農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 236 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/15 00:25   >>

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 太公望の歴史への介入は続く。
 日が経つにつれて、屁舞留の表情は明るくなっていった。何故なら、村の上空を覆っていた『死の闇』が、ほとんど見えなくなっていたからだ。ただ1つ――――シュバルツの背に張り付いている物を除けば。
「済まぬキョウジ……。何故なのじゃろうな……。お主の『影』にだけ……」
 この話をする時、屁舞留は本当に、申し訳なさそうな顔をする。それに対してキョウジは、苦笑しながら首を振った。
「大丈夫だよ、屁舞留。そんなに気にしないで―――」
「しかし……!」
「いいから」
 キョウジは優しく笑って、それから話題を変えた。
「それよりも見てくれ、屁舞留。私も大分、『呪』がうまくなったと思わないか?」
 そう言いながらキョウジは、屁舞留の咲かせた花に向かって『呪』を放つ。その結界は、花の周りだけを小さく丸く、綺麗に覆っていた。
「確かに……。キョウジ、お主もうその『呪』は完璧じゃな!」
「ありがとう」
 キョウジが指をパチン、と鳴らすと、花の周りを覆っていた結界は消え、花はふわりと地面に落ちた。
「それにしても屁舞留……。どうして、こんなに花を大量に咲かせて置いてあるんだ? 今は花を咲かせる時期でもないだろう?」
 キョウジのその質問に、屁舞留はえへへ、と笑顔を見せた。
「ちょっと………内緒じゃ」
「え〜〜〜〜? 気になるなぁ。いい加減教えてくれても……」
「ど、どうでもいいじゃろう!? それよりもほら、今から昼の見回りに――――!」
 キョウジと屁舞留がそうやってじゃれ合っている時に、村の中央にハヤブサたちの姿が唐突に現れた。
「あ…………!」
 その姿を見た屁舞留の表情が、少し硬いものになる。
「そう言えば、明日が『感謝の祭りの日』だから……ハヤブサたちが来るのは、やはり、このタイミングになるんだね。と、言う事は、襲撃されるのも、『今夜』と言う事になるのかな?」
「分からん……」
 キョウジの問いかけに、屁舞留は表情を硬くしたまま答えた。
 キョウジ達の目の前では、ハヤブサたちが懸命に、村人たちに避難を呼び掛けてくれとシュバルツを説得している。だが屁舞留は、それを見届ける事はせず、踵を返して社の方に歩き出していた。
(屁舞留?)
 屁舞留のそんな様子が気になって、キョウジはその後を追った。


「…………」
 社の結界の中に入り込んだ屁舞留は、自分がたくさん咲かせてきた花たちの前に、無言で座り込んでいた。
「どうした? 屁舞留」
 キョウジが呼びかけると、屁舞留はゆっくりと振り向いた。
「おう、キョウジか……」
 顔に笑みは浮かんでいるが、その表情が何処となく淋しげな屁舞留。キョウジは少し気になったから、更に問いかける事にした。
「どうしたんだ? 屁舞留。さっきまであんなに楽しそうに話していたのに―――」
 キョウジの問いかけに、屁舞留は苦笑する。
「いや、別に大した事ではない。ただ………」
「ただ?」
 屁舞留は少し黙って、ポリポリ、と、頭をかいてから、また話し始めた。

「ただ……もしも今年『感謝の祭り』があるのなら――――この花を、村の皆にプレゼントしようかと思っていたのだが……」

「…………!」
「……無理みたいだな……。『感謝の祭り』など、開いている余地もない。襲撃されるのであるならば、あの龍の忍者が呼びかけた時点で、皆はこの村を放棄して、逃げねばならぬ」
「屁舞留……!」
 何とも言えない表情を浮かべて、屁舞留を見つめるキョウジ。そんな彼に、屁舞留はフッと優しい笑みを向けた。
「そんな心配そうな表情をするでない! キョウジ……。吾はな、これでも嬉しかったのだぞ?」
「嬉しい?」
 きょとん、とするキョウジに、屁舞留は微笑みながら頷く。
「考えてもみよ! 最初にお主と会った時に吾が咲かせていた花は、『供養』のための花であった。だがこの花たちは違う! 皆を『祝福』する事を考えて、咲かす事が出来たのじゃぞ?」
「あ………!」
「一人結界の中で石を積んでいた時とは、本当に、まるで状況が違う! 吾は、それが嬉しいのだ!」
 だからこの花の事はいいのだ、気にするな。そう言って、屁舞留は笑う。
 だけど、キョウジは複雑な気持ちになった。

 本当に――――それで、良いのだろうかと。

「少し、シュバルツの様子を見てくるよ」
 キョウジはそう言い置くと、屁舞留の社から出て行った。


 以前の時間軸とは違い、村人たちはシュバルツの呼び掛けに素早く応じて、すぐに集会所に集まって来ていた。共に農作業をしていた妖魔たちもだ。皆表情は硬い。今日寝て、明日目が覚めても、今日と同じ1日が保証されている訳ではない、と言う事を、誰もが悟っているふうであった。
 とても危機意識が高い村人たち。そんな村人たちに向かって、シュバルツが、ハヤブサが、そして甲斐姫たちが――――それぞれに避難を呼びかける。そしてついに、村人たちは村を離れ、避難する決心を固めてくれた。
(良かった……。このタイミングで避難してくれたら……)
 それを見て、キョウジはホッと胸を撫で下ろす。
 避難の準備をするために、村人たちも妖魔たちも、皆集会所から出て行った。後にはハヤブサとシュバルツ、二人だけが残された。

「シュバルツ」

「ハヤブサ……」

「大丈夫か?」

「――――!」
 ハヤブサの言葉に、一瞬はっと、息を飲むシュバルツ。
「ああ。大丈――――」
 その言葉と共に、シュバルツはその面に笑みを浮かべようとして、失敗していた。それどころか、彼の瞳からは堪え切れぬように涙まで零れ始めていた。
 それまで、たった独りで、この日増しに厳しくなってくる周りの情勢から、村人たちを守っていたシュバルツ。いろいろと堪えていた物が、溢れて来てしまったのだろう。

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