農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 206 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/08 22:28   >>

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「……………?」
 屁舞留に言われるままにキョウジはその睡蓮鉢を覗き込んで―――――思わず息を飲んでいた。村の上空に、巨大な闇の塊が鎮座していたからである。
「な……! 何だ……? この黒い塊は……!」

「お前に分かりやすく言うのなら……『死神』の様な物だ……」

 暗い表情をした屁舞留が、ポツリと、零すように呟く。
「前に、村が滅んでしまった時にも、村の上空に『あれ』が居たのだ……」
「…………!」
「『あれ』が現れた以上、もう、どのようにしても村の運命は変えられぬ。皆また――――死んでしまうしかないのだ……」
「な―――――!」
 そんな馬鹿な、と、キョウジはもう一度、その水盆を通して村人たちの方を見る。すると、村人たちの方にも、皆一様に黒い塊が張り付くように乗っていた。中でも、ケイタと言う少年の肩に乗っている黒い塊は、一段と色が濃かった。
「こ、これは……? この色の濃さの違いは、一体何だ……!?」
「それは……皆の死期の違いを現しておる……。ケイタの方が、死期が近い、と、言う事じゃろうな……」
 屁舞留がけだるそうに答える。キョウジはただただ、絶句するしか無かった。
「こんな……! こんな事って――――!」
 キョウジの拳が小さく震える。

「これをこのまま放置しておいていいのか!? 何とかしないと――――!!」

 キョウジのこの言葉に、屁舞留は面にびっくりしたような色を浮かべるが、すぐにその表情を硬くした。
「……無理じゃ。あれはが出て来てしまった以上、もうどうにもならぬ」
「どうにもならないかどうか、やってみないと分からないじゃないか!! ただ傍観しているだけだなんて――――!!」

「ではキョウジ、問うが……! 一体吾に、何ができる!?」


「……………!」
「吾が村の広場の真ん中で声を上げても、吾の声を聞く事の出来る者など誰もおらぬ!! そして、吾が出来るのは花を咲かす事だけ――――!! それで、どうやって皆の運命を変えよと言うのだ!? 土台、無理な話ではないか……ッ!!」
 そのまま顔を覆って泣き崩れてしまう屁舞留。キョウジは、かけるべき言葉を失ってしまった。
 しばらく、屁舞留の嗚咽だけがその場に響く。
 そうやって、どれくらいの時が過ぎた事だろう。

「…………でも……!」

 キョウジは、いつしか拳を握りしめていた。

「それでも――――!」

 キョウジは地面に転がっていた石を拾い上げると、その黒い塊に向かっておもむろにそれを投げつけ始めた。
「な……何をやっておるのじゃ? キョウジ……」
 唖然と、その様子を見守る屁舞留に、キョウジは振り向きもせずに答える。
「何って…………あの黒い塊を、何とか追い払えないかなと思って――――」
 そう言って、ひたすらキョウジは石を投げ続ける。だが当然のごとく、石は虚空に吸い込まれるだけで、何がどうなると言う訳でもない。その呆れるほど無駄な行為に、屁舞留ですら思わず面に失笑に近い笑みが浮かんだ。
「無駄じゃ、キョウジ……。お主、吾を笑わせたいのか?」
「笑いたければどうぞご自由に……。ですが、私は大真面目です」
「キョウジ……」
「一生懸命に足掻いて、それでも駄目だったら仕方がない。けれど、何もしないで『無駄だから』とあきらめてしまう事だけは――――」
 キョウジは、持っている石を渾身の力を込めて、闇に向かって投げつけた。

「私は!! 絶対に嫌だッ!!」

「キョウジ………!」
 屁舞留はキョウジのその叫びに茫然としていたが、やがてポツリと呟いた。
「気持ちは分からんでもないが、その石を投げる行為は止めろ。本当に、無意味な事だぞ?」
「………ですよね」
 屁舞留の言葉に、キョウジも苦笑しながら振り向く。だが彼は、まだあきらめる気はないのか、周りをきょろきょろと見渡していた。
「何か方法はないのか……? 何とかあの闇を払う、方法は――――」
「キョウジ……。その様に必死にならずとも良い。その気持ちだけで充分じゃ……。それに、あの者たちと主の間には、接点など何もないではないか。主がそんなに心を砕かずとも――――」
「それでも!! あそこに居る人たちが皆死んでしまったら、また貴方が独りで泣いてしまうのだろう!?」

「――――――!」

「私は……! 絶対に嫌だ!! そんな、哀しい事は――――!」

「キョウジ……!」
 屁舞留は本当に、言葉を失って茫然としてしまう。
 この目の前に居る青年は、一体何だと言うのだろう。
 何故、こんな出会ったばかりの自分のために、見ず知らずの他人などのために、ここまで親身になろうとしてくれるのだろうか。
(吾の村の村人たちも、かなりお人好しな部類に入ると思っておったが……このキョウジと言う青年も、相当なお人好しじゃな……。それとも、『人の子』と言うのは、皆こういう者なのか?)
 いつしか落ち込むことすら忘れてしまって、屁舞留がう〜ん、と、考え込んでいると、不意にキョウジから叫び声が上がった。

「シュバルツだ!!」

「えっ?」
 驚いて顔を上げた屁舞留の視線の先に、時空の道を渡ろうとしている3人の人間の姿が飛び込んでくる。そのうちの1人があろうことか、その結界の外に放り出されようとしていた。
(あのままだとシュバルツは、こちらに向かって流されてくるな……)
 そう悟った瞬間、キョウジは屁舞留に向かって叫ぶように提案していた。

「屁舞留! シュバルツを貴方の村に飛び込ませてもいいか!?」

「えっ? それは、構わぬが……」
 屁舞留はシュバルツの顔を見て、更に驚いていた。
「キョウジ……あの者の顔、お主とそっくりではないか。一体、何者なのだ?」

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