農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 212 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/14 20:59   >>

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「――――!」
「シュバルツは絶対、逃げ出さずにあそこで独り頑張っている! 皆を助けようと、戦い続けているんだ!!」
「キョウジ……!」
「ならば、私は行かないと!! 何も出来なくても、せめて、シュバルツの傍に―――!」
「…………!」
「お願いだ!! 屁舞留!! 私をあの村まで連れて行ってくれ!! 村に入るのが怖いのなら、その手前の所でもいい!! そこに降ろしてくれ!! 私1人では、この結界の空間からあの村の間にある時空の道を越える事が出来ないんだ!!」
 キョウジの指さす先に、燃え盛る村の景色がある。屁舞留はギリリ、と、歯を食いしばった。

「屁舞留!!」

 縋る様なキョウジの叫びに、屁舞留もついに――――頷いた。

「………分かった………」

「――――!」
「お主がそこまで言うのなら、吾ももう止めはせぬ。行こう」
 屁舞留はそう言うと、静かに立ち上がり、キョウジの手を取った。

 ふわり、と、音もなく、二人の身体は村から少し離れた所の桃畑の中に舞い降りる。幸いにして、まだここまでは、火の手も回って来ていないようであった。
「吾はここまでだ。後はキョウジ――――お主の好きにするが良い」
「ありがとう」
 キョウジはそう言って踵を返すと、迷うことなく炎の上がる村の方へと走って行った。後には屁舞留が1人、桃畑の中に残された。
「………………」
 屁舞留は無言で桃の木々を見つめながら、『あの日』の事を思い出していた。戦に寄って村が滅んだ『あの日』の事を――――

 野党に襲われて、それまで続けられていた村の営みは、あっさりとそこで終わりを告げてしまった。
「止めろ!! 止めてくれ!!」
 屁舞留は叫び、その暴力を止めさせようとするが、人界の物に触れられないこの身体では、どうする事も出来ない。
「神様――――!」
 と叫び、絶命する者。男衆はもちろん、女子供、老人衆に至るまで容赦なく殺されて行った。生まれて間もない赤子も、斬り捨てられて動かなくなってしまった。
「何故――――! 何でじゃ!!」
 動かなくなった赤子の手を取って、屁舞留は泣き叫んだ。だが当然、その慟哭すら、誰の耳に入る事もない。

 何故、人の子は、他者に対してここまで非情な事が出来るのだろう。

 理解できなかった。理解したくなかった。

 村から上がる巨大な火の柱を、屁舞留は暗い眼差しで見つめる。きっとあの炎の下では、あの日と同じ惨劇が起きている。そう考えるだけで―――――屁舞留の前に進もうとする意志を奪うには、もう充分すぎた。
(……この桃の畑は、どうなるのだろう……)
 例えここだけは無事に残っても、もう世話する者が居ない事になる。そうなったら、どうなってしまうのだろう。ぼんやりとそんな事を考えている屁舞留の耳に、馬のいななきと軍隊の足音が聞こえてくる。
「―――――ッ!」
 ビクッ! と、身構える屁舞留の目の前に、仁王然とした将と、白藍色で統一された戦衣をまとった兵達が現れた。
「素戔鳴様、こちらです」
「うむ」
 素戔鳴と呼ばれた、黒褐色の肌に金の刺青を施したその仁王が、ずいっと前に進み出てくる。「それでは皆の者―――」と、言いながら2,3歩歩足を進めた所で、桃の畑で立ちすくんでいた屁舞留と、ばったり目があった。
「神仙の子倅か――――」
 屁舞留を見るなり素戔鳴は、こちらを検分するかのようにジロリ、と、こちらを睨んできた。
「――――ヒッ!」
 その一瞥で、屁舞留は足がすくんでしまう。素戔鳴から溢れ出る『神気』が、自分のそれの比ではない事を感じ取ってしまったが故に、屁舞留は素戔鳴に恐怖した。

「……そこに居ては危ない。離れていよ」

「…………?」
 意外にも優しい声をかけられたので、屁舞留はそろりと立ち上がり、素戔鳴に命じられるままに後ろに下がる。兵士たちも屁舞留の手を取って――――彼らの後ろへと、屁舞留の身体を下がらせてくれた。
 屁舞留が後ろに下がったのを確認してから、素戔鳴は改めて兵達に命を下す。

「火矢を放て!!」

 号令に合わせて、一斉に桃畑に向かって火矢が放たれる。そこはあっという間に、火の海と化した。

「な―――――!!」

 あまりの光景に、屁舞留は絶句するしかない。
(何て事を!! ここは、この村の者が一生懸命に世話をし続けた畑なのに――――!!)
 怒鳴らなければならない。叫ばなければならないと、屁舞留は本能的に一歩、前に進み出る。だが、振り返った素戔鳴と視線があった瞬間、屁舞留の言葉は総て、口の中から奥に呑みこまれてしまった。
「あ………! あ…………!」
 馬鹿みたいに震えながら、そんな言葉しか言えない屁舞留。その様子から、少しその事情を察した素戔鳴が、口を開いた。
「汝は、ここの土地の者か?」
「う………! う――――」
 否定の言葉も、肯定の言葉も吐けない屁舞留。そんな様子に素戔鳴は小さくため息を吐くと、言葉を続けた。
「あの木は吾の『仙桃』だ。それをここの人間たちが私物化し、あまつさえ妖魔たちにも与えたために、これを『処分』しに来た。こんな愚行をした人間共も妖魔共も――――最早、許す事は出来ん」
「―――――!」
 絶句する屁舞留に、素戔鳴は、更にたたみかけてくる。
「何故汝の様な物がここに居るのかは知らぬが――――汝も、いつまでも人の子の様な妖魔と狎れ合う者どもの傍に何時までもいる必要はない。ここから離れる事を考えよ」
「……………!」
 その素戔鳴の意見には違和感を覚えるが、反論する勇気など、屁舞留は持たない。ただ、馬鹿みたいに震える事しか出来なかった。

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