農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 237 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/16 00:16   >>

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「…………」
 ハヤブサはそっとシュバルツの頬に手を伸ばす。
「ハヤブサ……ッ!」
 ハヤブサの手が触れると同時に、シュバルツが彼の胸に飛び込んでいった。
 何故、何故、と、シュバルツはハヤブサの腕の中で泣き続ける。

 妖魔たちも人間たちも、ただお互いに、穏やかに交流をしていただけだ。
 ただ、周りにはそれがまるで『理解』されなかった。
 自分達に向けられるのは、曲解と誤解、偏見、差別――――
 彼らの声は罵声にかき消されたまま、結局、村を捨てざるを得ない事態にまで至ってしまった。

 何がいけなかったのか。
 何を間違えてしまったのか。
 自分が、非力すぎたのだろうか――――

 次から次へと、シュバルツは抱え込んでいた心を、ハヤブサに落として行く。
 ハヤブサは、そんなシュバルツを「大丈夫だ。大丈夫――――」そう言いながら、優しく抱きしめていた。その表情が、本当に、酷く幸せそうだったから、キョウジは少し驚いてしまう。

(ハヤブサは、本当にシュバルツの事が好きなんだな……)

 腕の中で泣いてくれているのが嬉しい。
 心を落としてくれているのが嬉しい――――
 本気で、そう思ってくれているのだろう。

 きっと、シュバルツは大丈夫だ。
 ハヤブサが側に居てくれる限り、彼は決して孤独ではない。
 どんな苦しみも悲しみも――――癒して行く事が出来るだろう。

 そう感じられた事が、キョウジには嬉しかった。

 だが、そうのんきに構えてばかりもいられない。
「シュバルツさんは居るだが?」
 暫くすると、村人の1人がシュバルツの姿を求めて集会所に戻ってくる。
「ちょ、ちょっと待って! 居るには居るんだけど……その……!」
 キョウジと同じように二人の様子を集会所の外から眺めていた女性二人が、慌てふためいた。
「立て込んでいると言うか……出なおした方が良い様な気が――――」
 もう少しゆっくり泣かせてあげたい、と、思ってくれているのだろう。甲斐姫と孫尚香は、二人の姿を村人から必死に隠そうとしてくれている。だが、とても隠しきれるものでもなく。
 結局村人は、ハヤブサに凭れかかって泣きじゃくるシュバルツの姿を見てしまう。

「……………!」

 村人はしばし息を飲んでそのまま固まってしまう。
「あ、あの〜……大丈……夫、ですか?」
「こ、これは、その……つまり………」
 孫尚香と甲斐姫は、固まった村人の様子に心配して声をかけた。だが村人はそれには答えず、茫然と踵を返した。

「シュバルツさん……!」

 そう言いながらとぼとぼと歩いて行く足取りが、とても重く、暗い。まるで今から、通夜か葬式にでも行くような雰囲気だ。それを見送った女性二人は、おろおろするより道が無く。
「尚香……どうしよう……!」
「ど、どうしようと、言われても――――!」
 そうやってうろたえている所に、また別の村人がやってくる。

「あの……シュバルツさんは……」

「あ……! ちょっと待って……!」
「今は……その……!」
 女性陣二人は必死に中の忍者二人を村人から隠そうとするのだが、やはりその努力は徒労に終わり、中の様子を見た村人が衝撃を受けて、やはり足取り重くそこから立ち去って行く。そう言う事が、何回か繰り返された。孫尚香も甲斐姫も、最初は必死に村人たちに対処しようとしていたが、しまいの方は二人の間にもあきらめムードすら漂っていた。村人たちは皆一様に――――とぼとぼと足取り重く、そこから去っていく。
「尚香……ど、どうすればいいのかな……」
「さ、さあ……も、もう、なるようにしか……ナラナインジャナイカナ……」
 そう言って顔をひきつらせる女性たちに、キョウジも同意するしかなかった。
(仕方が無いな……。シュバルツはやっと心を吐き出す事が出来たんだ……)
 だから、もう少しゆっくり泣かせてやりたい、と、キョウジも思う。この姿を見られたからと言って、シュバルツはともかく、ハヤブサは動じることもないだろう。この後どう状況が転がろうとも、ハヤブサならば切り抜けてしまえそうな気がする。
(それにしても、村の人たちは、どうするつもりなんだろう……)
 泣いた姿を見せたからと言って、シュバルツと村人たちの間に築き上げられてきた信頼関係が、急にどうこうなる、と言う事はない、と、キョウジは分かっているから、特段心配している訳でもない。ただ、まるで葬式にでも行くような足取りで、皆落ち込んだように去って行ったのが少し気がかりだった。
(このまま家に引きこもってシュバルツと同じように泣きだしてしまって――――避難するのが遅れてしまったら厄介だな……。そんな事にならなければいいが……)
 そんな事を思いながらキョウジが広場に佇んでいると、やがて、村人たちがポツリポツリと広場に戻って来だした。戻ってきた皆が皆――――手に各々『ある物』を持って来ている。
「……………」
 キョウジはしばらく、それらを黙って眺めていたが、やがて目の前で起こっている事に居ても立ってもいられなくなって、あわてて屁舞留が居る社まで走って行った。

「――――屁舞留!!」

「わっ! キョウジか!? どうした!? そんな大声を出して――――!」
 びっくりして振り向いた屁舞留の手を、キョウジは半ば強引に取る。
「屁舞留! 来てくれ! 見せたい物があるんだ!!」
「み、見せたい物!? な、何じゃ!?」
 いつもよりもかなり強引なキョウジの姿に屁舞留は戸惑うが、キョウジはそれには構わず、屁舞留の手をぐいぐいと引っ張った。
「いいから早く!! とにかく見てくれ!!」

 キョウジが屁舞留を広場まで連れてきた時には、『それ』はもうかなりちゃんとした形を為していた。
「こ、これは……!」
 目の前に綺麗に設えられた祭壇。そこに並ぶ野菜や果物。川の物、山の物。綺麗に飾られた花々――――
 それはまさしく、村人たちが土地神のために、毎年催してくれていた『感謝の祭り』その物の飾り付けであったから、屁舞留は目を丸くしてしまっていた。

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