農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 192 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/01/28 00:03   >>

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 ハヤブサに『キョウジ』と呼ばれた青年は、ハヤブサの方に振り返るなり、にこり、と微笑んだ。
「ねぇハヤブサ。一つ、真面目に聞いても良い?」
 あまりにもいろいろな事が一度に起きすぎて、多少混乱気味になりかけていたハヤブサであったが、キョウジに質問されたことで、はっと我に帰った。
「な、何だ?」
 戸惑いながらも問い返す。キョウジに聞きたい事はいっぱいあったが、とりあえず彼からの質問に答えねばとハヤブサは思った。

「貴方は一体――――『何処』で私とシュバルツを見分けているの?」

 そう言って苦笑する青年の姿は、何処からどう見てもシュバルツの物だった。だから周りの者は皆――――この青年は、シュバルツの霊体か何かだと思ってしまったのだが。
 だがハヤブサは、茫然としながらも言葉を紡いだ。

「そんなの――――見れば、分かるだろう……?」

(いやいや。分からない。分からないから)
 これは、その場に居たハヤブサ以外の全員が心の中で、満場一致で共有した意見であった。本当に――――これほど瓜二つと言っていい人間を、何故ハヤブサは、別の名前で呼ぶのだろう?

「そ、それよりもキョウジ……。俺から質問しても、良いか?」

「何?」
 龍の忍者から『キョウジ』と呼ばれた青年が、小首をかしげる。この雰囲気も、本当に――――シュバルツとそっくりの物だった。
「お前は……やはり、『霊体』なのか……?」
「そうみたいだね。私の身体は死んでしまっているから――――」
 割ととんでもない事を、この青年は軽く笑いながら答える。そのやり取りに太公望は思わず苦笑していた。どうやらこの『キョウジ』と呼ばれる青年は、とんでもなくのんきな人物か、あるいは、途方もない大物か――――のどちらかだと感じた。
「それではキョウジ……。お前は今までどこに居たんだ? そして、どうやってここに現れたのだ?」
 ハヤブサのその質問に、キョウジは少し「ん〜……」と、考え込む仕種をする。
「何処で何をやっていたかは、今は時間が無いから答えてあげられないけれど、私がどうやってここに現れたかは、答えられるよ?」
「じゃあ、どうやって現れたんだ?」
「うん。この人と――――あの人のおかげかな?」
 ハヤブサの質問に頷いたキョウジは、そう言いながら諸葛亮と左慈の方を指し示す。
「…………!」
 驚くハヤブサにキョウジはにこりと微笑みかけると、さらに言葉を続けた。
「この人たちが霊体を具現化できる祈祷をしてくれたみたいなんだ。だからこうやって、皆の目に触れることもできるし話もできる。だけど、あのおじいさんの方に負担がかかり過ぎているみたいだし、時間も限られている。だから――――早く用件を済ませてしまっていいかな?」
 その言葉にハヤブサが左慈の方に視線を走らせると、確かに祈祷を行っている左慈の顔が、少し苦しそうに歪んでいる。ハヤブサは、一も二もなく頷いた。
「シュバルツは………気を失っているみたいだね」
 そう言って覗き込むキョウジの視線の先で、シュバルツが目を閉じて、苦しそうに息をしていた。
「ハヤブサ。悪いけど、シュバルツの服をくつろげてくれる? 私はシュバルツの身体には、直接触る事が出来ないから」
「わ、分かった……」
 キョウジの求めに応じて、ハヤブサはシュバルツのコートからベルトをはずし、ボタンをはずし、シャツのボタンをはずして行く。シュバルツの白い肌には、仙界軍の矢のせいで――――既に無数の青白いひび割れが走り、それが首のあたりまで達していた。今にも壊れて砕け散ってしまいそうなシュバルツ。ひび割れのせいで、意識の混濁が起きてしまっているのだろう。あまりにも痛々しいその姿に、ハヤブサは思わず叫び出しそうになってしまった。

「治せるのか?」

 シュバルツの傷を検分するかのように見ているキョウジに向かって、ハヤブサは知らず縋りつく様に問いかけてしまう。それに対して、キョウジは力強く頷いた。

「うん――――『治す』よ」

「…………!」
 力強くそう言い切られた事に、ハヤブサは息を飲んでしまう。そんなハヤブサに、キョウジはもう一度頷くと、治癒の祈祷を続けるかぐやの横に座って、金色に光る玉串に、そっとその手を添えた。

「手伝ってくれる?」

 そう言って微笑むキョウジに、かぐやも頷いた。再び祝詞を紡ぎ、治癒の法を再開する。
 すると―――――

 ひびわれていたシュバルツの肌が、徐々に綺麗に戻って行くのが、ハヤブサの目にもはっきりと見えた。

(助かる……? 今度こそ、助けられるのか……?)

 ハヤブサの中で今――――様々な想いが交錯し、渦を巻く。キョウジによって治癒されていくシュバルツの像が、自分の視界の中で変に歪んだ。ハヤブサはいつしか、大粒の涙をその瞳から零していた。だが、それにすら気がつかないほど――――彼はシュバルツの身体が治って行くのを一心に見つめていた。

(すごい………!)

 巫女かぐやもまた、自身で治癒の法を施しながら、信じられぬ思いでシュバルツの身体を見つめていた。
 この『キョウジ』と言う人間は何者なのだろう?
 あれほど治せなかったシュバルツの身体を、こうも容易く治して行ってしまうなんて。
 ふと、金色に光る玉串の上に、一粒の水滴が、ポツリ、と、落ちてくる。
「……………?」
 怪訝に思ってかぐやが顔を上げると、自分の隣で玉串に手を添えているキョウジが、静かに涙を流している姿が、視界の中に飛び込んできていた。
「キョウジ様……? 大丈夫ですか……?」
 何故かその姿から哀しみの波動が感じ取れたから、かぐやは思わず問いかけてしまう。それに対してキョウジは「大丈夫だよ」と、にこりと笑顔を見せた。
 

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