農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 211 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/13 23:04   >>

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「……………」
 キョウジのその優しい言葉と笑みに、屁舞留の顔もフッと緩んだ。
「そうじゃな……。運命は変えられる。吾らはさっき、それを見たばかりじゃったな……」
 二人の目の前を、シュバルツとケイタが歩いて行く。ケイタに向けられるシュバルツの笑みは、キョウジの笑顔と同じように、優しい色を湛えていた。

「まだ起こってもいない事を、吾らがいつまでもぐずぐず悩んでいても仕方が無いの! キョウジ! とりあえず、吾らも為すべき事をしよう!」

 そう言って屁舞留も、元気良く歩きだす。キョウジも、苦笑しながらそれについて行っていた。

 妖魔の子供を助けた事をきっかけに、村と妖魔たちの間に交流が生まれる。元々、人間たちと交流する事を望んでいた妖魔たち。そして、それを受け入れる寛容さを持った村人たち。その異種族の交流が活発化するのに、そう時間はかからなかった。
 涙が出るほど平和な日々が過ぎて行く。黙って見ていれば、こんな日々が永遠に続くのではないかと、つい、錯覚してしまいたくなるほどだ。
 しかし――――村の上空を覆いかぶさる死の闇は、日々色を増すばかり。それが、屁舞留とキョウジの心にも、暗雲を投げかけていた。だが屁舞留は、そんな中でも『豊作の神』としての役割を忘れた事はなかった。

「この木には、栄養が足りておらぬ……。この木は、順調なようじゃな……」

 一本一本の木に額を当て、その木の声を聞く。必要に応じて、その木に『神気』を注いだりしていた。
「屁舞留は、仕事熱心だね」
 その様を見て、にこやかに言うキョウジに、屁舞留も笑顔で言葉を返す。
「……『約束』じゃからな……。村の皆との」
「『約束』と言うのは、土地神としての?」
 キョウジの言葉に、屁舞留は頷く。
「そうじゃ。今年も豊作の祈願を受けたじゃろ? それに、村人たちは常に貢物も欠かさず、毎日挨拶もしてくれておるじゃろ?」
「確かに、そうですね……」
「時に、いろいろと語りかけてくれたり、様々な事を報告してくれる者もおる。吾はそれに、返事をする事が出来ぬと言うのに――――」
 屁舞留の言葉に、キョウジも苦笑した。
「そうですね……。あれは語りかけると言うよりも、最早人生相談でしたね……」
「全くじゃ! 夫婦喧嘩の仲直りの方法まで、吾は責任取れぬと言うに――――!」
 はあ〜……と、深いため息をつく屁舞留に、キョウジも声を立てて笑った。
「出来ることも少ない吾を、こうして祀ってくれている。そんな皆の心を、無駄にする訳にはいかぬ。『約束』は――――守らなければ」
 こんなのは、独りよがりな『想い』かもしれないが、と、苦笑する屁舞留に、キョウジは首を横に振った。その力を独善的に振るうのではなく、そっと、そこに静かに宝物を置いて行く様な力の使い方を、屁舞留はする。キョウジはとても好きだと思った。
「それにしてもこの『闇』……結局原因が分からないまま、ここまで来てしまいましたね……」
 キョウジの言葉に屁舞留も「うん」と頷く。闇は今にも総てを飲み込んでしまいそうなほど――――暗い色を、その身に湛えていた。
「分からぬ……。村も平和そのもので、天変地異の疑いもないのに―――」
 屁舞留の言葉に、キョウジも明確に答えを返せない。妖魔たちとの交流も順調、農作物も順調、なのに何故――――この村を覆う闇は、消えないのだろう?
「明日は『感謝の祀り』じゃ……。皆に過酷な運命が振りかかるより前に、沢山楽しい出来事があれば良いのじゃが――――」
 祈るように紡がれた、屁舞留の言葉。
 だがその祈りが
 叶えられる事は――――

 無かった。


 悲劇はその日の夜に訪れた。

「屁舞留!! 起きろ!!」

 キョウジの切迫した声に、屁舞留は飛び起きる。
「村が――――!! 村が、燃えている!!」
「何じゃとォ!?」
 驚愕に見開かれた屁舞留の瞳に飛び込んでくる、村から上がる炎と黒煙。村が滅んだ『あの日』と同じ光景が、目の前に広がる。
「何故……? 何が、起きておるのじゃ……?」
 目の前の光景を見たくなくて、信じたくなくて、屁舞留の身体はがたがたと震えた。
「何者かが、村に襲撃をかけて来た様なんだ!」
(戦――――!!)
 キョウジの言葉に状況を理解した屁舞留は、ますます恐怖に襲われる。
 つまりあの村は今――――戦う手段を持たない村人たちが、虐殺され、蹂躙されているのだと。
 村が滅んだ、『あの日』の様に。
「屁舞留!! 村に行かないと――――!!」
 叫ぶキョウジの声に、屁舞留の身体がビクッ! と、跳ねる。

「え………? 行………く………?」

 目を見開いたまま固まって、機械人形のように振り向く屁舞留。

「行って………何を、するつもりじゃ…………?」

「何をって………!」
 キョウジは屁舞留に懸命に声をかける。
「村の様子を見に行って、皆を助けるんだ!! 私たちにだって、何か出来る事があるかもしれないし――――!!」
「……無駄じゃ………」
 キョウジの言葉を、静かに、だが言下に否定する。
「無駄って――――!」
 驚き、息を飲むキョウジに、屁舞留の暗い目線が向けられる。
「行った所で、吾らに出来る事など何もない……。己の無力を痛感して、傷つくのはお主の方だぞ、キョウジ………」

 そう、自分は嫌と言うほど経験した。
 目の前で誰かが殺されようとも、それを助ける事も出来ない無力な自分を。
 ただ命が零れ落ちて行くのを、眺めることしか出来ない空しい自分を。
 いやという程、思い知らされた――――!

「それは、そうかもしれないけれど……! でも――――!」
 屁舞留の的を得た忠告に、それでもキョウジは反論した。

「私は行かなくては――――! だってあそこには、シュバルツがいる!!」


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