農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 239 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/18 00:52   >>

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「何を言っているんだ? 屁舞留! そんな事ある訳無いだろう!?」
 半ばあきれるようにキョウジは言うが、屁舞留は尚も戸惑っている。
「い、いや………しかし………」
 そう言って、すっかり尻ごんでしまっている屁舞留。
「ああもう――――!」
 そんな屁舞留を見て、キョウジはじれったくなってしまった。

 屁舞留と、屁舞留の愛したこの土地から、とても離れがたく思っている村人たち。
 そんな人たちの前で、『奇跡』と呼ばれるような現象を見せた所で、村人たちがそれを気味悪がるなんて、ある筈ないのに。

(お前たちが何かをやって、それが悪い方に転がりそうになっても――――私がそれを修正してやる。全知全能たる、この私がな)

 あの傲岸な青年太公望のこの言葉も、キョウジの背中の後押しをした。
 何事も、やってみればいいのだ。
 もしそれが駄目な事であったとしても、修正してくれると言っているし、屁舞留の『存在』を匂わせる事が、そんなに悪い事であるとは、キョウジにはどうしても思えない。

「いろいろごちゃごちゃ考えるより――――とにかく、やってみれば良いんだよ。ほら――――」

 キョウジは『呪』を発動して、屁舞留の社の中から花を取り出してくる。

「キ、キョウジ!? 待――――!!」

 屁舞留が止める間もあればこそ、キョウジは取り出してきた花々を村の上空まで運んで行くと、そこで結界を解いて、花々を村人たちの上に降り注がせ始める。
「こ、これは一体……?」
「どう言うことだべか……」
 突如として現れた桃の花の舞に、村人たちはただ茫然とするしかない。「うわ〜! すご〜い!」と、子供たちは無邪気に喜び、女衆たちの中には「綺麗……」と、見とれる者もいた。

「キ、キョウジ……!」
「屁舞留。見てごらん? 誰かこの花々を、気味悪がっているか?」
「―――――!」
 キョウジに言われて、屁舞留は村人たちの方に振り返る。
 すると、村人たちは皆あんぐりと口を開けて、舞い落ちる花の乱舞を見ているが、誰もその花を『不吉な物』として捉えてはいないようだ。あの龍の忍者――――ハヤブサでさえ、そうであった。手の中に一輪の花をふわりと捉え、それをじっと眺めている。警戒している――――と言うよりは、この花をどう判断していいのかが分からず、『戸惑っている』と、表現した方が正しい様な感じであった。

「この花々が舞う空に、『死の闇』は広がっているか?」

 キョウジのこの問いかけに、屁舞留は黙って首を振る。
 空は何処までも青く澄み渡り――――穏やかな光を湛えていた。

「なら、もう迷う事はないじゃないか。屁舞留も手伝ってくれ。残りの花々も、皆に届けてしまおう」

 そう言いながらキョウジは、もう次の花々を上空まで運んで行っている。屁舞留も慌てて、その後に続いた。
「それにしてもキョウジ……。何時の間に『物を運ぶ呪』を会得したのじゃ? 吾はまだそこまで教えておらぬと言うのに―――」
「ああ、これは『開く呪』と『閉じる呪』を、応用したものなんだよ」
 屁舞留の問いかけに、キョウジは事もなげに答える。
「まず、あの社の中の花のある空間の一角を『閉じて』――――」
 そう言いながらキョウジの放った『呪』が、いくばくかの花々を、その球体の中に閉じ込めた。
「それから、社の中から上空へと通じる道を『開いて』――――」
 開かれた『道』にしたがって、花々を乗せた球体は、上空へと舞い上がって行く。
「適度な高さまで持って行った所で、花を閉じ込めていた結界を『開く』」
 パチン、と、キョウジの指が鳴ると同時に、結界から零れ落ちた花々は、人々の村に降り注いで行った。
「こうすれば、二つの『呪』しか知らない私でも、物を運べるんじゃないかと思って……。試してみたら、うまくいって良かった」
「……………!」
(見事――――!)
 キョウジの、『呪』の本質を見抜く目の鋭さに、屁舞留はただただ驚嘆するしかない。
 確かにそうだ。
 この『開く呪』と『閉じる呪』と言うのは、『呪』の中でも基本中の基本。後の『呪』は、これをすべて応用しただけの物と言っていい。
 それを、『呪』を習いたてのこの青年が、あっという間に看破してしまうとは――――!

 キョウジならば、わざわざ高位の術師に師事せずとも、数年のうちに下手をしたら独学で、『呪』を極めつくしてしまうかもしれない。そう感じると、屁舞留は空恐ろしくさえあった。
 この青年は本当に、一体『何者』だと言うのだろう。
 何処まで上りつくして行ってしまうのか――――

 そう感じている屁舞留に気づいているのかいないのか――――キョウジは花を降らせながら、しきりに村人たちに向かって「大丈夫だよ〜!」と、叫んでいた。
「な、何故そんな風に叫んでおるのじゃ? キョウジ……」
 少し戸惑いながらキョウジに問いかける屁舞留に、彼はにこりと微笑みかけた。
「だって……教えてあげたいじゃないか。この道行きは、『大丈夫』なのだと」
「――――!」
 キョウジの言葉に屁舞留は一瞬目を見張るが、やがて小さなため息をついた。
「それはそうかもしれぬが……無駄じゃ。吾らの声など、皆に聞こえる筈が――――」

「ううん……多分、今なら聞こえるよ。私たちの声が――――」

「えっ?」
 頭をふってそう答えるキョウジに、屁舞留はきょとん、としてしまう。それに対して、キョウジは苦笑した。
「屁舞留が教えてくれたんだよ? 『声』を届かすには、向こうの『心』を『開く』必要があると――――」
「えっ?」
「屁舞留が『シュバルツが私に対して心を閉ざしているから、私の声が聞こえない』って、教えてくれたから………思ったんだ。私たちが相手に声を届かせようと思うのなら、その心を開かせる『媒介』みたいな物があればいいんじゃないかって…………」
「あ…………!」
 その言葉に、思わず息を飲む屁舞留。キョウジはにっこりとほほ笑んだ。
「今なら屁舞留の咲かせた花たちが、村人たちの心を開く『媒介』になっている。貴方に皆の意識が向いているから――――こちらの声も、届かすことができるんじゃないかって、思うんだ」

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