農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 242 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/21 00:59   >>

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 それはハヤブサも同じ考えなのだろう。合流できた劉備軍の軍師諸葛亮に、同じ事を話している。

 そう、シュバルツの『死因』になるのは素戔鳴。
 これ以外はあり得ない。

「ならばキョウジ! また戦いを見守りに行こう! もうあの『闇』は、お主の『影』だけになっておる! 今度こそ我らの手で、もしかしたら悲劇を止める方法を見つけられるやもしれぬ!」
 そう言って屁舞留は立ち上がろうとする。だがそれを、キョウジが引き留めた。
「うん。そうだね。でもその前に、一つだけ、私の願いを聞いてくれないか? 屁舞留」
「願い? 何じゃ?」
 きょとん、とする屁舞留に、キョウジは笑顔を見せた。

「屁舞留の『御神体』の石を、もっと近くで見てみたいんだけど」


「それはお安いご用じゃが……キョウジは変わっておるの。こんな物が見たいのか?」
 キョウジに頼まれてから暫くして、屁舞留とキョウジは『御神体』の石の近くに来ていた。その石は、長老が休んでいる幕舎の中に設えられた、簡易の祭壇の上に大切に祀られていた。
「ほら、これじゃ……。最初はこれが吾の『神体』になる予定であったのだが、生まれてすぐ人界に落ちてしまったせいで、すっかり『石』になってしまった……。もうあちこち削られてしまっておるが、何となく体の形の名残があるじゃろう?」
「本当だ……」
 キョウジがそう言いながらじっと石を眺めている横で、屁舞留もまた、少し複雑な顔をしながらその『石』を眺めていた。
(もう大分削られておる……。100年前にこの村の者たちに偶然拾ってもらって『土地神』として祀られてから、こうして『霊体』を得るまでに『神気』を回復する事が出来たが………もう、吾の寿命が来るのも、おそらく時間の問題であろうな……)
 傷みも酷く、風化も激しい。この『神体』も『霊体』も、もう長くは保たないであろう。

 人界に落ちてから300年。
 いろんな事を経験させてもらった。
 自分には勿体ない程の『奇跡』を、味わわせてもらった。
 もう何時死んでも――――悔いはないと思う。

 新しい土地に行っても、自分の事を『守り神』として祀りたいと言っていた村人たち。
 その申し出はとても嬉しくてありがたいのだが、やはり、新しい土地に行くのなら、その土地に居る『神』を、『土地神』として崇めるべきなのではないかと屁舞留は思う。
 おそらく、もう自分には――――新しい土地を肥えさせるだけの『神力』が、残っては居ないだろうから。

「ねえ、屁舞留」

 キョウジの呼び掛けに、屁舞留ははっと我に帰った。
「な、なんじゃ? キョウジ……」
「この『石』の中に………入る事って出来る?」
「…………?」
 何故キョウジがそんな事を言い出すのか、その意図がさっぱり分からない屁舞留は少し小首をかしげるが、すぐに頷いた。
「ああ。入れるぞ? この『石』もまた、吾の『家』みたいな物であるからな……。そうじゃ、キョウジも入るか?」
「えっ? 良いんですか?」
「勿論じゃ」
 屁舞留は笑顔でそう答えると、キョウジをいざなって『石』の中へと入った。

「へえ……意外と温かいんですね……。『石』って言うから、もっと冷たい印象があったけど――――」

 石の中に入ったキョウジが、興味深そうにあたりをきょろきょろと見回しながら、そう独りごちている。それを聞いた屁舞留が苦笑した。
「言うたであろう? この『石』は、吾の『家』の様な物であると……。この中で眠れば、それはそれは心地良いものなのじゃぞ?」
「そうなんだ……」
 キョウジの返事を聞きながら、屁舞留はまた少し考え事をしていた。
(そうじゃな……『死ぬ』のなら、この中で死ぬのが良い……)

 『無』からここに宿った『命』の様な物が、またここから『無』に帰るだけだ。だから屁舞留は、死ぬ事自体に恐れはなかった。きっとここでなら、母の胎内で眠る様に、安らかに『無』へと還って行けるだろう。

 ただ―――――
 キョウジ
 彼を本当に『独り』にしてしまうかもしれない。
 それだけが――――

 ドンッ!!

「―――――!」
 何かが『閉じる』音がして、屁舞留ははっと我に帰った。顔を上げると、キョウジがいつの間にやら石の外に出てしまっている。
「キョウジ……!」
 慌ててその後を追いかけようとした屁舞留は、何か壁の様な物に阻まれて、そこから出られない事に気付いた。その壁の向こうで、キョウジが綺麗に微笑みながら、印を結んでいた手を下ろしている。彼の作り上げた結界が、この空間を閉じてしまったのだ。
「キョウジ!? 何を考えている!? 開けろ!!」
 屁舞留は怒鳴って、中からバンバンと、結界を叩いてみるが――――それはびくともしなかった。

「屁舞留………短い間だったけど、今までありがとう」

「―――――!?」
「ここから先は、きっと私の『戦い』になるんだ。だから、行くよ」
「戦いに行くのなら、吾も共に――――!!」
 そう叫ぶ屁舞留に、しかしキョウジは頭をふった。
「いや……屁舞留は、村の人たちが『そばに居てくれ』と望んでいる……。だから、村人たちと共に行かないと」
「な………!」
「屁舞留………貴方と過ごした時間は、私にとってはかけがえのないものになった。だから、絶対に忘れない」
 本当に、ありがとう。
 キョウジはそれだけを言うと、踵を返して屁舞留の前から走り去ってしまった。

何を馬鹿な事をぬかしておるのじゃ!! キョウジッ!! 戻って来んか!! キョウジ―――――ッ!!」

 後にはただ――――叫ぶ屁舞留だけが残された。

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