農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 216 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/18 08:03   >>

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「しかもそれだけでは飽き足らず、吾の『仙桃』を妖魔の手に触れさせ、揚句、『報酬』として分け与えた!! 村人達は『仙桃』を売り利益を得て、それを私物化した!!」

(……………!)
 屁舞留はギリ、と、歯を食いしばった。あの妖蛇の力によってこちらの世界に村が飛ばされてきた時に、一本だけ、村の物ではない桃の木が生えていたのは知っていた。
 でも村の者たちはその桃もちゃんと手塩をかけて世話をしていたし、桃の木だって村人たちの世話に嬉しそうに応えていた。それを、こんな風に断罪されてしまうだなんて、誰が想像し得ただろうか。何かひどく理不尽な物を感じてしまって――――屁舞留は拳を握りしめていた。
「シュバルツ……! シュバルツ……ッ!」
 その横でキョウジは、ひたすら身体を小さくして、涙を流し続けている。
「キョウジ……!」
 屁舞留は、キョウジを素戔鳴から隠すために結界を張った。キョウジを守ってやりたいと言う想いもあったし、今は何故か――――キョウジの姿を素戔鳴から隠した方がいい、と、本能的に判断したのもあった。この心優しい青年が、とにかく傷つきすぎている。これ以上、傷つく事が無いようにと、祈る。

「どうだ……! これだけ罪を犯せば、裁きを受けるのは自明の理であろう!!」
 そう言いながら怒れる仁王は一歩、前へと進み出る。それに対して尚もシュバルツは首を振った。
「それでも――――村人たちは知らなかったんだ!! あれが『仙桃』だなんて……! それに村人たちはあの桃を――――!」

「黙れ!! 人間ですら無いモノが、何をぬかすか!!」

 容赦のない素戔鳴の断罪の声に、キョウジの身体がビクッと反応した。

「吾には見えるぞ……! その身体、『何』で出来ておる物なのか……!」
「う………!」
 怯むシュバルツに、仁王は更にたたみかけてくる。
「何と不自然でいびつで………『邪悪』な物で出来ておるのか!」
「…………!」
「そんな『モノ』が、人間のふりをし、善良なふりをして人間たちに近づく……! 汝の様なモノが、一番性質が悪い!!」

 素戔鳴の断罪は、尚も続く。キョウジはただ――――身を小さくして、涙を流しながら聞き続けるしかなかった。

 どうして
 どうして

 本来、ここで責められるべきは自分だ。
 自分が、シュバルツを作った。自分が、シュバルツをそう言うふうにしてしまった。
 シュバルツは、何も悪くない。シュバルツはただ――――自分を助けようとして、犠牲になってしまっただけだ。彼が望んで『そう』なった訳ではないのに。

 ああ―――――
 今更ながら、何て重い十字架を、シュバルツに背負わせてしまったのだろう。

 総ての『罪』は、自分にある。
 だから、自分こそがあの仁王の前に立って、裁かれなければならないのに。

 何故今――――断罪されているのがシュバルツなんだ。
 どうして――――シュバルツに、あんな言葉を聞かせてしまっているんだ。
 どうして自分は、そんなシュバルツを助けてやる事が出来ないんだ。

 無力。
 あまりにも、無力すぎる。

「キョウジ……! 落ちつけよ、キョウジ……!」
 屁舞留はキョウジの手を握りながら、懸命に声をかけ続ける。
「お主は、何も悪くはない……! お主の『影』もじゃ……!」
 実際屁舞留は、素戔鳴の言葉には違和感を強く感じていた。
 妖魔と村人たちを、ずっと見知ってきたからだろうか。穏やかに交流をしてきた村人たちや妖魔たちに、後ろめたい所など何もない。そこまで断罪されるいわれもないようにすら思えた。
 それとも、神仙の者たちと言うのは、皆、そういうふうに考えるものなのだろうか。
『妖魔』と言うだけで、『人間ではない』と言うだけで、許せない――――そう言うふうに思わなければならないのだろうか。それとも、そう言うふうに考えられない、自分こそが異質で、おかしい存在なのだろうか。
 何が正解で、何が間違っているのかなんて、屁舞留には分かりかねた。

 だけど、少なくとも――――あのシュバルツとこのキョウジが、そこまで断罪されなければならない程の『咎人』ではない。それだけは、確かなのだ。

 だから屁舞留は懸命に――――キョウジの手を握って、「お前は悪くない」と伝え続ける。
 だけど、身を小さくして泣き続けるキョウジは、ただ、首を横に振り続けるだけで。
「キョウジ……!」
 屁舞留は後悔していた。
 キョウジをここに連れてくるのではかなったと、悔いた。
 自分は散々経験して、知っていた筈だったのに。ここに来ても、何も出来ない存在の自分は、ただ、傷つくしか出来無いと言う事を。
 素戔鳴が、シュバルツに向かって剣を振り上げようとしている。もうシュバルツは、助からない。
 とにかくこの悪夢のような空間が――――早く過ぎ去ってくれる事だけを、屁舞留は祈っていた。

 だが、その刹那。

「違あああああ―――――う!!」

 それまで二人の傍で、小さく震えていた少年が、渾身の叫び声を上げていた。
「――――!」
 その場に居た全員の注目が、その1人の少年に集まる。
 ケイタは、おかしい程に震えていた。だが、立ち上がっていた。素戔鳴に睨まれても、踏ん張っていた。

「そ……そのヒトは……何も、悪くないッ!!」

 そして、その少年から発せられた、命がけの『言葉』
(あ…………!)
「助けて」でもなく、「お前のせいで―――!」という非難の言葉でもなく
 この極限の状況で、ただただ、こちらを擁護してくれた、その言葉は
 キョウジとシュバルツの心を打つには、充分すぎた。

 この少年だけは、死なせたくない。
 何としても――――守らなければ。

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