農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 170 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/01/06 08:55   >>

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 だが、シュバルツのその言葉に甲斐姫は首を振った。
「いえ、大丈夫です! 行きます!!」
 彼女は肩で息をしながらも、きっと顔を上げる。その眼差しは、シュバルツを見つめると言うよりも、睨み据えていた。まるでこのままここから追い返されたら、100年先まで恨まれそうな目つきだ。
「ちょ、ちょっと甲斐……!」
 友人のその目つきの悪さに孫尚香はちょっと引き気味になり、シュバルツも苦笑する。しかし闘志を失わないその彼女の姿勢に、もう少し修業をつけてやるのも良いかと彼は思った。
「よし! なら行くぞ!! ぼやぼやする様なら、置いて行くからな!!」
「望むところだ!!」
 シュバルツの言葉に、甲斐姫は噛みつく様に答えを返す。
(こ、これって……私もついて行かなきゃいけない流れよね……)
 一歩も身を引く気が無い友人のその様に、孫尚香は苦笑しながらも空気を読んだ。要するに自分に求められている役割は、シュバルツしか見えてなさそうな甲斐姫をフォローする事なのだと。
 全員の準備が整ったと感じた関羽は、皆に改めて号令を出した。

「それでは皆の者!! かかれ!!」

 その声を待ちかねていたかのように、それまでじりじりと退却していた妖魔軍とそこに加わった劉備軍が、一気に反撃に転じた。地を揺らすような怒号と共に、関羽が、張飛が、趙雲が―――――そして、ハヤブサとシュバルツに甲斐姫と孫尚香が加わった一団が、潮の様に百々目鬼軍に突っ込んで行く。

「む……! これは………!」

 村人たちを守るという足枷が無くなった状態で、しかもこれだけの面々に攻め込まれてしまっては、いくら数では勝る百々目鬼軍も、ひとたまりも無かった。あっという間に戦線は瓦解し、戦況はひっくり返されてしまう。

「退けッ!! 退けぇ!! こんな所で命を落とす訳にはいかぬ!!」

 機を見るに聡い百々目鬼は、全軍に退却命令を出す。百々目鬼軍はほうほうの体で、戦場から離脱したのだった。

「もう二度と来るなよ!! 今度民たちを襲ったら、承知しねぇからな!!」

 退却する百々目鬼軍に向かって張飛が咆える。その後ろで、玄徳軍と妖魔軍が、揃って勝ち鬨を上げていた。
(良かった………)
 ハヤブサは、独り静かに胸を撫で下ろしていた。
 あの村の民達を、守りきれた。
 シュバルツを取り戻すための第一関門を、確かに突破したのだと、ハヤブサは感じていた。

「終わ……っ、た………!」

 皆が喜びの声を上げる中、甲斐姫はその場にへたり込んでいた。
 とにかく、シュバルツについて行くのが精いっぱいという中、果たして自分がちゃんと戦えていたかどうかは分からない。それどころか、時折彼から何度か守られてしまったことも覚えている。やはり――――自分は、戦いにおいては未熟者なのだと、悟らざるを得なかった。

 でも
 それでも――――

 前の時間軸の戦いのときよりは、比べ物にならない程傷を負っていないシュバルツの身体。
 少しは、自分もこの戦いに貢献できたのだと、胸を張って良いのだろうか。

 そんな事を思いながら、甲斐姫が座り込んで呼吸を整えていると、そこにスッと手を差しのべられてきた。
「立てるか?」
「…………!」
 甲斐姫が驚いて顔を上げると、そこには柔らかい笑みを浮かべながら手を差し出す、シュバルツの姿があった。
「大、丈夫……です。立てます」
 甲斐姫はそう言いながら自力で立ち上がろうとするが、一旦脱力してしまった手足は、なかなか力が入ってくれそうにない。それ見たシュバルツは、苦笑しながら甲斐姫の手を取り、支えてやる。それを受けて彼女もようやく、立ち上がる事が出来た。
「なかなか良い戦闘(ファイト)だった……。よく、頑張ったな」
「…………!」
 シュバルツからのその言葉を聞いた甲斐姫は、瞬間信じられない心地になる。驚いた。まさかねぎらいの言葉を受け、しかも褒めてもらえるとは。
「ありがとう、ございますッ!!」
 甲斐姫は慌てて、ぎこちなく礼を言いながら頭を下げる。そんな彼女にシュバルツは軽く笑みを返すと、さらに言葉を続けた。
「君はきっと、良い戦士になる。これからも鍛錬を続けてくれ。全く……君を見ていると、私の『』を思い出すよ。『』も君の様にまっすぐな性格なんだが――――ん? どうした?」
 話を中断して、シュバルツは甲斐姫を覗き込む。何故なら立ち上がった筈の甲斐姫が、再びへなへなとへたり込んでしまっていたからだ。
「おい? どうした? 大丈夫か?」
 シュバルツがへたり込んだ甲斐姫に、心配そうに声をかける。それに対して甲斐姫は、蚊の鳴く様な声で「大丈夫です………」と、返事を返しはするが、あんまり大丈夫でもなさそうだった。

(『弟』……! そりゃあ私は女らしくないし、別に女性扱いをして欲しい訳でもないけど………っ!)

 甲斐姫の頭の上に今、『弟』という文字が切なくのしかかっていた。彼女は自分がどれだけ女らしくないかということを、改めて外から指摘されたような気持になって、軽くショックを受けているのだ。
「………………」
 甲斐姫の気持ちも分かるが、女として見られないのも仕方がないと思ってしまう孫尚香は、顔をひきつらせて笑うしか無く、甲斐姫を見て、『弟』を思い出してしまうシュバルツの気持ちが分かるハヤブサも、頭を抱えてしまうしかない。シュバルツの『弟』は、『キング・オブ・ハート』の称号を受け継ぎ、人間離れをした強さを持つ、比類なき格闘家だ。その彼になぞらえるなど――――シュバルツからしてみれば、最高の褒め言葉のつもりなのだろう。
 だが、甲斐姫はそんな事情を知らない訳だから、当然、単純に「男みたいだと言われた……」と、言うことになる訳で。
 このからくりに1人気づいていない天然ボケな愛おしいヒトに、ハヤブサはため息をつきながら声をかける事にした。

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