にシュバルツも頷く。
「朴訥で、とても優しい。だが、この人たちのそんな所を、私は気に入っている」
 そう言いながら村人たちを見つめるシュバルツの瞳に、どこか誇らしげな光が宿っているのは気のせいだろうか。
 だが、こういう村人たちだからこそ――――いきなり闖入してきたシュバルツを受け入れ、妖魔と交流を持つ事も、可能にしたのだろう。その外見の恐ろしさに惑わされる事も無く。

 ある意味得難く、そして優しい人たち。
 シュバルツが命がけで守ってしまうのも無理からぬことだと、ハヤブサは思った。

 しばらくそうして、泣き声の大合唱をしていた村人たちであったが、やがてその中の1人が、とんでもない事を叫び出した。
「よしっ!! 今日はもう、土地神様を偲んで、飲むべ!!」

「ちょ……! ちょっと待ってくれ!! 流石にそれは止めてくれ!!」

 流石に今の言葉に肝を冷やしたハヤブサは、思わず叫んでいた。残念ながら敵の襲撃はもう間近。のん気に宴会など開いている時間は無かった。

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