農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 202 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/05 14:47   >>

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 ハヤブサの方は『死』を、ことのほか冷静に受け止めてくれているのに、シュバルツはそうではなかった。まだ遺骸に縋りつき、あまつさえ、離れるのを嫌がるようなそぶりすら見せている。
(駄目だって! シュバルツ!! あそこに居る『龍の首』が、見えていないのか!?)
 キョウジは懸命に怒鳴って、シュバルツの服を引っ張ろうと試みているのだが、やはり、その総て空回っていた。だが、龍の首が火の玉を吐いた瞬間、龍の忍者がシュバルツを抱えて脱兎のごとく走りだす。
(速っ……!)
 そのスピードに驚いたキョウジであるが、すぐにハヤブサたちに追いつく事が出来た。こういう時、『霊体』と言う物は非常に便利なのだなと思ったりもした。
 ハヤブサは崩れかけたビルに飛び込んで、龍の首の攻撃を何とかしのいだ。
(良かった………)
 ホッとしたのもつかの間、いきなり地震の様な激しい揺れに見舞われる。それと同時にビルの外側が、さっと暗黒に包まれた。
(――――!?)
 キョウジがビルの窓から外をのぞくと、暗黒の中にいくつもの光が浮かび上がっては消えて行く、幻想的な世界がそこにあった。そして遠くの方に、巨大な龍の身体が光の間を縫うように、うねっている姿見える。
(何だ? これは……。何らかの異変に、私たちは巻き込まれたのか……?)
 自分が霊体になっているせいだろうか。普段ならおそらく感じる事も出来ないであろう、あの龍からの『魔導』の力をビシビシと感じる。それなのに、今自分達がいる空間は、恐ろしい程静寂であった。
「う…………」
 そんな中、シュバルツが低く呻いて覚醒する。龍の首から逃げる際、ハヤブサに半ば強引にその意識を奪われていたシュバルツであるが、今の揺れで、目が覚めてしまったらしい。
 目が覚めると同時に、己が身体が回復する事を確認して、シュバルツは仄暗く笑いだした。

(シュバルツ……!)

 キョウジはいたたまれない気持ちでそんなシュバルツを見つめていた。
 キョウジの生死と自分の生死は連動している――――それはシュバルツにとっては、唯一の希望と言っても良い様な物であっただろう。キョウジが死ぬ時が、すなわちこの自分の歪な運命からの解放の時――――彼は、そう信じていた筈だった。
 しかし、現実に起きた事は、そのすべてを否定する物でしか無かった。
 今彼は、目の前に突きつけられていた。
『お前は、生きていない身体で死ぬこともできず、永遠に彷徨わなければならないのだ』と言う、容赦のない現実を。

 もうシュバルツは、何者にも縛られる事もなく、誰よりも自由で
 そしてそれは――――どうしようもない孤独の始まりでもあった。

 それは、『受け入れろ』と言われても、簡単に受け入れられるものではないだろう。
『キョウジを守れなかった』という自責の念も手伝って、それは彼を、自傷行為へと走らせた。

「馬鹿っ!! 止めろ!!」

 そんなシュバルツを、ハヤブサが身体を張って止めていた。

(……ハヤブサがいてくれて、本当に良かった……!)
 キョウジはそんな二人を、がたがたと震え、大粒の涙を零しながら見つめていた。

 今ここに、ハヤブサがいてくれてよかった。
 龍の首が出現してから彼がいなかったら、シュバルツも本当に、どうなってしまっていたか分からない。
 シュバルツが『シュバルツ』のままで踏みとどまれたのは、ハヤブサの支えに依るところが大きかった。

「キョウジ……ッ!」

 座り込んだシュバルツが、自分の名を呼びながら号泣している。

 泣かないで
 泣かないで欲しい シュバルツ

 私は――――貴方を、本当に地獄へと叩き落としてしまった、張本人なのだから――――

 ごめん
 ごめんね
 貴方に伝えたい事、話しておきたかったこと――――
 沢山、在ったね

 こんなに早くお別れが来てしまうとは、正直思っていなかった。

 シュバルツに次いでハヤブサも、涙を流していた。
 暫く3人のいる空間は、ただ哀しみ一色に包まれる。
 そんな中―――――

「ハヤブサ……」

 涙にくれるシュバルツが、ハヤブサの温もりを求めだす。
 ハヤブサも、シュバルツに求められるままに、それに応じていた。

(あ、ああ……愛し合うんだね……)

 キョウジは邪魔をしたらいけないと、その場から離れる決意を固める。きっと、シュバルツのためにも自分のためにも、いつまでもシュバルツの傍に自分は留まらない方が良いのだと、キョウジは思った。
 ビルの窓から外に出ようとして、最後にもう一度とシュバルツ方に振り返ると、切なさの中にも酷く妖艶な色を湛えてハヤブサを見つめる、シュバルツの姿がそこにあった。ハヤブサもそんなシュバルツを、熱い眼差しで見つめている。

(シュバルツはきっと、ハヤブサがいれば、もう大丈夫だよね……)

 死後、自分がこれからどうなってしまうのかは分からない。だけど、死者には死者の、行くべき場所があるのではなかろうか、と、キョウジは何となく思う。ならば、自分はそこに赴くべきなのだ。これ以上――――生者の邪魔をしないためにも。
 もう、未練はない。なのに、一抹の淋しさを感じるのは何故なのだろう。

(シュバルツ……さようなら……。ハヤブサ……シュバルツをよろしくね)

 二人にそう伝えて、キョウジがビルの窓から一歩、外に出た瞬間。
「―――――!?」
 いきなり、自分の霊体が、何者かによって強く引っ張られるのを感じた。
「えっ!? 何!? うわあああああ―――――!!」
 間抜けな叫び声と共に、キョウジは為す術もなくそこへと導かれて行ったのだった。

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