農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 243 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/23 01:07   >>

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(これでいい……。屁舞留は、村人たちに必要とされている………)
 屁舞留から離れて、シュバルツの姿を求めて彷徨いながら、キョウジは思った。
 太公望があれだけ手を尽くしても、シュバルツに張り付いている『死の闇』は晴れなかった。それはつまり、シュバルツの闇を払う役割を背負っているのは、自分ということなのだろう。
 ハヤブサが、皆が、懸命にシュバルツに向かって手を伸ばしている。でもこのままではその手を掴む事が出来ないシュバルのその背中を、皆に向かって一押ししてやる。それが自分の役割なのだとキョウジは悟った。
(『呪』の使い方は分かった……。後は、シュバルツに触れるための『媒介』さえ見つける事が出来れば……!)
 キョウジは確信する。きっと自分は、今度こそシュバルツを『治す』ことができるであろうと。
 だけど、『死滅』へと向かうDG細胞の自然の理をひっくり返す『呪』――――そこに、どれだけのリスクが伴うかキョウジには想像もつかない。下手をしたら自分の霊体自体が、完全に消えてしまう可能性だってある。

 でも、それで良いと、キョウジは思った。

 シュバルツは、ハヤブサに必要とされている。
 屁舞留は、村人たちに必要とされている。
 それに対して自分は、もう死んでいる身だ。ここで今更自分が消えてしまおうがどうしようが――――それこそ誰も悲しまないし、迷惑をかける事もない。
 それが、総ての答えなのだ。
 自分は、シュバルツのためならば喜んで消えられる。
 元々シュバルツは、弟を守る目的で、自分の総てを注ぎ込んで作り上げた『影』
 『身体』を置いて、『心』を託した存在だった。

 バラバラになってしまった身体と心。
 今度こそ本当に―――――一つになっても良い筈だ。いや、そうなるべきだ。

 キョウジは強く決意して、シュバルツの姿を探す。
 やがて、劉備の城の中から出て来て、孫尚香や甲斐姫と共に、村人たちの方へ足を運ぶシュバルツを見つけた。
(いた…………!)
 彼はにこやかに笑いながら、村人たちの炊き出しの手伝いをしたり、子供たちの相手をしたりしている。キョウジはじっと、その様子を見守ることにした。


(いかん―――!! キョウジは死ぬ気だ――――!!)

 結界の壁を叩きながら屁舞留は思った。
 キョウジはあのシュバルツを救うために、『呪』を使うつもりなのだと、屁舞留には容易に想像が出来た。
 だが、物を開いたり閉じたり、動かしたりといった簡単な『呪』であるならばともかく、『死』へと向かう自然の摂理をひっくり返すような強力な『呪』は、たいてい大きなリスクを伴う。下手をしたら、それを発動させた術者本人に反動が跳ね返って来て、死んでしまう可能性だってある。
 『呪』を習い始めて短時間で、その本質を見抜いてしまったキョウジが、そのリスクに気づかぬ筈が無い。
 彼はそれでもやる気なのだ。
 それで自分が本当に消えてしまっても構わない――――彼は、そう思っているのだろう。

 彼にとってはそれほどまでに、シュバルツが大事で。
 そして、ハヤブサが大事で。
『救いたい』
 そう願っているのだから。

 キョウジがここに自分を閉じ込めたのは、彼がそれをしようとしたら、自分が止めに入ると分かっていたからだ。
 当然だ。
 自分は、キョウジに計り知れないほどの『恩』を受けた。
 その『恩人』の完全なる消滅など――――誰が望むと言うのだろうか。

 キョウジにそんな事をさせるぐらいなら自分が代わる。
 その『呪』の反動は、自分が受ける。

 だからキョウジ―――――早まるな!!

 屁舞留は懸命に結界の壁を叩くが、それでも結界はびくともしない。試しに解呪の『呪』を唱えてみるが、結界の薄皮一枚はがす事が出来なかった。やはりキョウジの『呪』の技量は、あっという間に屁舞留のそれを凌駕しつつあるようだ。
(くそ……ッ! キョウジに『呪』など教えるのではなかった……!)
 屁舞留は舌打ちして後悔するが、総ては後の祭りであった。今更この現実を、覆せる筈もない。
「誰か!! 誰か吾の声を、聞いてくれ!!」
 屁舞留は必死に声を上げるが、それに帰って来る反応はない。自分の声がただ虚空に吸い込まれていくだけのような感覚に襲われて、早くも心が折れそうになる。
「…………ッ!」
 だが屁舞留は、ブンッ! と、大きく頭を一つ振ると、また顔を上げた。

「誰か!! 吾の声を聞いてくれ!!」

 もう一度、叫ぶ。

「誰か!! 誰か!!」

 キョウジは、あきらめなかったではないか。
 自分の声が届かずとも、手が届かずとも――――
 何度も立ち上がり、立ち向かって行っていたではないか。

 ならば、吾も、あきらめない。
 そうでなければ、何のために、自分はキョウジと共に時間を過ごして来たのだ。
 絶対に、絶対にあきらめてなどなるものか。
 自分があきらめてしまったら、キョウジが消滅すると分かっているのであるならば、尚更。

「お願いだ!! 誰か!!」

 叫び続けろ
 『想い』を乗せて
 叫び続けろ
 声が枯れても――――

 あの桃の花と共に、自分の声は、確かに皆に届いていた。
 村人たちの中に、自分の声を捉えるための『回路』が出来ている筈なのだ。
 ならばお願いだ。
 あの時の奇跡を、今こそ、もう一度――――!

「誰か――――!!」

 屁舞留は懸命に、叫び続けるのだった。

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