農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 233 −−無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/11 14:06   >>

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「あの青年が、馬鹿がつくほどお人好しなのは、こちらも良く熟知している。それに、あの青年を救う事は、人の子たちの強い『望み』だ。それを違える訳にもいかんのでな」
「う………!」
 太公望は手の中で打神鞭をポンポン、と、弄びながら「まだまだだな……。もうひと押しと言ったところか……」と、独りごちていた。静かに佇んでいるように見える太公望だが、その頭の中は、目まぐるしく動いているのだろう。
「ところで、『土地神』」
「吾の名は、屁舞留じゃ!」
 ぶっきらぼうに太公望に呼びかけられて、屁舞留は思わず名乗ってしまう。太公望はそんな屁舞留をちらり、と見やると、少し唇の端を吊り上げた笑みを見せた。
「今回の戦――――お前たちも、何か動いてみないか?」
「えっ?」
 太公望の意図を咄嗟に理解できず、屁舞留はきょとん、としてしまう。
「『土地神』として、民たちに何か働きかけても、別に罰は当たらんと思うぞ? お前はあれだけ村の者たちの信仰を集めているのだ。それを、活かさない手はない」
「…………!」
 唖然、と、する屁舞留に向かって、太公望は少々傲岸、ともいえる笑みを向けて来た。
「何、お前たちが何かをやって、それが悪い方に転がりそうになっても――――私がそれを修正してやる。全知全能たる、この私がな」
「な…………!」
「――――さて、私は忙しい。これにて失礼させていただくぞ」
 パシン、と、手の中の打神鞭を一打ち鳴らすと、青年太公望は、あっさり結界の中から出て行った。後には、あんぐりと口を開ける、屁舞留とキョウジが残された。

「………そんな……何か、働きかけろと言われても――――」

 ポツリ、と、呟く屁舞留の手から、一輪の花が生まれて来ている。
「吾が出来る事と言えば、この『花を咲かす』ことだけじゃ……。他にどうしろと――――」
「屁舞留………」
 そう言ってじっと手を見つめている屁舞留を、キョウジはしばらく見つめていたが、やがてその肩をポン、と、叩いた。
「自分の出来る事を、そんな風に決めつける必要はないんじゃないかな。もしかしたら、私たちにも、もっとできる事があるかもしれないし」
「しかし………!」
 何事かを反論しようとする屁舞留に、キョウジはにこりと微笑みかけた。
「忘れたのか? 屁舞留」
「な、何を……?」
「前の戦いの時、私たちは声を届かす事が出来たじゃないか。彼女……甲斐姫に」
「――――!」
「だから、『何も出来ない』とか、『声も届かせられない』なんて、総てをあきらめてしまう事はないと思う。きっと何事も、『やってみなくちゃ分からない』なんだよ」
「キョウジ……」
「それに、私たちが何かをやって、それで状況がどう転がっても、あの人がフォローしてくれるらしいし、だから安心して――――」

「キョウジ……やはり、お主は『強い』な………」

「へっ?」
 キョウジの言葉が終わらぬうちに発せられた屁舞留のその言葉に、キョウジは思わずきょとん、としてしまっていた。
「お主は本当に、前向きな発言しかせぬな……。しかし、それで、大分勇気づけられたものだ」 
 屁舞留の言葉に、キョウジは慌てて、首を横に振った。
「『前向き』とか、そんなんじゃないです。たんに、私があきらめが悪いだけで……」
「そうか? 『あきらめる』方が、随分楽だと思うのだがな」
「そうですか? あきらめない方が、私には容易く感じますが……」
 キョウジのその言葉に、屁舞留は思わず彼の顔をまじまじと見つめてしまう。
 この青年は、やはりどこか変わっている。
 どうして――――そんな風に、強い意志を持ち続けていられるのだろう。
 しばらくそう思いながら沈黙していた屁舞留であったが、やがて、何かを思いついたかのように、ポツリと口を開いた。

「……そうじゃ、キョウジ。お主、『呪』を使えるようになってみるか?」

「えっ? 『呪』ですか?」
 驚いた様に鸚鵡返しに聞いてくるキョウジに、屁舞留は頷いた。
「そうじゃ。『呪』じゃ。ただし、吾もそんなに高位の呪術を持ち合わせておる訳ではないゆえ、簡単な物しか教えられぬがの……」
 そう言いながら屁舞留は、また掌から花を生み出す。それに向かって口の中で誦を詠唱しながら印を結ぶと、ポン、と、小気味いい音を立てて、花の周りを透明な球体が覆った。
「これは、『封』を施す『呪』じゃ。これで、この花に触れる事は出来ぬであろう?」
「本当だ……」
 屁舞留から渡された花が入った球体を、キョウジは興味深そうに触りながら見つめている。キョウジがそれをしている間に、屁舞留はもう一度口の中で誦を詠唱しながら、先程とは違う形の印を結んだ。すると、花を覆っていた球体がパチン、と、音を立てて消え――――キョウジの手の中に、花だけがふわりと舞い降りてきた。
「今のが、封印を解除する『呪』じゃ。『開く』『閉じる』この二つが、『呪』の中の基本中の基本となる。……どうじゃ? やってみるか?」
「ええ! ぜひ―――!」
 キョウジが嬉しそうに頷いたのを見て、屁舞留の面にも笑みが浮かぶ。
「よし、では詠唱する誦を覚えるところから始めるぞ。その誦を唱えながら『印』を結ぶ。それをする時に、『気』を伝えることが肝要じゃぞ?」
 そう言いながら屁舞留は、キョウジに誦を教え、印の結び方を伝授した。

「……よし、ではキョウジ。この花に向かって、先程教えた『封』を施す『呪』をやってみるんじゃ。心を静かに、物を『閉じる』イメージを印に乗せて――――」

 キョウジは言われたとおり忠実に、誦を唱えながら印を結んでいく。

 心静かに
 印に『気』を乗せて
 物を 『 閉 じ る 』

「覇ッ!」

 キョウジが花に向かって『印』を放つと、花の周りをものすごく大きな角ばった黒い箱の様な物が出て来て、それを覆った。その箱はドスン!! と、大きな音を立てて、地面に落ちてくる。
「あ、あれ……?」
「―――――!?」
 顔をひきつらせているキョウジの横で、その一部始終を見ていた屁舞留は、思わず息を飲んでしまっていた。
 キョウジは生まれて初めて『呪』を使った筈だ。たいていの場合、それは不発に終わる。形にすらならない筈だ。それなのに。
 この青年は、初めて発動させた『呪』で、もう形になっているだと―――!?
 何と言う事だろう。
 自分は、この『閉じる呪』を習得するまでに、少なくとも10年はかかった物だと言うのに――――
 

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