農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 260 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/04/13 00:13   >>

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  「最終章」


「―――――!」
 光に包まれたハヤブサが次に我に帰った時、自分は、某国の土産物屋の前に居た。
 懐に忍ばせていた懐中時計で、日付と時間を確認する。それは自分が間違いなく『帰りたい』と願っていた日付と時間を指していた。
 目の前には変わった形のアクセサリーがあり、店主がそのアクセサリーの由来について、熱心に説明してくれている最中だった。
 そうだ。
 今、この話を切り上げて空港に走れば、一本早い飛行機に乗れる。
 ここで自分は迷っていた。
 シュバルツと会う約束をしているのは明後日。早く日本に帰って里に報告に行った所で、その後、己を持て余してしまう事は目に見えている。それなら少しこちらでゆっくり土産でも探索して――――と、あの時の自分は思っていた。
 だが。
(キョウジ――――!)
 迷っている暇はないと感じる。
 妖蛇を討滅した今――――キョウジを『死』の運命に向かわせる物は、もうないと信じたい。だがもし、あのシュバルツの時みたいに、理不尽な『死』の運命が、キョウジにとり憑いていたとしたら。

 行かなければ。

 強くそう感じたハヤブサは、空港に走る事を選択していた。
「店主、興味深い話をありがとう。これは、礼だ」
 ピン! と、コインを店主に向かって放り投げて、龍の忍者はその場から消える。
「あ、ああ……毎度〜!」
 土産物が売れるよりも多くのチップを、その店主は手に入れていた。


 空港に走り込み、搭乗手続きを済ませる。何とか、一本早い飛行機の席を取る事に成功した。案内に従って飛行機に乗り込み、焦る気持ちを抑えつけてシートに身を沈める。時計を見つめ、到着予定時刻を見て、頷く。このまま順調にいけば――――間違いなくキョウジが死ぬ『あの時間』より先に、キョウジのアパートに辿り着ける筈だ。
(だが……もしも万が一、何も起こらなかったら……?)
 龍の忍者の脳裏に、ふとそんな考えが頭をよぎる。

 もし自分がキョウジのアパートに走って行っても何も起こらなかったらどうなるだろう。
 その場合、逢瀬の約束を破って、勝手にシュバルツに会いに行ってしまう事になるのだから、もしもシュバルツの方に時を越えた記憶がない場合、それこそ烈火のごとく詰られてしまうだろう。最悪、1カ月ぐらい会ってくれなくなってしまうかもしれない。
(……………!)
 かなりきついが、それでもいいとハヤブサは思った。

 考えてもみろ。
 キョウジを失って正気を失くしてしまうほど憔悴してしまうシュバルツを見るよりも
 自分が詰られたり罵られたりけなされたりする方が――――何百倍もましじゃないか。

 良いんだ。
 シュバルツとキョウジが幸せなら――――俺は、どうなっても。

 そう言いながらも、龍の忍者はシートの上で膝を抱え込んでしまっている。
 泣きたくもないのに、涙まで出て来た。
 やはり、シュバルツやキョウジが居る心の奥深いこの場所は――――どう足掻いても、自分でも鍛えようがない、どうしようもない所なのだと知る。

 それでも、この苦しみすら愛おしいとハヤブサは感じていた。

 傍にいたい。
 守り抜きたい。
 愛し抜きたい。

 そう思える存在があると言う事は、何と幸せな事なのだろう。

(『あの時間』を、キョウジが無事越えられるかどうか、確認をするだけだ……! それさえできれば俺は………!)

 その後ならば、シュバルツからどう詰られても構わない。
 言われるままに、すごすごと里に帰ろう。
 ハヤブサはそう決意を固めて、『仕事』で疲れた体を休ませる事にした。日本で何が起きても良い様に、備えるために。


 成田空港につき、電車の切符を買う。
 もちろん行き先は、キョウジのアパートだ。
 一本早い飛行機に乗れたおかげで、時間的にだいぶ余裕がある。このまま順調に電車を乗り継ぐ事が出来れば、『あの時間』には問題なく間に合うように思われた。

 里への『任務完了』の報告は、申し訳ないけれど後回しだ。
 報酬を受け取る事など多少遅くなっても構わない。
 よくよく考えてみれば、仕事に終わった後にシュバルツに会える事ほど自分にとって喜ばしい報酬は他にないんだ。
 笑顔が見られればいい。
 でも、自分はシュバルツとの『約束』を破っている。だからそれは、望むべくもないだろう。
 良いんだ。
 せめて、二人の無事が確認できれば――――。
(………そう言えば『あの時』も、二人の無事を祈って、走っていたっけな……)
 電車の中で、龍の忍者はふと、今はもう遠い記憶となった妖蛇出現の瞬間を思い出していた。飛び交う怒号と悲鳴の中、自分を導く様に飛んでいた隼に向かって、懸命に走っていた自分。あの時は本当に、心配で胸が押し潰されそうだった。
 そうだ。
 『あの時』も、こんな風に電車に乗っていて、それで『妖蛇の首』を――――

 その時いきなり電車が、ガクン、と止まった。

「――――!?」

 咄嗟にあの時と同じように窓の外を見るハヤブサ。しかし、窓の外にはいつも通りの日常的な街の風景が写し出されるだけであった。
「な、何だ?」
「変ねぇ……。こんな所で止まるなんて……」
 それでも、いつもと違う電車の動きに、乗客たちも戸惑い気味になる。やがて、社内に、車掌の穏やかな声が響き渡った。

「申し訳ございません。ただ今信号機の故障により、電車を停止させております。復旧まで少々時間がかかります。今しばらく、お待ちください――――」

 何の変哲もない電車のちょっとした『事故』
 だがハヤブサは(来た………!)と、思った。

 ここだ。
 ここでもう動きださなければ、キョウジの『あの時間』には間に合わない。
 これは、確信だ。

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