農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 240 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/19 00:29   >>

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(キョウジ………!)
 ただもうひたすら茫然とするしかない屁舞留に、キョウジは再び声をかけて来た。
「ほら、屁舞留も一緒に叫ぼう。花に『想い』を込めて――――」
「そ、そうじゃな」
 キョウジの呼び掛けに、屁舞留もはっと我に返る。ここは素直に、それに応じる事にした。

 優しい風に乗った花々の乱舞に、二人は想いを込めて叫ぶ。

 大丈夫だよ

 大丈夫――――

「……………!」
 花をじっと見つめていたハヤブサが、はっと顔を上げた。
「シュバルツ。お前、何か言ったか?」
 シュバルツにそう問いかけている。
(あ、聞こえたんだ)
 キョウジはそう感じた。しかしハヤブサはシュバルツの方に振り向いた。どうやら今の声が、ハヤブサには『シュバルツの物』として感じられたらしい。
(まあ……『似た様な声』って言われるからなぁ。元が同じだから、無理はないけど……)
 そう思って苦笑するキョウジの目の前でシュバルツが、「いや、私は何も……」と、頭を振っている。
「じゃあ、今の声を、お前は聞いたか?」
「声? 何か声がしたのか?」
「!?」
 怪訝な顔をしながらハヤブサを見つめるシュバルツ。どうやら彼は、今の声を聞いてはいないようだ。
 その周りでも、村人たちの間からざわめきが上がっている。
「今、誰かが何か言ったべ?」
「いや、俺は何も聞いてねぇ」
「私も何も――――」
「おらには聞こえた。何か言っていたな」
「えっ? そんな声しただか?」
 どうやら村人たちの間でも、聞こえている者と聞こえなかった者が居るようだ。

 だが、一番如実にその声を捉えていたのは、どうやら子供たちの様だった。
「声が聞こえたよね!」
「うん! 聞こえた!」
「とっても優しい声だったよ!」
「僕にも聞こえた!」

「その声は、何て言っていたの?」

 騒いでいる子供たちの近くに居た甲斐姫が問いかけると、子供たちは嬉しそうな笑顔を見せて答えた。

「『大丈夫だよ』って、言ってた!」

「――――!」
 その言葉に、周りに居た大人たちは皆、一様にはっと息を飲む。
「うん! 言ってたね! 『大丈夫だよ』って!」
「うん! そう聞こえた!」
「『大丈夫』なんだって!」
「『大丈夫だ』って!」

「こ、これは……! 長老様……!」
 子供たちの声を受けて長老に問いかける村長に、長老も頷き返した。
「うむ……。間違いない。これこそ、『土地神様』のお声なのじゃろう……。信じられぬ事じゃが――――」
 そう言いながら長老は、茫然と桃の花が舞う空を見上げる。いろいろと説明が出来ない事象。この小さな村には今――――確かに『奇跡』が舞い降りていた。

(そうか、こうすれば良かったのか)

『声が聞こえた』と、嬉しそうにはしゃぐ子供たちを見つめながら、屁舞留は何とも言えな気持ちになっていた。

 そうか。
 こうやって呼びかけてあげれば――――
 村人たちに自分の声を、届かせる事が出来たのか。

 どうして
「どうせ届かないから」と、早々にあきらめてしまったのだろう。
 どうして自分は『呪』を使っていながら、この方法に気づかなかったのだろう。

 もっといろいろ試してみれば良かった。
 あきらめてしまわなければ良かった。
 そうすれば――――

 自分に毎日語りかけ続けてくれていた村人たちに、
 もっとちゃんと、
 何かを返す事が出来ただろうに。
 自分の気持ちを伝える事が出来ただろうに―――――

 過ぎ去った日々が、
 今となってはただ、悔やまれた。

「屁舞留? どうした?」

 自分を覗き込んでくるキョウジの顔が見えて、屁舞留ははっと、我に帰った。
「いや、すまぬ……。少し、考え事をしておった」
「考え事?」
 小首を傾げるキョウジに、屁舞留は苦笑する。
「ただ少し……自分の不明を悔いておったのよ」
「屁舞留………」
 そう言って柔らかく笑う屁舞留に、しかしキョウジの瞳は曇った。
 キョウジは屁舞留の正面に座って、屁舞留と同じ高さの目線になると、その手を取って語りかけた。
「屁舞留……。もしも、私に対して何か言いたい事、吐き出したい事があるのなら………溜め込まずに、ちゃんと私にぶつけてくれ」
「キョウジ?」
「それをされたからと言って……私が貴方を恨んだり、嫌いになったりする事はない。黙って耐えられる方が、私には辛い」
 自分の、この呪われたような変な能力を見せても、あっけらかんと笑って、受け入れてくれた屁舞留。
 優しい屁舞留。
 得難い『友』だと思った。

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