農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 218 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/19 15:48   >>

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 その後。
 結局キョウジは、気を失ったハヤブサの事が気になって、そのままふらふらとついて来ていた。
 気を失ってもシュバルツのロングコートを握りしめていたハヤブサ。ガバッと飛び起きて、その手にしたコートを見た瞬間、彼の、総ての動きが止まってしまっていた。
(ハヤブサ……!)
 彼の悲痛なその姿を見て、キョウジも、どうしたらいいのか、本当に分からなくなってしまっていた。そのまま彼は陣屋の真ん中にふらふらと歩いて行くと、そこにペタン、と、座り込んでしまう。
 霊体であるキョウジの存在は、当然、誰にも気づかれる事は無い。誰はばかることなく『泣ける』と気が付いたキョウジの瞳からは、また、はらはらと涙が零れ落ちて来ていた。

 おかしい。
 涙など――――当に枯れ果てている、と、思っていたのに。

(結局、何だったんだろうな……。私のした事は……)

 屁舞留の村を守ることもできず、シュバルツを殺して――――
 ハヤブサから、この上もなく大事なヒトを、奪ってしまった。

 甘かった。
「シュバルツ独りを送り込めば何とかなる」なんて
 思い上がりも甚だしい考えだった。
 滅びた村の『運命』を覆すなんて
 そんな簡単にできる事ではない。

 どうすれば良かった?
 本当に――――どうすれば良かったと言うのだろう。

「キョウジ……」

 屁舞留は自身の周りに結界を張りながら、そろそろとキョウジに近づいて行った。
 自分の霊力は弱い。だから、めったなことで人に見つかることはない、と、屁舞留も分かってはいたが、それでも――――こんなにたくさんの見知らぬ人の間に立ち入ることは慣れない事であったから、少し怖かった。
 でも、それ以上に――――今のキョウジを放ってはおけないと思う。
 屁舞留はキョウジに近づくと、その結界の中にキョウジの霊体をそっと取り込んだ。

「キョウジ……」

 屁舞留が声をかけると、キョウジの身体がビクッ! と、反応した。屁舞留がキョウジに触れようとすると、彼は怯えたようにその身を一歩、後ろに下がらせた。
「キョウジ……」
 屁舞留が少し、戸惑ったように声をかけると、キョウジはがたがたと震えながら、消え入りそうな声で謝罪してきた。

「屁舞留……。ごめん……。ごめんなさい……」

「キョウジ……何故、謝る?」
 そう言いながら、屁舞留はそっとキョウジに触れる。だがキョウジは、その優しい手を拒絶するかのように、頭を振った。
「だ、だって……貴方の村を………結局、守ることもできずに………ッ!」
 屁舞留は少し小さな息を吐くと、多少強引にキョウジの手を取った。
「それは、少し違うぞキョウジ………」
「で、でも屁舞留……!」
 涙を流し続けるキョウジに、屁舞留は小さく頭を振る。
「……確かに、吾の居たあの村は滅んだ。だけどキョウジ――――最初に村が滅ぼされた時とは、また少し、状況が違っておるのじゃ」
「違う………? 何が………?」
 問いかけてくるキョウジに、屁舞留は頷く。
「ああ。大分違う。それが何か、分かるか? キョウジ……」
 屁舞留の問いに、当然キョウジは首を振る。屁舞留はにこりと微笑んだ。

「――――1人、助かっておるではないか!」

「独り……?」
「ああ。1人――――ケイタが助かっておる」
「ケイタ君が……」
 確かにシュバルツは、あの少年を命がけで守った。だけど、独り。たった――――独りなのだ。
「でも………独りじゃ、どうしようも……」
 震えながら零すキョウジの手を、屁舞留は力強く握る。
「そう、『独り』じゃ。でもキョウジ……。これはすごい事なのだぞ? 何故だか分かるか?」
 屁舞留の言わんとしている事が分からず、首を振るキョウジ。屁舞留はそんな彼に――――もう一度、微笑みかけた。

「分かるか……? 『零』ではないのだ!!」

「…………!」
「『零』ではないと言う事は、すごい事なのだぞ? キョウジ! やがてケイタが大きくなり、家族を持つと、子供が生まれる! その子がまた伴侶を娶ると、孫が出来る! ケイタ1人から――――命が繋がって、またそこに村が出来るのだ!!」
「屁舞留……!」
「分かるかキョウジ……! 吾を助けてくれた男から出来た村の命が――――また、繋がって行くのだ!!」
 そう話しながら、屁舞留もまた、涙を流していた。
 だけどこれは、うれし涙なのだと屁舞留は思う。たった1人、あの薄暗い結界の中で、供養のために石を積んでいた時とは、状況が全然違っているのだ。
 あの時は、全く先の見えない真っ暗な闇の中で、自分の身も朽ちて行くしかないと思っていた。
 だけど、今は『光』がある。
『ケイタ』と言う『命』が繋がった、希望の『光』が――――
 その光があるというだけで、どれ程心強い事だろう。

 もちろん、新しく出来て行くその村で、自分が再び『土地神』として崇められる可能性など、皆無に等しい。
 だけど、それでいいのだと屁舞留は思った。
 自分は所詮、元々取るに足らない様な霊力しか持っていない身。そして、神仙界にも帰れず、もう朽ちて行くだけの存在なのだから、こうして祀りあげられていた事こそが、本来自分には望外すぎた幸せであったように思うのだ。
 だから屁舞留は、想いを込めて、キョウジにこう言った。

「ありがとう、キョウジ……。お主は確かに、村を救ってくれた……。吾に『希望の光』を与えてくれたのだ……!」

「屁舞留……!」
 だがその言葉を聞いたキョウジからは、さらに大粒の涙が零れ始めた。
「屁舞留………ッ!」
 本当に――――忸怩たる思いだった。
 こんなにも、心優しい屁舞留が居た村―――――何が何でも救わなければならなかったのに。

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