農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 269 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/04/26 01:45   >>

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「ああ……。キョウジの時計だ。今キョウジの腕には、同じ物がつけられているから、どう言う訳かこれがこの世には2個あることになるのかな……」

 そう言ってシュバルツは、この時計を優しい表情で眺める。
 この時計は『証』だった。
 自分達が時を越えた『証』
 キョウジを守り切れなくて、一度死なせてしまった『証』
 そして――――

 キョウジが死した後も、自分が生き残ってしまう『証』でもあった。

「シュバルツ……」

 時計を見つめるシュバルツの表情があまりにも穏やかであるが故に、ハヤブサの面に哀しみの色が浮かぶ。

 何故
 何故、目の前のこのヒトはそんなに穏やかな表情を浮かべていられるのだろう。

 死ぬ事が出来ずに、永遠に彷徨わなければならない現実が
 このヒトにはつきつけられているのに――――

 そんなハヤブサの気配を察したのか、シュバルツが顔を上げて優しく微笑む。
「そんな心配そうな顔をするな、ハヤブサ! 私は自分の運命を悲観して、自棄になったりはしないさ。ただ、『キョウジと共に死ぬ』と言う選択肢が、消えただけの話だ。いざとなれば、ドモンの持つ『キング・オブ・ハート』の紋章の力でも、お前の龍剣でも――――DG細胞を滅する事が出来る。それで私は死ねるんだ。完全に『不死』と言う訳でもないのだから」
「―――――!」

「ただ……『覚悟』は必要だと思う……。何もかもを、受け入れるための『覚悟』が……」

 愛おしい人たちと、別れる『覚悟』
 たった独りで――――生き抜いて行く『覚悟』
 総てを見届けるための 『覚悟』が―――――

「そのための『猶予期間』が、私にはまだある……。そう信じて、良いんだよな……?」

 その為に、憶えておく。
 キョウジから受けた『愛情』を。
 ハヤブサから、死ぬほど愛された『記憶』を。
 自分の支えとなってくれる、ドモンとレインの事も。

 そして忘れない。
 キョウジから託された、キョウジ自身すら忘れてしまった『魂の記憶』も。
 助けてくれた屁舞留の事も、ずっと自分が覚えておく。
 そうすれば、何時か遠い未来で生まれ変わった『屁舞留』と出会った時に
 キョウジの代わりに自分が屁舞留に
「ありがとう」
 そう伝える事が出来るのではないか。
 そうならば、自分の『不死』である事にも、
 ほんの少し――――『意味』を見出すことも、出来るのではないだろうか。

「シュバルツ……!」

 気がつけばハヤブサは、シュバルツの身体を力いっぱい抱きしめていた。腕の中で愛おしいヒトが戸惑った様に身じろぎをするが、どうにも自分が止められなかった。
 愛おしい。
 愛おしくてたまらない。
 この健気なヒトが――――
 孤独な道を歩むと、決めてしまっているその覚悟が――――

 改めて、ハヤブサは自分に誓う。
 命ある限り――――自分は、このヒトを精いっぱい、愛し抜くのだと。
 このヒトの、生きる『支え』となるために。

 だが自分は、このヒトを『死』へと誘(いざな)える手段も持っている。
 もしも自分が、自身の『死』を目の前にした時
 自分はシュバルツを、どうしようと思うだろうか。
『生きて欲しい』と願うだろうか。
 それとも『道連れにしたい』と、願ってしまうだろうか。

 先の事はどうなるか、自分にも分からない。
 だから今は。

 彼と過ごす時間を、大切にしたい。
 そう――――願う。
 少しでも、自分と過ごした時間が、彼にとって楽しい物になる様に。

 知らず、泣きそうになる。
 ハヤブサは慌てて、涙の意味をごまかした。
 実際――――彼に聞いて欲しい話も、あったからだ。

「シュバルツ……。俺の話も、聞いてくれるか……?」

「ああ……。構わないが……?」
 疑問を呈しながらも頷いてくれるシュバルツにハヤブサは微笑むと、彼から身体を離して、一振りの木刀を取り出した。
「一応俺の方にも、今回の出来事が『夢ではなかった』という証拠の品がある。シュバルツ……これが何だか、分かるか?」
「木刀だろう? それがどうかしたのか?」
 言わずもがなな事を言う愛おしいヒトに、ハヤブサは苦笑する。
「確かに木刀だ。だがこれは、ただの木刀ではない」
「…………?」
 小首をかしげるシュバルツに、ハヤブサはズバリ言った。

