農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 152 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/12/07 21:21   >>

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 皆の注目を集めたハヤブサが訴える。それで皆も、ようやくはっと我に帰ったようだった。
「そうだな。今はこういう事をしている場合では無いべ」
「とにかく早く、脱出しないと―――」
 皆は口々にそう言うのだが、村人たちはそこから動こうとしなかった。まだ、未練の様な物があるのだろう。
(これは……何か区切りをつけさせてやらないと、皆、動けないだろうな……。しかし、どうしたものか――――)
 シュバルツがそう考えていると、そこに村長と長老がやってきた。

「シュバルツ殿……。少し、見ていただきたい物があるのですが、よろしいですかな?」

「あ、ああ。構わないが……」
「では、こちらへ―――」
 そう言って、村長と長老がシュバルツを導く。村人たちの間を通り抜け、祭壇を通り過ぎ――――広場の一角に生えている、大きな樹の所に案内された。
「シュバルツ殿、これを御覧くだされ」
 長老が指し示した先の木の根元に、その小さな祠はひっそりと在った。
「それは……! もしかして――――」
 シュバルツの言葉に長老が頷く。
「左様。お察しの通り、ここの土地神様を祀った最初の祠じゃ。今広場にある祠は、皆がお参りしやすように新しく建て直したものじゃが……神様の本体は、こちらに御祀りしてある」
 言い終えた後長老は、作法に則り祠の前に膝をつく。手を合わせ、口の中で何事かを小さく呟いた後、祠の扉をカタン、と開けて、中から小さな『石』を取り出した。
「こちらがその『本体』ですじゃ。この村を開いたご先祖が、川から流れて来たこれを拾い上げたとか、その昔、村を守るために犠牲になった者の墓石の一部だとも、伝え聞いておる」
 取り出した『石』を広げた白い布の上に置いて、両掌の上に包むように持って、長老はシュバルツに見せる。何処にでもある普通の石の様だが、その丸い石は、何となく人型を模しているように見えなくも無かった。
「その御先祖がこの石のために祠を立て、祀ったところ――――村の田畑はよく潤い、豊作が続いたと……。それ以来、わしらはこれを土地神様として受け継ぎ、豊作のお約束をしていただいていた様な物じゃ……」
「……………!」
 長老の言葉を聞きながら、シュバルツは拳を握りしめていた。

 分かっている。
 ここの人たちにとって、土地神を祀る事はもちろんの事、今まで育ててきた田んぼや畑の土が――――何物にも代えがたい宝だった。自分も農作業の手伝いをして、それが骨身に沁みて分かっていた。農作物を作るための『土』は、一朝一夕で出来る物ではないのだと。

 だから、できるだけこの場所で村人たちを守ってあげたかった。
 それが叶わずに、今日のような事態を迎えてしまったのは、ただひたすら自分の力不足によるところが大きいのだと、シュバルツは自分を責めていた。

「シュバルツ殿?」

 村長に声を掛けられて、シュバルツははっと我に帰った。
「大丈夫です。どうぞ、続きを――――」
 シュバルツに促されて、長老は話を続ける。
「シュバルツ殿……。わしは、この『本体』を、わしらと共に連れて行こうと思っておるのじゃが……どうだろうか?」
「―――――!」
「『土地神様』は、わしらにとってはもう村の守り神も同然じゃ。とても離れがたく感じておる。新しい土地でも『村の守り神』として、御祀りしたいのだが……」
「……………」
(私は決して『土地神様』と言う者の代理の者などではない……。でも、これはいくら言っても分かってはもらえないのだろうな……)
 長老の話を聞きながら、『土地神の代理としての意見を求められている』と感じて、シュバルツは苦笑していた。本当に自分が『村の守り神』と言う類の者であるのなら、そもそも村人たちをこの村から追い出さねばならない様な事態になどさせはしない。この時点で、自分はもう充分村の守り手としての役割を失敗していると言って良いのに。
 どうして――――誰も自分を責めないのだろう。

 何がいけなかったのか。
 何を間違ってしまっていたのか。
 ずっと己に問い続けてしまう。
 考えた所で答えなど、でる筈もないのに。

 これはもう、気持ちの問題なのだ。
 長老が「共に行きたい」と言うのであれば、御神体も共に行かせてあげれば良いと思った。これだけ熱心に祀ってくれた村人たち。神様だって、離れがたく感じるだろう。もしも本当に――――この『神様』が、自分と同じ考え方をする、と、言うのなら。

「長老様のお心のままに……。共に行かれるのであれば、そうした方がいいと私も思います。その方が、『神様』も喜ばれるでしょう」

 だからシュバルツも、長老にそう答えた。そしてそうしたことで、もしも天罰が当たると言うのなら――――その天罰は、どうか自分に。
 彼はそう祈っていた。

「そうですか……。シュバルツ殿が、そう仰られるのなら」

 長老は満足そうに頷くと、祠に向かって恭しく礼をした。
「では、土地神様……。今まで本当にこの地でのたくさんの恩恵を、どうもありがとうございました。良く肥えた田畑、綺麗な水――――これは、このままここに置いて行きます。どうか、次にこの地に入る者たちに、この恵みが受け継がれますように――――」
 そう言って長老が祠に向かって頭を下げる。すると、いつの間にか長老の後ろについて来ていた村人たちも、一斉に祠に向かって頭を下げていた。

「そして、誠に勝手な我らの望みですが、もし、これから我らの向かう新しい地で、また、貴方様の御神体を、『村の守り神』として、御祀りさせていただきとう存じます。どうかそれをお許しいただきたく―――伏してお願い申し上げまする」

 長老が御神体を、捧げ持つようにして礼をする。頭を下げている村人たちの間から、すすり泣く様な声が上がっていた。無理からぬこと――――と、誰もが思った。皆が皆、この地から離れがたく思っているのだから。

 ――――と、その時、優しい風がそよ、とふいた。

 その風に乗って、ふわり、ふわりと村人たちの上に、ある物が舞い落ちてくる。
「桃の花だ!」
 それに気付いた誰かの声に、皆が一斉に顔を上げた。そして、自分達の目の前に、確かに落ちて来たその桃の花に、皆が驚いた。何故なら、今は桃の収穫の時期。花など咲いているはずもないのだから。

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