農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 227 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/03 01:59   >>

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 キョウジはシュバルツの気配を追って、その後を追う。そして、木立の中に、座り込んで木の幹に凭れかかっているハヤブサと、その眼前に立つ仁王『素戔鳴』の姿を先に見つけてしまった。
 ハヤブサの顔色は青ざめ、苦しそうに肩で息をしていた。敵を目の前にしても立ち上がらない龍の忍者を不思議に思って、キョウジはその原因を探ろうとして――――彼の左足の膝から下が、変なふうに折れ曲がっている事に気づく。
「―――――!!」
 他にも身体に無数の傷が刻まれているハヤブサ。俄かに信じ難い光景を見てしまって、キョウジは大声で叫んでしまいそうになる。

「良い表情だ……。覚悟は、出来たか?」

 そう問う仁王の視線の先で、穏やかな笑みを浮かべているハヤブサ。これは―――――どう見ても、『死』を覚悟して、受け入れている眼差しだ。

「駄目だ!! ハヤブサ!!」

 堪え切れず、キョウジは叫ぶが、当然その声は誰にも届かない。そうしている間にも、素戔鳴はハヤブサとの距離を、さらに詰めて来た。

「人の子にしては、汝はよく戦った。その闘志に敬意を表し、吾直々に――――貴様に引導を渡してやろう……」

「ハヤブサ!!」

 キョウジは叫んで手を伸ばすが、当然自分の声は誰にも聞こえず、その手が何かに触れることもない。自分はここに、居ないのと同じなのだ。ただ――――見守るしか出来ない。その事実に、キョウジは歯噛みする。

 でも駄目だ、ハヤブサ
 死ぬなんて――――!

 キョウジの願いもむなしく、素戔鳴が剣を最上段に振りかぶる。そのままハヤブサは死を迎えるしかないのかと、キョウジが絶望しそうになった瞬間。

「ハヤブサ!!」

 キョウジにとって、耳慣れた者の声が響く。
 それと同時にそこに飛び込んできた風が、振り下ろされた素戔鳴の剣をかいくぐって、あっという間にハヤブサの身体をかっさらって行った。
「シュバルツ!!」
 風の正体をいち早く看破したキョウジが叫ぶ。その先で、ハヤブサを庇ったシュバルツが、ガバッと起き上がっていた。ハヤブサの身体に起きている異変に、どうやら気づいたらしい。
「足を――――! ハヤブサ……!」
 折れたハヤブサの足に手を伸ばして、シュバルツは治療をしようとしている。だがそれを、素戔鳴の震える声が遮った。

「………何だ? 貴様は………!」

「――――!」

 はっと、弾かれた様に振り向いて、刀を構えるシュバルツ。それを、憤怒の表情を面に浮かべて、仁王は睨みつけていた。
「何者だ? 貴様は――――!」
「…………?」
 目の前の仁王からの質問の意図が少しわからず、刀を構えながら眉をひそめるシュバルツ。その後ろで、龍の忍者が足掻いていた。彼は素戔鳴が何に対して怒り、何を言わんとしているのか―――――よく分かっていた。だから、シュバルツにそれを『聞かせたくない』と、願っていた。

 しかし、ハヤブサの願いはかなえられず、素戔鳴の言葉はそのまま続いてしまう。

「何と邪悪な……! 何故、貴様の様な物が、人の子の傍をうろついておるのだ!!」
「――――!?」
「吾には見えるぞ……! 貴様のその身体―――――何と不自然でいびつで、邪悪な物で出来ておるのか!!」
「な………!」
 素戔鳴の言葉に息を飲むシュバルツ。そんな彼に、目の前の仁王は更にたたみかけてくる。
「そんな『モノ』が、善良なふりをし、人の子に近づく……。その行為が、どれだけ人の子を危険に曝している事か――――汝は分かっておるのか!?」
「……………!」
「汝は、この世に存在していてはならぬものだ!! 今すぐ、抹消されるべきものなのだ!!」
 素戔鳴の言葉に呼応するかのように、兵士たちがその周りに集まって来て弓矢をつがえ、シュバルツに狙いを定め始めた。

 ああ――――

 キョウジは、天を仰ぐ。
 この断罪は、シュバルツが受けるべき物ではない。自分こそが、その前に行って裁かれなければならないのに。
 シュバルツがそんな身体になってしまった事自体、彼の方には何一つ落ち度など無い。悪いのは、総て私だ。私のせいなのだ。それなのに。

 どうして――――シュバルツが、そんな風に責められなければならないと言うのだろう。

 小さく震えるシュバルツの身体。彼の動揺が見え隠れしていた。
 だが、そんな彼を救ったのは後ろに居るハヤブサの存在だった。

「シュバルツ……ッ!」

 足掻く龍の忍者から発せられたか細い声が、シュバルツを正気へと戻らせた。
 彼は素戔鳴から逃げるべく、閃光弾をその手から放つ。その場に居る者たちの視界を奪って、とりあえず、その危地から脱出する事に成功していた。ハヤブサを抱えて走るシュバルツ。キョウジはその後をついて行く。
「……………!」
 だが、キョウジは気付いてしまう。
 シュバルツの身体に、素戔鳴の剣が掠めていたと言う事実に。
 シュバルツを形作っているDG細胞が、もうゆっくりと壊れて行くしかないと言う事実に――――。

 それでもシュバルツは、黙ってハヤブサの怪我の手当てをしていた。
『死』を覚悟していたハヤブサを、「生きろ」と、懸命に説得していた。自分が緩やかに壊れて行っている事を隠して―――――

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