農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 234 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/12 12:50   >>

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 そんな屁舞留に気づかずに、キョウジは1人慌てふためいていた。
「あ、あれ〜〜〜? 難しいな……。何でこんなに大きくなっちゃったんだろう……?」
「キョウジ――――」
「あ、屁舞留……。ご、ごめん、何だか変な具合になっちゃって……!」
「いや………」
 屁舞留がキョウジに答えながら、キョウジが出現させた『箱』に触れる。箱はガチッと閉ざされていて――――中の花をしっかりと『封印』していた。
「ちゃんと封印されておる……。キョウジ、お主なかなか筋が良いな……」
「そんな事はないよ。屁舞留の教え方が良かったから――――」
「そうか? 吾はこの『呪』をここまでの形にするには、少なくとも10年はかかったがな……」
「あ………!」
 屁舞留のその言葉を聞いて、自分がまた『やらかして』しまった事にキョウジは気付く。
 キョウジ・カッシュと言う人間は、およそ『天才』と呼ばれるにふさわしい、類い稀なる才能の持ち主であった。彼の鋭い観察眼は、あっという間に物の本質を見抜き、彼の優れた身体能力は、その奥義をイメージ通りに再現する事を可能にする。
 それが為に彼は、人が10年かけて会得する技術を、あっという間に我が物にしてしまえた。その高い資質は、彼が精神を『シュバルツ』に移植した時に、元のシュバルツが持っていたゲルマン忍法を、『我が物』として飲みこんでしまう事を可能にする程だった。

 まさに『天才』
 まさに『鬼子』――――

 だが、そのような突出した能力は、時に、呪いでしか無くなる事がある。
 あっという間に高みへと飛んで行ってしまうキョウジは、必ずと言っていいほど妬まれ、時に疎外された。理不尽な暴力を受けた事もあった。
 この能力が余計なトラブルを巻き起こしている、と、気づいてからは、キョウジもできるだけ気をつけて、特に親しい人の前以外では、極力その能力を出さないようにしていたのだが。
 今――――屁舞留の前で、うっかりその能力を出してしまった事になるのだ。キョウジの背中から、嫌な汗が流れ落ちて来ていた。
(やっちゃった……! 絶対に、屁舞留に嫌な思いをさせてしまっただろうな……)
 このせいで、疎まれるのは仕方が無い。
 だけど、ここまで仲良くしていた屁舞留に、嫌われてしまうのは淋しいと思った。

「キョウジ―――――」

「…………!」
 屁舞留に呼びかけられて、キョウジの身体がビクッと、跳ねる。
 ごめん、屁舞留。
 キョウジが屁舞留にそう謝るよりも先に、屁舞留がキョウジの手を取った。
「何をそんなに怯えたような眼をしておる? 『呪』がうまくいったのだ! もっと、誇らしそうな顔をして良い所じゃぞ!?」
「え………っ?」
 瞬間屁舞留に何を言われたのかが分からず、きょとん、としているキョウジに、屁舞留は更に微笑みかけて来た。
「もっと『気』の込め方に工夫を凝らせば、結界の大きさも強度も思いのままになるぞ? いやあ、キョウジは優秀じゃな! 教えがいがあると言う物じゃ!」
「い、いや……でも……!」
 キョウジはかなり戸惑ってしまう。屁舞留が10年の年月をかけて、苦労して体得した物を、自分があっさりとやり遂げてしまったのだ。これはかなり、屁舞留に失礼な事をしてしまったのではないかと思う。
「何を言っておるのじゃ? キョウジ。人には皆、得意不得意、向き不向きがある。物事を体得する速さも、その容量の大きさも――――人によってまちまちじゃ。吾は別に、キョウジが吾よりも高位の術者になろうとも、それはそれで良いと思っておるぞ?」
「屁舞留………」
「ただ残念なのは……お主の能力に見合った『呪』を、吾が持ち合わせていない事だな……。それを学びたければ――――吾よりももっと高位の神気を持つ者を『師』とせねばならぬが……」
 そう言ってう〜ん、と、考え込む屁舞留に、しかしキョウジは首を振った。

「ううん……充分だ……。屁舞留……ありがとう………!」

 それだけを言うと、キョウジは思わず屁舞留の身体を抱きしめていた。
 嬉しかった。
 自分のこの変な『能力』を、こんな風に笑って受け止めてくれた人は、両親以外では初めてかもしれなかった。
(キョウジ……)
 キョウジに抱きしめられながら、屁舞留は思った。
 この青年は、一体何者なのだろう、と。
 元は、人の子だと言っていた。
 しかし、死後霊体になってからも、こんなに明確に『人間』の形を保っている事など稀な例だ。しかも、キョウジは当たり前のように、神仙の類である筈の自分の身体に触れる事が出来ている。よくよく考えれば、普通の人間の魂を持つ者が、自分の身体に触れる事はおろか、結界をすり抜けてくる事など、出来る筈もないと言うのに。
 本当に――――考えれば考える程、不思議な存在であった。
(だからと言って……『お主は何者だ?』と、キョウジに聞いた所で、『人間です』と言う答えしか返っては来ぬだろうな……。当たり前な話だろうが……)
 本人さえ分からないその魂の正体。今は突き詰めても仕方が無い。
 それをするのは、自分よりももっと上位の神気を持つ者の仕事だろう、と、屁舞留は思った。
 それよりも、今は自分達が出来る事をするべきだ。
「さあ、キョウジ! あの太公望とやらの策に、吾らも乗る事にしようぞ! 吾らも出来る事をしよう! キョウジは『呪』の練習じゃな。もっと磨けば、必ず何かの役に立つじゃろう」
「屁舞留……」
 そう言って明るく顔を上げる屁舞留を、キョウジはじっと見つめていたが、やがてその面に笑みを浮かべた。
「うん……そうだね。ありがとう……」
「さあ! 村の見回りに行くぞ! ぐずぐずするな!」
 屁舞留は元気良く歩きだした。キョウジは苦笑しながら、その後をついて行った。


 太公望の歴史への介入のおかげで、村の上空に鎮座していた『死の闇』が、どんどん小さくなっていく。だが――――それに比例するかのように、村を取り巻く状況は、どんどん悪化の一途を辿っていた。妖魔と村人たちの交流は、周りの理解を一向に得られず、他部族の妖魔たちからの嫌がらせは、日毎に増える一方だ。
 それでもシュバルツは、この妖魔たちと村人たちを何とかして守ろうと、独り、走りまわっていた。農作業の手伝い、子供たちのケア、襲撃される妖魔の村への手助け、戦い慣れていない妖魔たちへの戦い方の指導、そして、連日行われている長達の話し合いへの参加等、本当に、腰を落ち着けて休む暇もない程になっていた。
「……………」
 夜が深く更けても、シュバルツは1人、夜風に当たることが増えて来た。
 おそらく村を取り巻く状況が厳しすぎて、眠ることもできなくなってしまっているのだろう。

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