農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 193 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/01/28 15:40   >>

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「それよりも――――早く、終わらせてしまおう」

 キョウジにそう言われて、かぐやも頷く。かぐやは再び『治癒の法』に集中して行った。
 シュバルツの身体はゆっくりと、だが確実に治って行く。
 それをしながらかぐやは、横に居るキョウジの気配に気を配っていた。先程見せたキョウジのあの哀しげな涙が、少し気になっていたからだ。
 だがシュバルツの治癒を進めて行っても、キョウジの方に何かを消耗したり、犠牲にしたりしているような気配は感じられない。彼の『気』は、ずっと継続して安定していた。

 それでは、何故……?
 その哀しげな涙は、一体何なのですか………?

 そう問うこともできずに、シュバルツの治癒は推し進められていく。やがてシュバルツの肌の最後のひび割れが塞がると同時に、キョウジの手が玉串からそっと離れた。

「………出来た……」

 ポツリと呟く彼の瞳から、また零れ落ちる一筋の涙。キョウジの言葉に顔を上げたハヤブサも、ようやくキョウジのその涙に気がついた。
「キョウジ、お前………泣いているのか?」
 ハヤブサの問いかけに、キョウジはにこりと微笑んだ。
「あはは……ハヤブサだって、泣いているじゃないか」
「う……! こ、これは……!」
 慌ててぐしっ、と、自身の涙を拭うハヤブサ。ようやく自分が、人目もはばからずに涙を落とし続けていた事実に気がついて、今更ながらひどく気恥ずかしさを覚えた。

「う…………」

 シュバルツが低く呻いて身じろぎをする。どうやら、意識が戻ってきたらしい。
「シュバルツは……もう、大丈夫みたいだね」
 その言葉に、ハヤブサははっと弾かれたように顔を上げた。
「ま、待て! キョウジ!」
「何? ハヤブサ」
「シュバルツと………話をしていかないのか?」
 キョウジがこのまま黙って去りそうな予感がしたハヤブサは、思わずキョウジを引き留めていた。キョウジを喪って、ずっと孤独に震えていたシュバルツ。どんな形であれ――――キョウジと話をさせてやりたい、と、願った。
 だがキョウジは、ハヤブサの問いかけに、少し申し訳なさそうに笑う。

「そうしてあげたいのは山々なんだけど……残念ながら、時間切れ、だ」

(あ…………?)
 意識の混濁から戻ってきたシュバルツの前に、ぼんやりと視界が開ける。すると、そこに懐かしい人の顔と声があった。

「ハヤブサ、シュバルツをよろしくね」

 その人は、笑顔だった。
 自分の記憶の中と、寸分違わない笑顔――――

 キョウジ、と、小さく呟く自分の声に、その人は振り向いてくれた。

「あ、シュバルツ。気がついた?」

「キョウジ………!」
 だけどそれと同時に、ス………と、徐々に消えて行く、キョウジの身体。もう本当に――――『時間切れ』らしかった。

「シュバルツ………どうか、哀しまないで……」

 消えながらその人は、優しく微笑む。
「ま、待て……! キョウジ……!」
 シュバルツは懸命に身を起こそうとする。だけど、意識の混濁から戻ってきたばかりの身体は、なかなか思うように動いてくれない。

「私は、ずっと―――――」

「キョウジッ!!」

 そのまま、大気に溶けるように消えて行ってしまったキョウジの身体。叫びながら伸ばしたシュバルツの手は、空しく空を切った。ただその瞬間、シュバルツの耳元を撫でた風は、とても優しかった。

「キョウジ……! キョウジ……ッ!」

 シュバルツは空しく空を切った手を見てから、己の身体を抱きかかえるようにして小さく体を丸めると――――そのまま泣きじゃくり始めた。暫く辺りに、彼の悲痛な嗚咽が響く。そんなシュバルツに、そっと、慈しむように――――手を伸ばす者が居た。

