農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 235 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/13 21:10   >>

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(シュバルツ……)
 キョウジはシュバルツの傍に行き、その姿を見守ることにした。
 暫く夜空を見上げていたシュバルツは、やがて、一つ大きなため息を吐いた。

 ――――今日の話し合いも、結局何の進展も得られなかったな……。他部族の妖魔たちの主張は、『人間と狎れ合うなどもってのほか』の一点張りだし……。

「…………!」
 黙っているはずのシュバルツから、声が聞こえてくる。それは、シュバルツの心の中で吐き出されている『声』なのだと、キョウジは悟った。

 ――――どんな事があっても村に留まりたい、と、願う皆の気持ちも分かる……。この土地も桃の木たちも、村人たちにとっては何物にも代えがたい物だ。一朝一夕で手に入る物ではないんだ……。
 でも、万が一この村が襲撃された場合、迎え撃てる場所も、皆の安全を確保できる場所もない。ここから逃げろと、心を鬼にしてでも言わなければならないと、分かっている。
 しかし――――
 自分の願いとは裏腹に、周囲の状況は悪くなっていく一方だ。

 やはり、私には大それたことだったのだろうか。

 妖魔と人間――――この、異種間の交流を支える、と言う事は……。

 もう少し、私に力があれば………!

(シュバルツ………!)
 ひたすら己を責めているシュバルツの声に、キョウジは胸が締め付けられる。
 こうして傍に居るのに、結局彼の何の役にも立てない自分が、キョウジは苦しかった。
 ふと見ると、シュバルツの手の中で、何かが光を放っている。
(…………?)
 キョウジが近づいて行ってみると、それは、キョウジの壊れた腕時計であった。

 ――――キョウジ……。

 シュバルツがその腕時計を見つめながら、シュバルツの心の声は続いていた。

 ――――キョウジ……。ハヤブサ……。
 こんな時、彼らが居てくれたら………!

(……………!)
 シュバルツ、私はここに居る! ここに居るのに――――!
 キョウジは懸命にシュバルツに向かって叫ぶが、当然その声は、シュバルツに届く筈もなく。

「………………」
 暫く無言で腕時計を眺めていたシュバルツの面に、フッと、自嘲的な笑みが浮かんだ。
「馬鹿だな……。いくら求めても、この二人に会える筈はないのに……」
 そう言って振り返ったシュバルツと、キョウジはばったりと視線が合った。
「シュバルツ……!」
 思わずキョウジは、シュバルツに呼びかける。
「……………」
 暫くこちらをじっと見つめていたシュバルツであったが、やがてその面に、優しい笑みが浮かんだ。
「シュバルツ!」
 自分の姿が見えたのだろうかとキョウジは嬉しくなって、シュバルツに駆け寄ろうとする。だがシュバルツは、キョウジの身体をすり抜けて、後ろから歩いてきた村人に声をかけていた。
「何だ、まだ、起きていたのか」

「…………!」

「シュバルツさんこそ……寝なくて大丈夫なんですか?」
 その村人は、今日1日シュバルツの傍に『神の付き人』として付いていた村人であった。
「私は大丈夫だ。それよりも、貴方こそ早く寝た方がいい。明日も忙しいだろうから」
「わしは大丈夫です。明日の朝で『お役目』は終わりですから」
「そうか」
 その村人とシュバルツの談笑は、しばらく続きそうだった。キョウジはそっと、その場から離れた。

「キョウジ……。大丈夫か?」

 その一部始終を見ていたらしい屁舞留から、そう声をかけられる。キョウジは多少苦笑気味になりながらも「大丈夫だよ」と、返事を返した。
「それにしてもお主の影……何か、不可思議な感じがするのう」
「不可思議って……何が?」
 屁舞留の言葉に、キョウジは少し小首をかしげる。
「あ奴は、あれだけお主に向かって呼びかけていると言うのに、お主に対して肝心な所で心を閉ざしているように見える……」
「…………!」
「あれでは、お主がいくら呼びかけた所で、万に一つも気づく可能性など無いであろうな。いったいどうして――――」

「………仕方が無いよ」

 屁舞留の言葉に対して、キョウジがポツリと答えた。
「きっと、辛すぎるんだ……。いろいろと……」
 自分が死んだ時に、シュバルツは自傷行為に走ってしまう程、自分を責めていた。深く傷ついていた。
 ハヤブサの支えもあって、今は普通どおり立ち直っているように見えるシュバルツ。
 だけど、心の奥底ではそうではないと言う事を、キョウジは知っていた。
 きっと、立ち直っている、と言うよりは、哀しむ心を無理やり『封じ込めている』と、言った方が正しい。そうしなければ前に進めない――――彼はそう思ったのだろう。
 自分の『死』を、そんな風にいつまでも引きずって欲しくはない、と、キョウジは願っている。だけど、この喪失感ばかりは、本当にどうしようもないから厄介だ。やはり、『時間』に頼るしかないのだろうか。
「そうか………」
 キョウジの話を聞いていた屁舞留が、一言、落とすように返した。
 沢山の『死』を見て来た屁舞留には、キョウジの気持ちもシュバルツの哀しみも『理解』出来た。確かに、どうしようもない。どうしようもないものだが――――
 それでも、願わずにはいられない。

「何時か……『影』の中の哀しみも溶けて、お主の呼び掛けに気づく事が出来るようになると、良いな……」

 屁舞留の言葉に、キョウジは微笑みながら頷いた。

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