農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 204 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/07 01:14   >>

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「300年!?」

 驚くキョウジにその子供に見える者は頷いた。
「でも、まだたった300年じゃ……。まだまだ『神農(しんのう)様』と比べたら、ひよっこも同然じゃ……」
「神農様?」
 耳慣れない名前にキョウジがきょとん、としていると、子供に見える『神』は『心外だ』と言わんばかりに憤慨しだした。
「そなた! 神農様を知らぬのか!? 神農様はお偉いお方ぞ!! 医学にも農業にも全般に通じておられる、頭の良い御方なのじゃ!! 草や木も、神農様のためならば、喜んでその力を貸す程の御方なのじゃぞ!!」
「す、すみません! そちらの方は不勉強なので……!」
 キョウジは慌てて平謝りに謝る。すると、『神』の方もフッと小さくため息をついた。
「……まあ良い。知らぬ事など、誰にでもある事じゃ……。それに、名を知らなんだぐらいで目くじらを立てるような事は、神農様も望まれぬであろう……」
「すみません、本当に……」
 尚も恐縮して謝るキョウジに、「良い」と、『神』も頭を振る。
 実際、この『神』は、キョウジに対してそんなに怒ろうと言う気は起きてはいなかった。それは、自分の建てた供養塔に、この青年が綺麗に花を飾り付けてくれたのを見た所為かもしれなかった。

「……それよりも、また、花を咲かそう……」

 ポツリとそう言うと、また、花を咲かす作業に戻る。その両の手から、ふわりと八重咲きの小さな花が、また姿を現した。
「……綺麗な花ですね……」
 キョウジが素直に感想を述べると、その『神』も、小さく笑った。
「……桃の花じゃ……。吾の村の者たちは、桃を大事に育てておった故――――」
 そう言っている間にも、次から次へと桃の花は現れてくる。『神』は、もう泣いてはいなかった。否――――「泣いていない」と言うよりは、涙が涸れ果ててしまっている、と、言った方がしっくりくるようにキョウジは感じた。

「……どんな村だったか、聞いても良いですか……?」

 遠慮がちに、ポツリと『神』に問うてみる。この神様は、少し自分の想いを吐き出した方がいいのではと、キョウジは思ったからだ。断られたら、それはそれで止むなしと思っていた。
「………………」
 『神』は、暫くキョウジの方を推し量るように見つめていたが、フイ、と、視線を逸らして小さく笑った。

「……そうじゃのう……。どうせじゃから、聞いてもらおうか……」

 それから『神』は語りだす。自分がどのようにして、あの村の者たちと縁づいたのかを――――

 『神』の名は、『屁舞留(ひまる)』と言った。神仙界で生まれ落ち、そして神農の元で、修行する筈の者であった。何故、『修行する筈の者』であったのかというと、屁舞留はそれが出来なかったからである。何の間違いがあったのか―――――生まれ落ちたと同時に屁舞留の幼体は、人間界に落ちてしまったのだ。
 人間界に落ちた屁舞留は、そのまま石になってしまった。
 最初の内は助けを呼ぶために叫んだり足掻いたりしたものだが、そのすべてが徒労に終わってしまうと悟ると、屁舞留は50年で足掻くのを止めた。誰にも気づかれずにそのまま100年、川の清流に打たれ続けた。
 流石に100年もじっとその場に留まり続けていると、いろいろ退屈になって来る。次の100年は、川の中を探索したり、野原を転がったり、あちこちを冒険して過ごした。と言っても所詮は石の身体。そんなに長い距離を動けた訳でもなく、身体の大きさもだんだん削られて、小さなものになって行く。
 それでも、自然の理を沢山見知った。もうこのまま自分は削られ切って、消えてしまっても良いか、と、思い始めた200年目のある日、1人の男に自分の身が拾われた。

 その男は何を思ったのか、自分のために祠を立て、祀り物をしてくれた。

 いきなり、雨風をしのげる建物を貰い、更には、水や食料まで貰ってしまった訳である。この感激を――――どのように言い表せればいいと言うのだろう。
 その男の祈りと貢物のおかげで、屁舞留は石の中から霊体を得るまでに霊気を回復する事が出来た。
(これは、何か恩を返さねばいかん)
 未熟ながらに屁舞留はそう思ったので、夜な夜な石から抜け出ては、男と、男が耕している畑を見ながら考え続けた。そして、至った結論が、「畑の植物に、出来るだけ花を咲かせてやろう」と、言う事であった。

「花を?」
 問うキョウジに、屁舞留は頷く。
「そう、花を――――。200年石の身に在ったおかげで、この程度の『奇跡』は起こす事が出来た。と、言うか……これしか吾は出来なんだから――――」
(そ、それって……立派に『豊作の神様』の仕事なんじゃあないかな〜)
 キョウジはそう思ったが、敢えて口には出さなかった。今は屁舞留の話を聞く事に専念するべきと思った。

 当然、畑の作物は豊作になる。男は喜び、さらに熱心に祀ってくれるようになった。屁舞留も律儀にそれに応えた。結果――――男を中心としたその村は、徐々にだが、豊かな物になっていった。
「小さいが、良い村だった……。新しく始めた桃の栽培も軌道に乗って、何もかもがこれからって言うその矢先に――――」
「戦に巻き込まれて……皆、死んでしまったと?」
「――――――」
 こくん、と頷く屁舞留に、キョウジも小さなため息をついた。

「それは……ちゃんと、供養しないと、ですね……」

 そう言いながらキョウジは、再び屁舞留が咲かせた花を集めている。また、供養塔を綺麗に飾り付けてくれるつもりなのだろう。その心遣いは、屁舞留の瞳に、再度涙を呼びもどしてしまっていた。えぐえぐと泣き出す屁舞留。それを見たキョウジは思わず――――

 ポンポン、と、その頭を撫でてしまっていた。

「キョウジ――――」
 びっくりしたように屁舞留に見つめられて、キョウジもはっと我に帰った。
「ああ、えっと……! これは、ですね……!」
 慌てて言い訳しようとして、割と言い訳不能な状態である事に気づく。
(何て事だ……! 私の馬鹿……! つい、弟を慰めていた習慣が――――!)
 そう。キョウジは8歳年下の弟が泣くたびに、そうやって慰めて来た習慣があるのだ。だから目の前で年下に見える人物に涙を流されると、つい――――考えるより先に、手が勝手に動いてしまうのである。
「すみません!! 勝手に触ってしまって―――!」
 慌てて謝るキョウジに、しかし屁舞留も首を横に振った。
「構わぬ。吾も、少しびっくりしただけだ……」

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