農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 156 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/12/13 01:43   >>

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「しかし……!」
「馬は何処だ? 案内してやってくれ」
 ハヤブサのその言葉に、1人の村人が頷いて、孫尚香に声をかけた。
「分かりました! こちらです!」
「ありがとう!」
 その言葉を残して、孫尚香は踵を返していく。
「ハヤブサ……! 大丈夫なのか?」
 シュバルツの問いかけにハヤブサは頷く。
「大丈夫だ、シュバルツ。言った筈だ。劉備殿の城に居る関羽殿は、総てを承知してくれていると」
「ハヤブサ……」
「信じてくれシュバルツ。俺たちは皆を救うために、ここに来ている。その為に動いているのだから―――」
「…………」
 シュバルツはしばらく、じっと推し量る様にハヤブサを見つめていたが、やがて、フッと小さく笑った。
「分かった……。信じよう」
「シュバルツ……!」
 その微笑みがあまりにも綺麗だったものだから、ハヤブサは思わず彼に触れたくなってしまう。
(いやいや! 無いだろう!? 俺!! 今はそれどころではないし、第一周りは人だらけだ!!)
 必死に自分の理性を総動員して、ハヤブサは自分の右手を押さえる。かなりシュバルツに飢えてしまっている自分。迂闊に触れてしまったら、いろいろと歯止めが利かなくなりそうで怖かった。
 しかしそうやって自分の中の葛藤が激しくなってくると、どうしても面に出てくる挙動が不審な物になって来るらしく。
「ハヤブサ? どうしたんだ?」
 シュバルツが怪訝な顔をしながら問いかけてくる。何かいろいろと伝わらなくていい物が伝わってしまったらしい。
「いや……何でも無い」
 懸命に平静な気持ちを手繰り寄せて返事を返す。
(いかんいかん、緩んでしまっては――――)
 どうも太公望のあちこちにちりばめられている助けの影を意識してしまうと、ともすれば無意識のうちに油断しそうになってしまう。
(しっかりしろ、リュウ・ハヤブサ。まだ、誰ひとりとして助けられていない。悲劇を回避できてなどいないのだから――――)
 必死に自分に言い聞かせ、自分の腹を締め直した。

 そうだ。油断などしてはいけない。
 まだ彼らを助けられると決まった訳ではないのだから。

「そうか。なら良いが……」
 シュバルツは首を捻りながらも、そう言って引いてくれたから、ハヤブサもほっと、小さく息を吐いた。

「シュバルツ殿!」

 その声に振り向くと、長老がこちらに向かって手招きをしていた。
「長老? どうしました?」
 シュバルツが長老の方に向かって走って行く。ハヤブサもその後に続いた。
「シュバルツ殿……! 避難に入る前に預かって欲しい物がある事を思い出してのう。探しておったのじゃ」
「預かる? 私がですか?」
 不思議そうな顔をするシュバルツに向かって、長老は懐からある物を取り出す。
「これじゃ」

「――――――!」

 シュバルツは思わず息を飲んでいた。
 何故ならそれは、長老が祠から取り出した『土地神様』の形代として祀られていた石だったからである。
「今、シュバルツ殿は土地神様の『代理』じゃ……。ならば、これは貴方が持って然るべきものではないかと、わしは思う」
 そう言いながら長老は、シュバルツに向かってその石を差し出す。しかしシュバルツは、それから距離を取るように一歩身を引いた。
「いえ……。そのままどうか長老がお持ちください。それは、私ごときが触れていい物ではありません」
「何故じゃ?」
 シュバルツの言葉に納得できない長老が、問い返してくる。長老からしてみれば、これを持つのにシュバルツほどふさわしい人間は他にいないと思っていたからだ。
「何度も申しておりますが、私はたまたまこの村に流れ着いただけの者です。決して神の代理と言う者ではありません」
「しかし、村人の誰もがシュバルツ殿を『土地神様の代理の者』として既に認めておる。これを懐に収めておったとしても、誰からも文句なぞ出ないと思うが……」
「『文句が出る出ない』の問題ではなく、私がそのような神聖な物に触れる訳にはいかないのです」
 長老の言葉に、尚も首を振り続けるシュバルツ。その間にハヤブサは、シュバルツがどうしてこんなに頑なに長老の申し出を断り続けるのか―――――その理由を察してしまった。そしてそれを、彼の口から言わせたくない、と、思った。
 だから――――

「私は『不浄』――――――イテッ!!」

 案の定、けしからん事を口走ったシュバルツの足を、思いっきり踏んづけてやった。
「何をするんだ!? ハヤブサ!!」
「悪かったな。文句は後で聞く」
 涙目になって抗議してくるシュバルツをやんわりと手で制しながら、ハヤブサは長老に向かって口を開いた。
「俺は、シュバルツにそれを持たせるのは反対です。長老、貴方が持たれていた方がいい」
「何故じゃ?」
 不思議そうに問うてくる長老に、ハヤブサは言葉を続ける。
「戦いが始まれば、こいつは皆を守るために動く。それはつまり――――」
 ハヤブサは、少しきつめの眼差しを長老に向けた。

「真っ先に、『死地』に飛び込んで行く事を意味する」

「―――――!」
「おまけに村人を庇いながらの戦いになるから、こいつが傷を負わない訳がない。故にこいつがそれを持ったら、いたずらに形代の石を危険に曝すことになるんだ」
「ハ、ハヤブサ……!」
 ハヤブサの言葉に茫然としてしまうシュバルツ。だが、ハヤブサの言う事はいちいち尤もなので、それに対する反論の言葉を持つ事が出来ない。たいして長老の方も「むむむ……」と、唸るしかなかった。
「形代の石を確実に守るためにも、そしてこいつのためにも――――その石は貴方が持っていてくれた方がこちらも助かる。こいつに、余計な負担をかけたくない」
「……………」
 ハヤブサの言葉に目を閉じて、しばらく考え込むようにしていた長老であったが、やがてその顔を上げた。
「分かりました。貴殿の言う事も尤もじゃ……。なればわしが、これを責任もって預かるとしよう」

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