「『宮本武蔵』が、手ずから作った『木刀』なんだ……」

「―――――!」
 その一言で、シュバルツはある程度察してしまった。
 そう。『宮本武蔵』と言えば、歴史上のビッグネームだ。もしも、その人物の作とされる物が現代で見つかったならば、それは国宝級の宝になるし、その価値たるや、計り知れないものとなる。
 そしてハヤブサは、アンティークショップの経営者だ。
 その骨董的価値が、誰よりも分かる人間であるが故に――――。
「それなのに……俺ときたら………」
「ど、どうした?」
 若干嫌な予感に襲われながらも、シュバルツは問い返す。

「この木刀に……ッ! 本人の『銘』を入れてもらうのを、忘れていたんだ……ッ!」

「――――!」
 ハヤブサのある意味やっぱりな物言いに、シュバルツはズルッとこけた。
 骨董にあまり明るくないシュバルツにとっては、割とどうでもいいことなのだが、専門家のハヤブサにとっては、これは大問題に値する事らしい。

「本物なのに……ッ! 間違いなく、直接本人から手渡してもらった本物なのに……ッ!」

 そう言いながら龍の忍者は、木刀を抱きかかえてしくしくと泣き出してしまっている。シュバルツは、顔をひきつらせながら起き上った。
「い、いいじゃないか……。それはそれで『家宝』として、大事に取っておけば――――」
 一応慰めてみるが、龍の忍者は頭をふる。
「それはそうかもしれないが……『銘』が入っていれば、『間違いなく本物』と、証明できたのに……!」
「おい」
 呆れかえるシュバルツをよそに、ハヤブサは1人のたうちまわっていた。
「どうしてそれをしてもらわなかったんだ!! 俺の馬鹿!! 本人から直接もらったのに! 本人が目の前にいたのに――――!!」
(……よく考えれば、私たちは凄い人たちと一緒にいたんだよな……。今でも信じられないぐらいだが……)
 宮本武蔵や織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。源義経。劉備、関羽、張飛、諸葛亮、太公望――――どれをとっても、歴史にその名を刻んだ『偉人』たちだった。実際その傍にいるときは、その感覚も麻痺してしまっていたが、今考えれば考える程、凄い状況であったと思う。よくアンティークショップ経営のハヤブサが、俗な欲望に負けなかったものだと、今改めて感じる。
 シュバルツはやれやれ、と、ため息を吐いた。

「ほらっ、ハヤブサ。お前の好きな寿司でも食べに行こう。今日1日かけて、お前を慰めてやるから」

「……本当か?」
 涙目になって振り向くハヤブサに、シュバルツは苦笑しながら頷く。
「ああ。キョウジも言ってくれたんだ。『今日は1日、ゆっくりしておいで』と。だから、お前が迷惑でなければ、今日は1日、お前と共に――――」
「迷惑だなんてとんでもない! 嬉しいよ、シュバルツ!!」
 シュバルツの言葉が終わらないうちに、ハヤブサが嬉しそうに起き上がって来る。
「…………!」
 自分の『言葉』が、ハヤブサにとってもの凄く有効に利く事に、シュバルツは驚きを隠せない。だけど嬉しくもあった。自分が確かに、ハヤブサの支えとなれているのならば。
 しかし。
「よしっ! じゃあ早速――――」
 行こう、と、言ったハヤブサの語尾が、若干掠れている。どうやら今回の木刀の銘に対するダメージは、ハヤブサにとってはかなり深刻な物であるようだ。
 シュバルツは苦笑しながら、ハヤブサの後をついて行った。1日かけて、ちゃんと慰めてやらねばと思った。

 こうして、妖蛇の影響が無くなった世界で、皆がそれぞれの日常に戻っていく。
 その中を、ただ優しい風が、吹き抜けて行ったのだった――――。


                          (了)

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