「シュバルツ……」

 ハヤブサは想いを込めて、愛おしい人の身体を抱きしめた。

「シュバルツ……! シュバルツ……!」

 その手に気がついたシュバルツが、「ハヤブサ……」と、振り返る。ハヤブサは、そんな彼の身体を、ますます強く抱きしめた。

「シュバルツ……!」

 腕の中に愛おしい人の感触を得ながら、ハヤブサはようやく、安堵の息を漏らした。何もかもが終わったのだと。
 そして―――――

 愛おしいヒトを

 やっとこの手に、捕まえたのだと。



「悪いが、暫く二人きりにしてくれないか……?」

 シュバルツをきつく抱きしめたまま、龍の忍者は思い詰めたような表情で、言葉を紡ぐ。
「それは構わねぇが……何でだ?」
 きょとん、と問いかける張飛を関羽が軽くどついた。
「張飛よ。あの二人は久しぶりに再会して、まだゆっくり話も出来ていないのだ。積もる話もあるだろう」
 そう言って踵を返す関羽の後を、張飛が「待ってくれよ〜!」と、追いかける。その後に趙雲も、ハヤブサたちに軽く頭を下げてから、それに続いた。
「ハヤブサ殿、また会えますか?」
 劉備の問いかけに、ハヤブサは笑顔を見せた。
「ああ。帰る前にそちらの城に寄らせてもらう」
 ハヤブサの言葉に、劉備も笑顔になる。「では、引き揚げよう」と、自軍に命を下した。諸葛亮も、その後に続く。
「ではハヤブサ様……。こちらの陣に帰れる『光陣』を、劉備様の城に配置させていただきます」
 そう言ってかぐやは頭を下げる。太公望に「ほどほどにしておけよ?」と言われ、ハヤブサは苦笑せざるを得なかった。
「……帰る前に一つだけ、そなた達に見せたい物がある」
 左慈がそう言いながら、懐からある物を取り出す。
「これに、見覚えはありますかな?」

「こ、これは………!」

 左慈に『それ』を見せられた二人が、同時に息を飲んだ。何故ならそれは、あの村で見た――――『形代の石』であったからだ。それが、真っ二つに割れてしまっている。
「ここに来る前に劉備殿の城に寄り、そこで、そなた達が助けた村の長老より、これを託された……。嘘か本当かは知らぬが、この石に訴えられたのだそうな。『ここに連れて来て欲しい』と…………」
「……………!」
 シュバルツが差し出した手に、その石はそっと乗せられた。
「小生も半信半疑であったのだが、石から微かな『波動』を感じたのでな……。預かって参った。しかし、二つに裂けてしまってからは――――もうそれは、ただの石となっておる様じゃがな………」
「そうですか………」
 そう言ってその石をじっと見つめるシュバルツと共に、ハヤブサもまた、黙ってその石を見つめた。不思議なこともあるものだ。もしかして、霊体となったキョウジとその石の間に、何か関係があったのだろうか?
 左慈も、しばらく推し量る様にその石を見つめていたが、やがて小さく息を吐きながら、腰を上げた。
「では、小生もかぐや殿達と共に参ろう。要らぬ世話かもしれぬが、ここに結界を張っておく。これでしばらくの間、この空間は周りから切り離された状態になる。そなた達の姿も声も、外からは確認できなくなるだろう」
「えっ? ちょっとそれは――――!」
 何事かを反論しようとするシュバルツの身体を、ハヤブサはギュッときつく抱きしめた。まるで、余計なことは言うなと言わんばかりの、腕の強さだった。
 

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
8日からの連続掲載、ご苦労様です。
そしてありがとうございます。
やっと兄さん出てきましたが、すぐに退場。
これで終わりではないですよね!
再登場、楽しみにしています
ゆき
2015/01/28 22:44
いえいえ、こちらこそ、私の拙い小説におつきあいいただいて、ありがとうございます(*^^*)
そうですね〜。怒涛の勢いで投縞してしまって、気がつけば連続してしまっていました(^^;
きっと書きたい場面のオンパレードだったからなのでしょうね。
そしてお察しのとおり、キョウジ兄さんの出番はこれで終わりではありません。
また出てきますので、楽しみに待っていてくださいね〜(^^)/*
農家の嫁
2015/01/28 23:32

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