農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 228 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/04 00:24   >>

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 そんなのは嫌だ、治したい、と願って、キョウジはシュバルツに手を伸ばす。
 しかし、キョウジの手は、何度やってもシュバルツの身体に触れることすら出来なくて。

 ごめん、ハヤブサ……。
 ごめん、シュバルツ……。

 忍者二人の逃避行を見守りながら、キョウジはただ涙を落とし続けていた。
 この先には、もうどう足掻いても悲劇しか待ち受けていない。
 どうして………。
 どうして、こうなってしまうのだろう。
 キョウジは、自らの無力を呪うしかなかった。

 懸命に逃げていた忍者たちであったが、素戔鳴の組織だった攻撃に、ついに追い詰められてしまう。それでもハヤブサは、懸命にシュバルツを守ろうと足掻いたが――――
 傷だらけのハヤブサが、素戔鳴の猛攻に耐えきれる筈もなく。
 ついに龍の忍者は、その身を起こすことすら出来ないほどの傷を負って、倒されてしまう。
「ハヤブサ!! ハヤブサ!!」
「う………う………」
 懸命に呼びかけるシュバルツに、ハヤブサはもう、僅かに身じろぐことでしか答えられない。そこに素戔鳴が、シュバルツに呼びかけてくる。ハヤブサを助けたければ、黙って自分に斬られよと。

「………本当に、私が黙って斬られれば、ハヤブサを見逃してくれるのか?」

「ああ。吾は、約束は守る」

 シュバルツはそんな素戔鳴を、しばらく推し量るように見つめていたが、やがて微笑んで頷いた。素戔鳴の言葉は信ずるに足る――――そう、判断してしまったのだろう。
 シュバルツはハヤブサに、最期の言葉をかける。

 今までありがとう。
 幸せだった。
 元気で。

 それだけを言うと、彼は刀をそっと置き、素戔鳴の方に歩を進めて行く。
(シュバルツ……!)
 キョウジは大粒の涙を流していた。
 シュバルツを守ってやることも、素戔鳴を止める事も出来ない自分。
 見守ることしか出来ない自分。
 ならばせめて
 見守り続けなければ――――

 キョウジはそう思うのに、視界は変に霞んで行くばかりだ。
 駄目だ
 駄目だ
 どうして――――こうなってしまうのだろうか。
 せめて、見届けなければならないのに。

 素戔鳴に斬られるために、その傍に歩を進めたシュバルツ。
「………もう、良いのか?」
「ああ。もう、別れは済んだ」
「そうか………」
 チャッ、と、素戔鳴の構える天叢雲の剣が音を立てる。
 あっさり素戔鳴の言う事を聞いたシュバルツに対して、一瞬、仁王の瞳に慈悲の色が浮かんだようにキョウジには見えた。だがそれも、すぐに掻き消えた。
「……潔くその身を差し出した汝に免じて、せめて苦しませずに、あの世へ送ってやろう」
「…………」
 素戔鳴から最後通牒を突きつけられても、シュバルツの穏やかな気配は変わらない。その姿が酷く綺麗で、哀しかった。
(シュバルツ……ッ!)

 ハヤブサを守って死ねるから
 これでいい
 貴方はそう思っているんだろう?

 だけど……
 だけど―――――!

 ハヤブサも私も
 貴方の『死』など望んでいない。
 だけど、それを止める術が無いから哀しい。

 本当に
 本当にどうすれば、良かったと言うのだろうか。

 もう後は斬られるだけ――――素戔鳴が、天叢雲を最上段に振りかぶる。
 だがそれに、待ったをかける者が居た。
 ハヤブサである。
 満身創痍の彼の何処に、そんな力が残されていたのか。
 彼は『起き上がる』と、シュバルツを背後から引き倒して、その上に馬乗りになっていた。

「―――ハヤブサよ。これは一体何の真似だ?」

 自分の裁きに横槍を入れられた格好になった素戔鳴が、不快感をあらわにしながら忍者二人を見下ろしている。
 だがハヤブサも、懸命に素戔鳴に頼み込んでいた。彼と『最期』に、話す時間が欲しいと。

「お願いだ! 少しでいいんだ……! 彼と話す時間をくれ……! もう死に向かう身なれば、それぐらいの情けはあってもいいはずだ……!」

「……………」

 素戔鳴は推し量る様に、二人の様子を無言で見つめていたが、やがて、構えていた天叢雲の剣を下に下ろした。どうやら、ハヤブサの懇願を受け入れてくれたらしい。
「よかろう……。少しの間、待ってやる」
 そう言うと素戔鳴は2、3歩下がって、二人から少し距離を開けた。
(……何を、話すつもりなのだろう?)
 キョウジは二人の会話が気になって、少し傍に近寄って、耳そばだてた。
 そして知る。
 ハヤブサは、己が身体に爆薬を仕掛けている事。
 そしてそれを――――今から作動させるつもりである事を。

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