農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 205 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/07 20:39   >>

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 屁舞留は無言で撫でられた跡を自分の手で触る。自分の身体を他人の手で触られるのは、随分久しぶりだと思った。
「キョウジ……。もう一回、撫でてくれ」
 乞われるままに、キョウジはもう一度、屁舞留の頭を撫でてやる。屁舞留はしばらくじっとキョウジの手の感触を、己が頭で味わっていたが、やがてポツリと呟いた。

「吾の村……キョウジにも、見せたかったのう……」

 その言葉に、キョウジも優しく微笑む。
「綺麗な村だったのでしょうね……」
「そうじゃ……。とても綺麗だった。ほら、丁度あの村みたいに、桃の花がたくさん咲いて――――」
 と、ここまで呟いた屁舞留が、怪訝な顔をして首を捻りだしている。
「どうしました?」
 それに気がついたキョウジが問いかけると、屁舞留が目にとめた村を食い入るように見つめながら茫然と呟いた。

「………吾の村がある」

「えっ?」

 瞬間、その言葉が理解できないキョウジに、屁舞留が更にたたみかけるように話しかけてきた。
「間違いない!! あの木、あの社――――どう見ても、あれは吾の村の物じゃ!!」
「え………? え………っ?」
 茫然とするキョウジの手を、屁舞留が強引に引っ張る。
「行くぞ! キョウジ!! 事の真相を確かめねばならん!! ついてくるのじゃ!!」
「えっ? あの……っ! あ、あ〜〜〜〜〜!?」
 キョウジの間抜けな叫び声を残して、二人はその空間から村へと飛び立っていったのだった。


 二人は村の中央の広場に、ふわり、と、風の様に降り立った。
 だが、二人の姿を感知する物は、村には皆無なのであろう。村の者たちは皆そこに何も無いかのように、普通どおりにふるまっているように見えた。
(まるで、昔話の本の世界の様だな……。いつぐらいの時代のものだろう?)
 そう思いながらキョウジが村の風景を眺めている横で、屁舞留が興奮を抑えきれないようにきょろきょろと周りを見回していた。
「何故じゃ!? 間違いない!! これは、滅んだ筈の吾の村じゃ!!」
「……それは、確かなのですか?」
 水を差すようで申しわけない、と、思いながらも、キョウジは確認するように屁舞留に問う。それに対して屁舞留は、噛みつかんばかりに答えを返してきた。
「そうじゃ!! 間違いない!! これは、吾の村じゃ!! あそこを通っているのは大作じゃ! 裏に一町ほどの桃畑を持っておる! あそこに居るのは繁造。今年生まれたばかりの赤子がいる! 吾は、ここに通る村人の名前と家族構成を、皆言う事が出来るぞ!!」
「そうですか………」
 屁舞留の言葉を聞きながら、キョウジはその原因を探ろうと考え込んでいた。何故――――滅んだ筈の村が、今またここに甦っているのだろう?

 その考え込んでいるキョウジの横を、1人の子どもが走り抜けていく。

「ケイタ……!」

 屁舞留に「ケイタ」と呼ばれたその少年は、広場をまっすぐ走り抜けると、大きな樹の元にある、屁舞留の社の傍で腰を下ろす。

「土地神様!! 見てよ!! 今日、俺算術で満点を取ったんだ!!」

 そう言って嬉しそうに、土地神の社に向かって紙をかざす。確かにその紙には、朱色の墨で花丸が彩られていた。

「……ケイタは子供たちの中でも、特に熱心にああして吾に話しかけてくれておった。吾もケイタが大好きじゃ……」
 そう言う屁舞留の眼差しが、本当に優しい色を帯びていたから、キョウジも思わずつられて微笑んでしまう。広場の反対側では、寺子屋が終わったのであろう、子供たちが元気な声を上げながら走り回っている。それを、周りの大人たちが声をかけたりしながら、優しい眼差しで見守っていた。その光景を見ながら、キョウジはこの村にうっかり郷愁(ノスタルジー)を感じて何故か涙が出そうになってしまう。皆が子供を大切にしているこの村を、キョウジはとても好きになっていた。
「ケイタ………」
 屁舞留はしばらく、ケイタの隣に座って、うんうん、と、頷きながら話を聞いていたが、何を思ったのか、いきなりその表情を硬くした。

「………帰るぞ」

 屁舞留は短くそう言うと、キョウジの手を取って、強引にそこから飛び去って行った。


「屁舞留? どうしたんだ? 一体――――」
 あれほど懐かしそうにいろんなものを見て、嬉しそうにはしゃいでいた屁舞留の表情が、何故いきなりそんなに硬く暗い物になってしまったのか、キョウジは皆目見当がつかない。だから、その原因を知りたいと思って、また、屁舞留にもう一度、あんな風に笑って欲しいと願って、キョウジは懸命に問うていた。そして、何か自分が力になれる事があるのなら、手を貸してあげたいと思っていた。
「あの村は、貴方の村で間違いないんだろう?」
「ああ……。確かに、滅びる前の、吾の村で間違いはない……」
 しかし、何故――――と、疑問を呈する屁舞留に、キョウジが苦笑しながら答える。

「……おそらく、『あれ』が原因なんじゃないかな」

 キョウジが指を指した方に、咆哮を上げながら光の間を縫うように飛びまわっている妖蛇の姿があった。
「あいつが今、いろんな世界の時間軸と磁場を、ひっちゃかめっちゃかに掻きまわしているんだ。だから、時間軸の前後がひっくり返ったり、世界と世界にあり得ない繋がりが出来ている。そのせいで、あそこに村が出て来たんじゃないのかな」
 あくまでも憶測だけど、と付け加えるキョウジに、屁舞留はちらりと視線を走らせると、やがてポツリと呟いた。
「……そうかもしれぬな。確かに、村は吾の村であったが、その周りの風景が――――吾の見知っていた物とは違うように感じた」
「せっかく、懐かしい人たちと再会したんだろう? なら何故――――そんなに暗い顔をしているんだ?」
「……………」
 キョウジのその言葉に、屁舞留はしばらく押し黙っていたが、やがて、頭を抱え込みだした。
「そうか……キョウジには、見えていないのだな……。いいだろう、見せてやろう。吾の懸念の原因を――――」
 そう言うと屁舞留は、睡蓮鉢に水をなみなみと注いでくる。
「この水を通して――――あの村を見てみるがよい。キョウジ」

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