農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 153 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/12/08 23:13   >>

ガッツ(がんばれ!) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

「こ、これは一体……?」
「どう言うことだべか……」
 突如として現れた桃の花の舞に、村人たちはただ茫然とするしかない。「うわ〜! すご〜い!」と、子供たちは無邪気に喜び、女衆たちの中には「綺麗……」と、見とれる者もいた。
「……………」
 ハヤブサの目の前に、ひとひらの桃の花が舞い落ちてくる。掌を差し出すと、その薄紅色の桃の花は、彼の手の上にふわりと収まった。
(これは……どう判断すればいいんだ? 特に不吉なものを感じる訳ではないが……)
 桃の花を運んできた風はひたすら優しく、花の乱舞は美しかった。誰もがしばらく花吹雪の中に言葉も失って佇んでいると、そこに小さな声が聞こえた。

「―――――」

「シュバルツ。お前、何か言ったか?」
 最初ハヤブサは、シュバルツの声だと思った。だからその声を聞いた時、彼にそう問いかけてみたのだが。
「いや、私は何も……」
 しかし問いかけられたシュバルツは、そう言って首を横に振るばかりだ。
「じゃあ、今の声を、お前は聞いたか?」
「声? 何か声がしたのか?」
「!?」
 怪訝な顔をしながらこちらを見るシュバルツ。どうやら彼は、今の声を聞いてはいないようだ。
(どう言うことだ? 今確かに、俺には『声』が聞こえたのに――――)
 酷く小さくか細い物だったか、自分の耳は確かにその声を捉えていた。シュバルツは忍者として、自分と同じくらいの技量を持っている。だから、あの程度の小ささの声ならば、彼の耳ならば捉えられる筈なのに。
 不思議に思ってハヤブサが首を捻っていると、村人たちの間からもざわめきが上がっていた。
「今、誰かが何か言ったべ?」
「いや、俺は何も聞いてねぇ」
「私も何も――――」
「おらには聞こえた。何か言っていたな」
「えっ? そんな声しただか?」
 どうやら村人たちの間でも、聞こえている者と聞こえなかった者が居るようだ。

 だが、一番如実にその声を捉えていたのは、どうやら子供たちの様だった。
「声が聞こえたよね!」
「うん! 聞こえた!」
「とっても優しい声だったよ!」
「僕にも聞こえた!」

「その声は、何て言っていたの?」

 騒いでいる子供たちの近くに居た甲斐姫が問いかけると、子供たちは嬉しそうな笑顔を見せて答えた。

「『大丈夫だよ』って、言ってた!」

「――――!」
 その言葉に、周りに居た大人たちは皆、一様にはっと息を飲む。
「うん! 言ってたね! 『大丈夫だよ』って!」
「うん! そう聞こえた!」
「『大丈夫』なんだって!」
「『大丈夫だ』って!」

「こ、これは……! 長老様……!」
 子供たちの声を受けて長老に問いかける村長に、長老も頷き返した。
「うむ……。間違いない。これこそ、『土地神様』のお声なのじゃろう……。信じられぬ事じゃが――――」
 そう言いながら長老は、茫然と桃の花が舞う空を見上げる。いろいろと説明が出来ない事象。この小さな村には今――――確かに『奇跡』が舞い降りていた。
「長老様は、御声は聞かれたのですか?」
 村長の問いに、長老は笑顔を返す。
「ああ。確かに聞こえたぞ? この年老いた耳にも、はっきりとな……」
 そう言うと、長老は立ち上がった。村を導く者としての、役目を果たすために。

「さあ、皆の衆。立ち上がろうぞ。これは土地神様の御意志だ。我等に『生きよ』と言う――――」

「長老様!」
「今、この地を離れねばならぬ我らは、最大級の不幸に見舞われているのかもしれぬ。しかし、その先の未来は、必ず明るく開けておるのだ。それならば、何を恐れる事があろうか」
「おお……!」
「確かにそうじゃ……!」
 長老の言葉に、村人たちの意気が上がる。
「さあ皆、参ろうぞ! 明日を生きるために―――!」
 オオッ! と、村人たちの間から歓声が上がる。その光景に、ハヤブサはホッと胸を撫で下ろしていた。どうやら村人たちは、スムーズに避難を開始してくれそうだ。さしずめ、第一関門突破と言ったところだろうか。
「それではみな、準備ができた者から村の西の境に集まってくれ。妖魔の方々と合流でき次第、速やかに出発をしよう」
「劉備様の城には、私たちが案内します!」
 村長の言葉に続いて、甲斐姫と孫尚香が手を上げる。彼女たちの導きに合わせて立ち上がろうとした村人たちであったが――――そのうちの1人が声を上げた。

「長老様……。この飾り付けたお供え物は、どうしますか?」

 その言葉に、村人たちの足が止まる。普通なら、片づけなければならないところだ。だが、しばらくそれを静かに見つめていた長老は、やがて静かに首を振った。
「……これは、このまま置いて行こう」
「長老様!?」
 驚く村人たちに語りかけるように、長老は口を開いた。

「この供物は、神様に捧げた我らの『心』じゃ……。拠ってこれは、このままここに置いて行く」

「長老様……!」
「…………!」
 これにはハヤブサとシュバルツもさすがに驚いた。間もなくここは襲撃の憂き目に遭う。このような物など真っ先に破壊され、略奪されてしまうだろうに。
「確かにそうじゃ……。じゃがそれでも――――『証』を残しておきたい。我らは確かに、ここに居たのだと。我らは確かに、この土地を愛していたのだと………」
 自己満足な想いかもしれないがと苦笑する長老に、シュバルツは首を振った。それ以外――――何を言う事が出来ただろうか。踏みにじられる事を承知で、それでもきれいに飾りつけられてある供物の数々が、酷く切なかった。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

されど、龍は手を伸ばす。 153 ――無双OROCHI異聞録――― 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる