農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 214 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/16 15:07   >>

ガッツ(がんばれ!) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

 あっという間に、周囲は炎の渦に包まれる。
 なのに自分は、熱さも感じない。当然、自分の身体が燃えだす事もない。
 何も、何も出来ない今の自分。
 本当に――――無力だった。

「あ………! あ………!」

 止めようもない涙があふれ、嗚咽が漏れる。
 いくら泣いても周囲にこの声が聞こえる事はないから、キョウジは逆に安心して泣けた。
 このまま本当に膝を折って――――ここで泣き崩れてしまいたくなる。
 だけど――――

 独り、走り続けるシュバルツの姿。
 まだ彼は、あきらめていないのだろう。村人たちを、1人でも救う事を。
 ならば、私も――――!

 ぐしっと、涙を拭い、キョウジもまた立ち上がる。
 見届けなければと思った。
 シュバルツの、戦いを。

 キョウジは立ち上がると、再びシュバルツの後を追って、走り出していた。


 屁舞留はふらふらと独り、村の外れの森の中を歩いていた。するとそこに、茂みの中で1人、うずくまって震えているケイタの姿を見つけた。
「ケイタ………」
 震えているケイタの背中には、死の影が張り付いてはいない。屁舞留は少しホッとして、ケイタの隣に座った。
「ケイタ……。怯えるな。そなたは大丈夫じゃ……。吾が側についておるからの……」
 屁舞留がそう声をかけても、当然ケイタの耳には聞こえていない。震えながら縋るように「シュバルツさん……! シュバルツさん……!」と、小声で呟いている。
「ケイタ……」
 屁舞留は少し淋しかったが、仕方が無い事だとも思った。自分は本当に――――今のケイタには何もしてやる事が出来ないのだから。ただ、触れられずとも、その背に手を伸ばさずにはいられなかった。その日一日あった事を、笑顔で報告してくれたあの明るい少年の姿を、もう一度見たいと願う。
 しばらくそうしてケイタの横についていた屁舞留であったが、やがて、ケイタの背にも、死の闇が形成されつつある事に気づいてしまう。
「な……! 駄目じゃ!!」
 屁舞留は慌ててその闇を追い払おうとした。だが、そんな努力を嘲笑うかのように、死の闇はケイタの背に集まって来るばかりで。
「止めてくれ!! 何でじゃ!! どうして――――!!」
 そうやって屁舞留が懸命に闇と格闘している所に――――誰かがふわり、と、屁舞留の身体に触れて来た。
「――――!?」
 屁舞留が驚いて振り向くと、そこにはキョウジが立っていた。
「キョウジ……!」
 屁舞留に声をかけられたキョウジは、その瞳から大粒の涙を零し始めた。
「屁舞留……ッ!」
 キョウジは泣きながら――――屁舞留の身体をぎゅっと、抱きしめて来た。
「キ、キョウジ!?」
「屁舞留……! 屁舞留……ッ!」
「ど、どうしたのじゃ……?」
 戸惑いながら問うてくる屁舞留に、キョウジは震えながら言葉を紡ぐ。

「やはり……私が触れられるのは、屁舞留………お前だけ、なのだな……」

「―――――!」

「分かってはいた……! 分かってはいたけど……ッ!」

 その後は嗚咽に紛れてしまって、言葉に出来ないキョウジ。
「キョウジ……!」
 屁舞留はキョウジの手を、ぎゅっと握りしめた。
(だから言ったのに………!)
 屁舞留は歯を食いしばる。行った所で何も出来ない。何も止められない。何も変えられない。ただ――――目の前の惨劇を、眺めているだけ。零れ落ちて行く命を、見送るだけ――――それが、今の自分達の存在だった。
 酷く滑稽で、愚かな存在。叫び声一つすら、誰にも届かせる事の出来ない存在。
 だけど屁舞留は、今こうして泣いているキョウジを嘲笑ったり非難したりする気にはなれなかった。
 だってキョウジは、自分と同じ『地獄』を見て来たのだ。村が滅んだ『あの日』に、自分が体験したのと同じ『地獄』を。

 ならば自分は、キョウジにどうしてやればいいのだろう。
 何と、声をかければいいのだろう。

 そんな事を考えながら――――屁舞留はキョウジの手を握り続けた。

 やがて、ひとしきり泣いて落ち着いたのか、キョウジが顔を上げ、震えているケイタの存在に気づく。
「この子は……?」
「ケイタだ……。お主の『影』が助けてくれた――――」
 キョウジの問いに答えながら、屁舞留は暗澹たる気持ちでケイタを眺めていた。ああ。やはり、ケイタの背に宿る死の影は、色濃くなっていくばかりだ。本当に――――どうすればいいと、言うのだろう。
「ならば、こんな所に1人で居ないで――――助かった皆と合流すればいいのに……」
「…………!」
 振り向く屁舞留に、キョウジは涙を拭いながら答える。
「シュバルツが助けた村人たちが、集まっている場所があるんだ。そこに行けば――――」
 屁舞留はその言葉に少し目を見開いた後、哀しそうに下を向いた。
「………無理じゃ……。あそこの者たちも、おそらく助からぬ……」
「な―――――!」
 驚愕するキョウジに、屁舞留は淡々と言葉を続ける。
「あそこの洞窟も、死の影が濃厚に覆いかぶさっていた。恐らく近いうちに、あそこの者たちも全員、死を迎えるだろう……」
「そんな――――! じゃあ、こんな事をしている場合じゃない! 皆に逃げるように言わないと――――!」

「そう伝えられるのならば……! 運命が変えられるのならば! 吾とてそうしたい……ッ!!」

「…………!」
 屁舞留の悲鳴の様な声に、キョウジは絶句してしまう。
「でも、無理なのだ……! 吾らには何も出来ぬ……! この戦場で、そう、学ばなんだのか!? キョウジ、お前は――――!!」
 そのまま小さく身を振るわせる屁舞留の横で、キョウジもペタン、と、座り込んでしまった。

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