農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 213 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/15 14:07   >>

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「では、行くぞ! 妖魔も人も――――殲滅する!」
 素戔鳴はそう言うと、軍を村の方へと進めて行く。後には、ただ燃えて行く桃畑と、屁舞留だけが残された。

「あ………! あ………! あ―――――!!」

 誰もいなくなってしまってから、ようやく屁舞留の口から声が漏れる。

「あああああっ!! ああ――――――ッ!!!」

 屁舞留の絶叫は、燃え盛る炎の海にかき消された。


「止めろ!!」
 キョウジは子供を抱きしめて庇う。だが、刃は庇った自分の身体をすり抜け――――子供の命を屠って行った。末期の声を上げることすら出来ずに、子供の命は天に還って行く。
「ああ………!」
 自分の無力を嘆いて、キョウジは涙を流す。もう何度――――彼はその行為を繰り返した事だろう。分かっている。何にも触れられる事の出来ない霊体の今の自分の状態では―――――ここに存在しないのと同じだ。惨劇を止める事など出来ようはずがない。何も救えない。分かっている。分かっているけど――――!

 ドカッ!!

 妖魔たちを弾き飛ばして、シュバルツが走る。その手には、助けた子供を抱きかかえていた。
(シュバルツ……!)
 1人を助けるシュバルツの周りでも、惨劇は繰り広げられていた。1人を救うのに、10人を見捨てなければならないこの現状――――シュバルツが歯噛みしているのが、キョウジにも見てとれた。
(人手が足りなさ過ぎる……! それに――――)
 村のあちこちで、妖魔同士が戦っている姿が見える。どうやら妖魔の中にも、村人を殺そうとする者と、それを守ろうとする者が居るようであった。それ故に、振るわれるシュバルツの刀に『迷い』が生じている。誰が味方で誰が敵なのか――――シュバルツにも、区別がついていないのだろう。それは、シュバルツの反応を、一歩、遅らせる事に繋がってしまう。
「―――ぐッ!!」
 シュバルツの足が切り裂かれる。だが、彼は踏ん張ると、再び走り始めた。
(シュバルツの怪我は……治りつつある……)
 既に傷だらけになってしまっているシュバルツの身体だが、傷がゆっくりとだか、再生して行っているのが分かった。やはり、不死の身体を持つシュバルツ。妖魔が彼を攻撃したぐらいでは、死ぬようなことはないのだ。
 しかし、屁舞留の話では、シュバルツに宿る死の影は消えてはいないと言う。
 では一体何が―――――シュバルツを『死』へと導いてしまうのだろう?
「ああ………!」
 1人を助け終えたシュバルツが、先程の場所に舞い戻って来て、転がる村人たちの遺体を見て、また、涙を流している。己の無力を痛感しているのだろう。
(シュバルツ……ッ!)
 自分もまた、同じだ。
 いや、シュバルツ以上に自分は無力だ。
 自分は本当に――――何も出来なかった。
 ただ、見届ける事しか出来ない存在に、何の意味があると言うのだろう。

「行った所で、吾らに出来る事など何もない……。己の無力を痛感して、傷つくのはお主の方だぞ、キョウジ………」

 屁舞留のくれた忠告が、頭の中を回る。
 本当に、その通りだと思う。

 だけど――――

 シュバルツは涙を拭いて、また立ち上がっている。
 まだあきらめないのだ。彼は。
 1人でも2人でも助けたいと――――願っている。

 ならば、私も。

 無駄と知りつつ、キョウジも顔を上げて走り出す。
 1人でも2人でも、生存者を見つけたかった。
 涙を流しながらも走りまわるシュバルツの、手助けをしたかった。

 例え99回叫んで駄目だった事でも
 100回目――――叫んだ時に、もしかしたら、何らかの奇跡が起きるかもしれないじゃないか。

 そんな願いを抱いて、キョウジは走る。
 やがて燃え盛る炎の中に、1人の生存者を見つけた。
「大丈夫か!? しっかり!!」
 キョウジがそう声をかけると、倒れていた女性はキョウジと視線を合わせて、にこり、と、微笑みかけて来た。
「ああ、神様――――」
「……私が、見えるのか……?」
 茫然とそう言うキョウジに、女性は頷いた。
「神様……。来てくださったのですね……」
 女性の肩口から、激しく出血しているのが見える。
「止血を――――!」
 キョウジは叫んで、女性の手当てをしようとする。しかし彼の手は、女性の身体に触れる事が出来ずに、空しく通り過ぎて行くだけだった。
「…………!」
 歯噛みしながら己が手を見つめるキョウジに、女性は縋るように声をかけて来た。
「……神様……! 私の事は、良いから……! この子を……! この子を――――!」
 そう言って女性がキョウジに差し出そうとする子供は、もう既に事切れていた。
 泣き叫びたくなるのをぐっと堪えて、キョウジは女性に声をかける。
「ああ……分かった……。だけど、貴女も助からなければ………!」
 そんなキョウジに、女性はふわりと優しい笑みを浮かべると、首を横に振った。
「私は……もう、良いんです……。それよりも、神様……! 私よりも、どうか……他の人たちを……!」
「駄目だ! 叫んで! 助けを呼んで――――!」
 キョウジは必死に、女性に訴えた。
「私の声はシュバルツには聞こえない! だけど、貴方が叫べばその声は、きっと、シュバルツに届く! だからお願いだ!! 叫んで――――!!」
 だが女性は、キョウジの言葉に首を横に振り続けた。

「神様……。貴方、だけ……でも……助かっ…………」

 その言葉を最後に、女性の方も事切れてしまった。
「駄目だ!! 死んでは――――!!」
 キョウジが叫ぶと同時に、燃えていた周りの壁が、ドドドドッ!! と、音を立てて崩れてくる。その瓦礫はキョウジの身体を素通りして――――死んだ母子の身体の上に崩れ落ちて行った。
 

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