農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 241 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/20 01:55   >>

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『人間』である自分が『神』である存在の屁舞留にそんな事を感じてしまうのは不謹慎なのかもしれないが――――
 本当に、心の底からそう思った。
 知らず、昔、同じように自分の能力を父と同じように優しく受け入れてくれた人の姿が、屁舞留の上に重なる。
 その人は、父の親友で科学者だった。
 その人の前でなら、キョウジは自分の考えを遠慮なく言えたし、能力を発揮できた。その人も――――優しく受け入れてくれていた………かのように見えた。
 だが、同じ科学の分野を志し、その人の前で度重なってしまったキョウジの能力の披露は、その人を深く傷つけてしまっていた。優しかったその人が、自分や、自分の父と母に牙を剥かせるに十分な程の『殺意』を、その人の中に育てさせてしまった。
 屁舞留は違う。そんな事にはならない。
 そう信じたい。

 だけど――――『心』ほど、不確かな物はないのだ。
 傷つきやすく、脆いものはないのだ。
 だからこそ美しく、愛すべきものなのだとも思うけれども。

『心』は、決して綺麗事だけではすませてはいけない物だと言う事を、キョウジはもう、知ってしまっていた。

「キョウジ………」

 しばらくそんなキョウジを黙って見つめていた屁舞留であったが、やがてその面に、フッと柔らかな笑みを浮かべた。
 伸びて来た屁舞留の手が、キョウジの頭をわしわし、と、多少乱暴に撫でる。
「な、何?」
 驚いたキョウジが多少戸惑い気味になっているから、屁舞留は吹き出しそうになってしまった。
「……全く、お主は心配性なうえに苦労性じゃな! 吾にそんな無用の気遣いをするでない!」
「え……え……? でも――――」
「お主のその慧眼の鋭さも頭脳も――――もっと誇っても良い物じゃぞ? 確かに慎み深さも必要かもしれぬが、時には、胸を張ることも必要じゃ。なんなら、あの太公望殿の如くに、『自分は全知全能だ――――』と、言い張っても構わぬ」
「む……! 無理です!! 無理無理!! そんな、『全知全能』だなんて――――!!」
 出来ることも少ないのに、と、キョウジは全力で首を振る。屁舞留は声を立てて笑った。
 2人がそうしている間にも、村人たちと妖魔たちは劉備の統治する城に向かって、避難を開始しようとしている。屁舞留の本体である『石』は、長老が持って行ってくれる事になったようだ。
「吾は別に、お主の『影』に持ってもらっても何も問題があるとは思っていないがのう……?」
 そうブツブツ言っている屁舞留の横で、シュバルツの気持ちも理解できるキョウジは、苦笑するしか無かった。
「そう言えば、屁舞留」
「ん? どうした? キョウジ」

「シュバルツの背中には――――まだ、『闇』が張り付いている?」

 キョウジのこの質問を受けた屁舞留は、少し哀しげに瞳を曇らせた。
「そうじゃな……。残念ながら……」
「そうか……」
「他の者たちには、もうほとんど『死の闇』など張り付いていない……。なのに、何故なのじゃろうな……。お主の『影』にだけ――――」
 そう申し訳なさそうに言う屁舞留に向かって、キョウジは軽く首を振った。
「大丈夫だよ。運命は、変えられるものなんだろう?」
「それはそうかもしれぬが――――」
「さあ、とにかくまた――――この戦いを見守ろう」
 キョウジの言葉に、屁舞留も素直に従った。


 太公望たちによって周到に用意された戦場は、戦っていて、全く危なげが無かった。
 ハヤブサやシュバルツの腕の強さは言うに及ばず、さらにいち早く駆けつけて来た援軍によって、村人たちは全員、1人の死人も出さずに逃げ切る事が出来たのである。
「全員助ける」
 そう言い切った太公望が、まさに有言実行をした事になる。村人たちと妖魔たちは互いの無事を素直に喜び、キョウジと屁舞留もホッと胸を撫で下ろしていた。本当に――――すごい事をやってくれていた。

「キョウジ……! 本当に、ありがとう……! お主の助力があればこそだ……!」

 屁舞留はキョウジの手を握り、涙ながらにそう言葉を紡いでいる。
「何を言っているんだ屁舞留……! こうなる事が出来たのは、太公望殿やハヤブサたちのおかげで――――」
 そう言うキョウジに、しかし屁舞留は頭をふる。
「いいや……。最初にお主が『影』を村に放り込んでくれた。そこから、皆の運命が変わって行ったのじゃ。キョウジ……。お主の投じた『石』が、見事に実を結んだのじゃぞ?」

 そう。
 自分一人だけでは、おそらく何も出来なかった。
 泣いて皆の供養をするだけで終わっていた。
 そこに、キョウジが忽然と現れて――――

 手を差し伸べてくれた。
 死者を悼んでくれた。
『運命』に対して怒り、そして、立ち向かってくれた。
 あきらめない『心の強さ』を教えてくれた。

 キョウジが送り込んだシュバルツが、ハヤブサを呼び
 ハヤブサが、皆を呼び込んだ。

 だから――――今がある。

 それであるが故に、自分が謝意を示すのはキョウジ。
 少なくとも屁舞留は、そう思っていた。

「さあ、後は、お主の『影』の死の闇だけが問題じゃな……。一体何故――――何時までもあ奴の背中に、張り付いておるのじゃろう?」
 そう言って首をかしげる屁舞留に、キョウジがポツリと答える。
「それはおそらく、今夜あの村に襲撃をしようと企てている、素戔鳴のせいだろう……」
「――――!?」
「今、ハヤブサたちが退けた軍は、百々目鬼と言う妖魔軍だけだった。でも、あの時村に襲撃をかけて来たのは百々目鬼と素戔鳴――――。素戔鳴の方に襲撃時間を変更する動機が無ければ、おそらく夜半、素戔鳴は村に乗り込んでくる筈だ。村の皆に『天罰』を下すために――――」
「な――――!!」
 屁舞留は思わず、息を飲んでしまっていた。

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