農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 177 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/01/15 13:48   >>

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 お前が守るべき民は、もう城内にいる。
 もうお前が、戦う理由はない筈だ。
 だから、絶対に出てくるな、シュバルツ。
 素戔鳴の前には出るな――――!

「もう、よろしいのですか?」

 シュバルツから離れてこちらに戻ってきたハヤブサに、孔明が声をかける。

「ああ。話は済んだ」
 そう言って軍議に加わるハヤブサの後ろ姿を、シュバルツはただ黙って見つめていた。

「シュバルツさん……大丈夫?」
 声をかけられた方にシュバルツが振り向くと、甲斐姫が今にも泣き出しそうな顔をして、こちらを見上げている。
「ああ。大丈夫だよ」
 シュバルツは、フッと優しい笑顔を向けて、それに答えた。
「それにしてもハヤブサさん……何もあんなに怒ったふうに言わなくてもいいのに」
 そう言う孫尚香に、甲斐姫が少しうつむきがちに答える。

「でも私……ハヤブサさんの気持ちも、分かるな……」

「えっ?」
 驚く孫尚香の声を聞きながら、甲斐姫はシュバルツの方に振り向いて答える。
「だって……ハヤブサさん、もう何度も泣いているんですもの。シュバルツさん、貴方を喪って――――」
「…………!」
「シュバルツさん……私だってもう、あんな悲劇は見たくない……」
 驚き、息をのむシュバルツを、甲斐姫は必死の眼差しで見つめる。
「あんな……救いのない悲劇は、もう沢山なの……!」
「か、甲斐……! 泣かないで……!」
 甲斐姫の瞳から涙が零れ落ちそうになっているのを見た孫尚香が、慌ててなだめようとする。甲斐姫は涙を振り払うように頭を振ると、シュバルツに改めて声をかけた。
「だからシュバルツさん……! もう戦には出ないで、私たちと一緒に村の皆の手伝いに行きましょうよ!」
 そう言う甲斐姫を、シュバルツは無言でじっと見つめる。
「そうね、私もそうした方がいいと思うわ」
 その横に孫尚香も並んで、同じようにシュバルツを見つめて来た。
「……………」
 シュバルツはそんな二人を無言で推し量る様に見つめていたが、やがてその面にフッと笑みを浮かべた。

「そうか……。そうだな……」

「……………!」
 シュバルツが笑顔でそう言ってくれたことで、女性二人の表情にも笑顔が戻る。
「じゃあシュバルツさん! 早く行きましょうよ!」
 甲斐姫が嬉しそうにシュバルツの手を取って引っ張って行こうとする。だがシュバルツは、それには乗らず踏みとどまった。
「いや……悪いがもう少し、ここに居させてくれ」
「シュバルツさん? でも……」
「もうここには用はない筈じゃ……」
 不思議そうに見つめてくる甲斐姫と孫尚香に、シュバルツは笑顔を向ける。

「悪いが、もう少しの間だけ……な……」

「シュバルツさん……」
 その後も女性二人はシュバルツを部屋の外に連れ出そうとするのだが、シュバルツはそこに留まり続けた。結局彼は、軍議が終わるまで、その部屋に留まり続けたのだった。


 夜半。

 闇に紛れて村に向かって静かに行軍する、一つの軍団があった。
 素戔鳴軍である。
 今から襲うのはごく普通の村であるが――――そこの村人たちは大罪を犯した。我が物であった筈の『仙桃』を私物化し、あろうことか妖魔に触れさせ、それを与えた。何と、汚らわしき事か―――――故に、裁かれなければならぬ。
 妖魔がこの世に跋扈するべきではないし、人の子と妖魔が、交わりを持つような事など決してあってはならないのだ。妖魔は総て――――殲滅せねばらならぬ対象であるのだから。
 素戔鳴が何故襲撃の時間を『夜』に選んだのか。その理由は簡単だった。
 村人たちが寝ている間に全滅させる。闇の中に――――総てを、葬り去るためだった。

 数刻ほどして、放った斥候が返ってくる。

「申し上げます!」
 斥候は素戔鳴の前で膝をつき畏まると、おもむろに口を開いた。
「村の中を見て参りましたが、住人の姿は既にありません! もぬけの殻です!!」
「何だとォ!?」
 素戔鳴は驚いて大声を上げる。
「真実(まこと)か!? 嘘偽りは申しておらぬだろうな――――!」
 問いただす素戔鳴に、斥候は畏まった。
「決して偽りは申してはおりませぬ! 隅々まで見ましたが住人を見つけることは適いませんでした!」
「…………!」
 素戔鳴は顎に手を当てて考え込む。
(どう言うことだ? 吾は事前に村を襲うような情報を外に漏らしなどしなかった。なのに何故……村人たちは姿を消した?)
「村が既に何者かに襲われたような形跡はあったか?」
 斥候にそう問いただしてみる。妖魔と交流を持っていた村。野蛮な妖魔どもの事だ。こちらが襲うより先に村人たちを襲うことも、充分にあり得ると思った。
「いえ、全く……! 村に争ったような跡はありませんでした」
「ふむ………」
 しばらくその斥候の前で考え込むようにしていた素戔鳴であったが、やがてその顔を上げた。ここでこのまま考え込んでいても、埒が明かないと思ったのだろう。
「とにかく村に案内いたせ。吾自ら検分してやろう」
「はっ!」
 斥候は頭を下げると立ち上がり、踵を返して素戔鳴を導く様に歩き出した。素戔鳴も素戔鳴軍も、その後に続いた。

 それから村まで数刻とかからずに着いた。

「……………」
 確かに、人の気配が完全に断たれてしまっている村。ひゅう、と吹く風に乗って、空の桶がカラカラと転がって行く。
(妙だな……。本当に、村人の姿が見えぬ――――)
 そう思いながら歩を進める素戔鳴の視界に、ある物が飛び込んできた。
 

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