農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 222 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/25 00:58   >>

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「これが……!」
 キョウジが見上げる先に立つ、一本の桃の木。その木は、桃を鈴なりに実をつけていた。
「……大丈夫じゃ……。そう、怯えるでない――――」
 屁舞留は優しく木に触れると、そっとその木の幹に額を当てた。木の葉が、風もないのにざわ……と揺らめく。その音が哀しげに耳に響いたのは、キョウジの気のせいだろうか。
「そう……。そうじゃ……。そなたは悪くない……」
 屁舞留はそう言いながら、目を閉じて木に額を当て続ける。しばらくそうしていると、歯のざわめきの音もだんだんと小さくなり、静かになって行った。
「よし……。良い子じゃな……」
 そう言うと、屁舞留は木からそっと離れる。すると、それに応えるように、木から屁舞留の手の中に、桃の実がポトン、と、落ちて来た。

「……うん、甘い。美味じゃな」

 シャクッ、と、音を立てて屁舞留が桃をかじる。
「キョウジもどうじゃ?」
 もう一つ落としてきた桃を、屁舞留がキョウジに差し出した。
「え……? 何で? 現世の物には、触れない筈なのに……」
 キョウジがそう言いながらも桃を受け取ると、屁舞留はにこりと笑った。
「これは、この木だけが時々くれる、霊体の様な物だ。だから、吾らの様な者でも触ることができる。この木なりの『礼』のつもりなのであろうな」
「そうですか……」
 そう言いながらキョウジも、その桃をシャクッ、とかじる。口内に、甘くて優しい味が広がった。
「何故この木だけがこんな事が出来るのか、ずっと不思議であったが……この木が神仙界の物で、仙桃を生らす特別な木であったからなのだな。これでようやく得心したぞ」
 そう言いながら屁舞留は、その桃の木を見上げる。木の刃の間から、優しい木漏れ日が屁舞留の頬に落ちていた。
「のう、キョウジよ……」
 優しい風に吹かれながら、屁舞留がポツリと漏らす。
「今回の災厄の原因となってしまったこの桃の木だが……吾はこの桃の木の事を恨む気にはなれぬ……」
「屁舞留……」
「だって――――そうであろう? この木の何処に、『落ち度』や『咎』がある!?」
「…………!」
 少し強い屁舞留の口調に、驚くキョウジ。屁舞留の言葉は続いた。
「この村が異世界に飛ばされてしまった時に、たまたまそこに紛れ込んでしまっただけではないか! そして、世話をしてくれた村の者たちに応えるために、実を生らしていただけだ! それなのに―――――『妖魔』とやらの手に触れただけで、それは断罪されねばならぬものなのか!?」
 屁舞留の言葉を、キョウジは黙って聞いている。屁舞留の瞳が哀しげに歪んだ。
「かわいそうに……。 この木は怯えてしまっておったぞ。この先で起きる悲劇が、総て自分のせいなのではないかと苦しんでおった……」
「屁舞留………」
「植物は、想像以上に賢い――――。この木には、どうやら『先の戦』の記憶がある様じゃな……」
 屁舞留がそう言いながら、その木の幹を優しく撫でる。そんな屁舞留の頬を、優しい木漏れ日が照らし続けていた。
「吾には分からぬ……! ただ『妖魔』と言うだけで、それの一から十まで嫌いぬかなければならぬものなのか? そう言う考え方をしなければ――――神仙としては、認められぬものなのか? そんなのって……! そう言う考え方は――――」
 屁舞留は、拳を震わせながら叫んだ。

「絶対におかしい……! 吾には理解できぬ!!」

 キョウジが、息を飲む気配がする。だが屁舞留は、構わず続けた。
「それとも、こんな風に考えてしまう吾の方こそが異常で、おかしいのか? 吾は間違ってしまっておるのか?」
 屁舞留のその言葉には、キョウジは静かに頭を振った。
「何が間違っているとか……何が正しいとかは、私は判断は出来ないよ。ただ……」
 キョウジの面に、笑みが浮かぶ。

「貴方のそういう考え方は、私は好きだ。いいと思うよ」

「キョウジ……!」
 茫然と見つめ返す屁舞留に、キョウジは優しく頷く。それを見て屁舞留の面にも、ようやく柔らかい笑みが浮かんだ。
 本当は、あの素戔鳴に今の考えを叫んでやりたい。
(だけど、無理じゃな……)
 そう感じて、屁舞留は苦笑する。自分の『神気』と素戔鳴の『神気』どちらが強大かなんて、比べるべくもない。自分など、叫び声を上げる前に瞬殺されてしまうだろう。
 だけどあの状況で、『違う!』と、叫び声を上げたケイタは、本当にすごいと思う。
 そう尊敬すると同時に、屁舞留は少しケイタが羨ましくもあった。彼の上げた叫びで、キョウジやキョウジの影が、どれほど救われた事だろう。

 自分も、そう言う者でありたかった。
 キョウジ達を、救える存在であればよかったのに。

「――――!」
 ふと、向こうから歩いてくる龍の忍者とシュバルツの姿を見て、屁舞留は慌てて物陰に隠れた。向こうからは自分の姿が見える事はない。心配ないと分かってはいるが、屁舞留は特に、あの龍の忍者の眼前に立つ事に、何故か恐怖を覚えた。
「屁舞留? どうした?」
 きょとんとするキョウジを、屁舞留は懸命に手招きをする。
「良いからキョウジ! こっちへ来てくれ! 早く!」
「えっ? でも、シュバルツとハヤブサから隠れる必要なんて――――」
「良いから!! 早く!!」
 屁舞留があまりにも必死に叫ぶものだから、キョウジも一応屁舞留に付いて木の陰に隠れた。そうとは気づかないシュバルツとハヤブサは、たわいもない話をしながら歩を進めて来て――――やがて、一本の木の前で、その足を止めた。

「シュバルツ……。これが、例の『薬効成分のある桃』が生る木か?」

 そう言いながらハヤブサは、仙桃の木を眺めている。
「ああ、そうだ……。この木の桃に、かなり強力な薬効成分が含まれている」
「そうか……」
 と、言ったきり、無言で桃の木を見上げるハヤブサ。
 屁舞留は恐る恐るその様子を少し離れた木の陰から見守っていたが、木を見るハヤブサの視線に『殺気』の様な物を感じてしまって、屁舞留は知らず身を強張らせてしまう。

(こんな物がここにあるから……!)

 龍の忍者の心の声が、こちらに響いてくる。屁舞留はそんなハヤブサの様子に恐怖を覚えた。
「キ、キョウジ……!」
 思わず縋る様に、キョウジの名を呼んでしまう。
「どうした? 屁舞留」
「あ、あの男……ハヤブサは、あの木を斬るじゃろうか?」

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