農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 217 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/19 01:10   >>

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 そう願って、でも、何も出来ないと分かっている自分は、思わずシュバルツの方を見る。
 少年を見つめる、シュバルツの目つきが変わる。
 素戔鳴に、それと気づかれないように、身構えている。
 彼は本当に――――最後の力を振り絞って、この少年を守るつもりなのだと、キョウジは悟った。

「死ね」

 無情なる神の号令と共に、兵士たちから一斉に、少年に向かって矢が放たれる。
 その刹那、シュバルツが動いた。
 矢よりも早く動いた彼の身体は、そのまま風の様に、少年の身体をかっさらって行ったのだ。
 それと同時に、キョウジもまた――――屁舞留の結界から飛び出して、シュバルツについて行く。
「キョウジ!!」
 そのあまりのスピードに、屁舞留は驚いた。
 だが屁舞留もまた、慌ててその後を追いかけだす。
 ただ、心の中は、信じられぬ想いでいっぱいだった。
 あんなに傷だらけだったシュバルツの身体。
 もう――――一動くことすら困難であるように、見えたのに。

(奇跡だ……!)

 ケイタに宿りかけていた死の影が、完全に払われていく瞬間を見た。

 これは、間違いなく、あのシュバルツが起こした奇跡だ。
 キョウジが村に送り込んでくれた、シュバルツが起こした奇跡だ。
 信じられない。
 これが………『人の子』たちが持ち得る、底力だと言うのか――――

 少年を庇った瞬間、シュバルツの身体に刺さる、何本もの矢。
 さらに広がって行く、青白いひび割れ。たまらずキョウジは手を伸ばすが、やはり自分の手は、空しくシュバルツを素通りして行くだけだった。
(シュバルツ……! シュバルツ……ッ!)
 ただもう、壊れて行くしかない、シュバルツの身体。今こうして走っている事自体が――――もう、奇跡の様だ。
 走るシュバルツの像が、涙で変に歪む。
 だけど、見届けなければと思った。

 自分にはもう――――それしか、出来ないのだから。

「ケイタ……」
 苦しい息の下で、それでもシュバルツは言葉を紡ぐ。

「ありがとう……」

(…………!)
 キョウジはたまらず、声を上げて泣き伏したくなってしまった。

 どうして
 どうして、貴方の口からは

 そんな綺麗な言葉だけが、零れ落ちてくるのだろう。

 あれだけ傷つけられたのに。
 あれだけ理不尽に、自分ではどうしようもない『罪』を責め立てられたのに。
 何故、その『大元』を恨まないのか。
 どうして――――自分の境遇を嘆かないのか。
 貴方をそんな風にしてしまったのは―――――間違いなく、この私なのに。
 どうして――――

「シュバルツ!!」

 前方から走ってきた龍の忍者が、傷だらけのシュバルツを抱き止める。
(ハヤブサ……!)
 キョウジの瞳から、次から次へと涙が溢れる。
 あまりにも遅すぎた――――二人の再会だった。
 震えるハヤブサの腕の中で、何度も「これでいい……。これでいいんだ……」と、言いながら、微笑んでいたシュバルツ。

「ハヤブサ……。今まで……ありがとう……」
「シュバルツ……ッ!」
「こんな……私を……愛して……くれて……あり が――――」

 そのまま、ハヤブサの腕の中で、シュバルツは永遠に散って行った。キョウジは立っていられなくなって、その場にペタン、と、座り込んでしまった。
「キョウジ……!」
 やっとキョウジに追いついた屁舞留が、一通りの状況を理解する。
 だが、座り込むキョウジに、屁舞留はすぐには声をかけられなかった。あまりにも茫然自失としてしまっているキョウジ。その背中が、酷く痛々しかった。

 不意に。
 地の底から湧き出でる様な咆哮が、辺りに響き渡る。
 あまりにも異様な、人間離れをした様な咆哮であったので、その『声』が、シュバルツのロングコートを握りしめている男から発せられていると気づくのに、屁舞留は少し時間がかかった。
 それと同時に、男から発せられる禍々しいまでのどす黒い『気』
「キョウジ!!」
 危険を感じた屁舞留は、座り込んでいるキョウジを咄嗟に庇った。その目の前で、黒装束の男が、まさに『魔神』へと変化しようとしていた。それを、男女の神仙の者たちと方術師が、懸命に止めていた。方術師に『封』を施された男が、声も無く昏倒する。

「な、何者なのじゃ……? あの男は……!」

 騒ぎが鎮まったのを確認してから、屁舞留は思わずキョウジに問うていた。それほどまでに――――あの男から感じた『気』は、異様だった。

「……彼の名は、リュウ・ハヤブサ……」

 泣きぬれたキョウジから、ポツリ、と、落とされるように、その言葉は紡がれた。

「……シュバルツを、とても大事に……想ってくれている……人、だよ……」

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