農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 251 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/30 22:11   >>

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(で、でも……屁舞留――――!)
 何とか屁舞留を助けたいと願うキョウジであるが、屁舞留が『呪』を止める事を拒んだ。
(『呪』を止めるなと言うに、キョウジ……! それに、目の前に居る龍の忍者の顔を見ろ)
「…………!」
 屁舞留に言われてハヤブサの顔を見て、キョウジははっと目を見張る。
 ハヤブサは、大粒の涙をその瞳から零し続けていた。
 だがおそらく、本人は『泣いている』と言う事にすら気づいていないのであろう。ハヤブサはその涙を拭うこともせずに、一心不乱にシュバルツを見つめていた。その傷が治っていく様を、見つめ続けていた。
(お主はあの龍の忍者を――――もう一度、絶望の底に、叩き落としたいのか?)
「―――――!」
 屁舞留に痛い所を突かれて、キョウジは返す言葉を失くしてしまう。
 そうなのだ。
 ハヤブサは既に二度、シュバルツを目の前で喪っている。そのうちの一回は、ハヤブサ自身が『魔神』に暴走しかけていた。
 それほどまでにハヤブサにとってはは、耐えられないのだ。シュバルツを失ってしまう事が。
 人生のパートナーとして、彼を求め、必死に手を伸ばしてくれている。
 そんなハヤブサを助けるために、自分はシュバルツを治そうと、決意したのではなかったのか。

 でも、それをする事によって
 屁舞留が―――――

(吾の事は、気にするなキョウジ……。もう吾は、充分生きた)

 それに対して帰って来る屁舞留の声は、あくまでも優しい。

(最期に……こんな風に、お主たちの役に立てるのなら、本望じゃ……)

 屁舞留――――!

(村人たちも、きっと……吾のこの行動を、許してくれるだろう………)

 『呪』を続けるために、懸命に心の平静を保とうとするキョウジ。
 だが、屁舞留を失う哀しみを、どうしても堪える事が出来ない。その感情の発露は、涙の形となって、キョウジの頬を伝って行く。そして、治癒の法を続けるかぐやの玉串の上に、ぽたりと落ちた。

「キョウジ様……? 大丈夫ですか……?」

「――――!」
 はっと我に返ると、隣にいる巫女かぐやが、心配そうにこちらの顔を覗き込んでいた。
「大丈夫だよ」
 キョウジは懸命に、笑顔で繕う。しかし、涙だけは、どうしても堪えられなかった。
 また、零れ落ちて行く涙。このままではいけないと思った。

「それよりも――――早く、終わらせてしまおう」

 そう言いながら、キョウジはかぐやから視線を逸らした。とにかく自分のこの哀しみを、誰にも悟られては駄目だと思った。特に、目の前にいるハヤブサには――――
 もしも万が一、シュバルツを助けるために『屁舞留』と言う小さな神の命を犠牲にしている、と、この二人が知ってしまったら――――
 心優しい忍者たちの事だ。
 シュバルツは「そんな事はしなくていい」と拒否するだろうし、ハヤブサも、「シュバルツが死を選ぶと言うのなら――――」と、言いながら、あっさり自分の命をシュバルツと共に投げ出してしまうかもしれない。

 そんな事をさせては駄目だ。
 こんな悲劇的な結末を迎えるために、ハヤブサは、皆は―――――ここまで頑張ってきた訳ではないのだから。

 でも………

 屁舞留が―――――!

(………泣くな、キョウジ………)

 シュバルツが治っていくにつれて、か細くなっていく屁舞留の気配。もう屁舞留の最期が近いのだと、キョウジは悟った。

(……キョウジ……。吾は、幸せな人生だった………。村の皆と、会えて……。お主と……出会えて……)

 キョウジは、何も言葉を返す事が出来なかった。今何か言えば、間違いなく自分は叫び出してしまうと思ったからだ。

(もし………あのまま、吾はお主と出会わなければ………泣きぬれたまま、事切れていた事であろう………。それを思えば……今は本当に、幸せじゃ………)

 だから…………


 ありがとう…………


 そして、シュバルツの身体は治った。
 そして、屁舞留の気配も完全に消えてしまった。

「………出来た……」

 シュバルツを助ける事が出来たのは、素直に嬉しい。だけど、喪失の哀しみに耐えられない。堪え切れぬ涙が、零れ続けた。
「キョウジ、お前………泣いているのか?」
 ここでようやくハヤブサが、キョウジの涙に気が付いたらしい。キョウジは、妙に可笑しくなってしまった。全く、ハヤブサはどれだけシュバルツしか見ていなかったんだ? 私はだいぶ前から泣いていたっていうのに。
「あはは……ハヤブサだって、泣いているじゃないか」
「う……! こ、これは……!」
 ハヤブサが、慌てて涙をぐしっと、拭っている。どうやら彼は本当に――――自分の涙にすら気が付いていなかったようだった。
 でもハヤブサは、哀しくて泣いているのではない。嬉しくて泣いているのだ。
 シュバルツを助けられた事が嬉しくて――――泣いてくれている。
(良かった……)
 キョウジも少し、冷静な自分を取り戻す事が出来た。
 

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