農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 3

<<   作成日時 : 2015/06/17 01:38   >>

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 家に帰り、キョウジに本を渡したシュバルツだが、胸の奥に宿る「もやっ」とした蟠(わだかま)りは消えない。これではいけない、と、彼はキョウジに一声かけてから、外へと出て行った。そのまま郊外の森に入ると、彼はそこで木刀の素振りを始めた。自分の中に『雑念』や『邪念』が湧いた時は、こうやって修業をするに限るのだ。

 嬉しそうに笑うハヤブサが居た。
 それを優しく見つめる青年が居た。
 栗色のセミロングの髪を無造作に一つに束ね、穏やかな眼差しでハヤブサを見つめる青年。二人が並び立つと、それはとても美しい一枚絵の様だった。思わず「ずっと見つめていたい」そう感じてしまうほど――――。
 何故なのだろう。
 纏っている空気が同じだからなのだろうか。
 それとも、二人の共有して来た『時間』の長さが、そういう雰囲気を作り出しているのだろうか。
 結構な事ではないか。
 ハヤブサに親しい『友人』が居るという事は。
 これは素直に祝福するべき事で、こんな風にこちらがイラつく必要など何一つ無――――

(でも、好きなのだろうな)

 不意にシュバルツは思った。
 ハヤブサの方はどうか知らない。
 だが、あの青年の方は。
 優しい眼差しでハヤブサを見つめていたあの青年の方は、ハヤブサの事を好きなのではないだろうかと感じる。少なくとも、『友人』以上の感情で――――
 そしてそれに、もしもハヤブサが気がついたとしたら。

 彼はどうするのだろう。
 彼は、あの青年と私の、『どちら』を選ぶのだろう。

 そこまで思い至ってしまってから、シュバルツは「はっ!」と気がついて頭をふる。

(馬鹿な事を――――! 『選ばせる』など、おこがましいではないか! そうなった場合、身を引くのは私でなければならない筈だ!)

 あの青年は『人間』
 私は、『アンドロイド』
 そして『人間』であるハヤブサの、その隣に居るべきはどちらか。そんなの、考えるまでも無く、答えは一つだ。

 勘違いするなよ。
 思い上がるなよ、シュバルツ・ブルーダー。
 お前は元来、人間の横で『恋人』などと大きな顔をして居座って良い存在ではない。人間ではない、歪な物で構成されている人工物の自分は、それこそ『道具』の扱いで充分なのだ。飽きるまで使ってもらって、飽きたらそのまま打ち捨てられたって文句は言えない。言う資格など無い。それで充分なんだ。それで――――

(分かっていないなぁ。お前は……)

 不意に脳裏に、ハヤブサの優しい声が響く。

(俺は『お前』だから、こうして触れていたいと、願うのに――――)

「…………ッ!」
 違う、駄目だ――――! と、シュバルツは何度も己を否定する。
 勘違いするな。
 思い上がるな。
 お前は『モノ』だ。『道具』なんだ。
『道具』だから、使ってもらえるだけでいい。打ち捨てられたって、文句は言えない。
『道具』が『人間』と対等でいようなどと、それこそおこがましすぎる。

 ならば何故
 何故
 こんなにも、『ココロ』が軋む?

 ハヤブサの愛情が離れて行くかもしれない、と、思っただけで、何故そんなにも嫌がっているのだ。

 離レナイデ
 行カナイデ

 そうやって、泣きわめきそうになる自分が居る。
 そんな事、許される筈も無いのに―――――
 たかが『道具』の分際で―――――!

 こんなのは『邪念』 まさしく、『邪念』だ。
 断ち切れ。
 今こそ。
 その手で―――――!

「叭―――――――ッ!!」

 シュバルツは、目の前の大木に向かって、木刀を一閃させる。正しく『明鏡止水』の極意を発露させているのならば、目の前の大木は、木刀によって一刀両断される筈であった。
 しかし。
 次の瞬間、ガキッ!! と鈍い音を立てて砕けたのは、木刀の方だった。

「…………!」

 シュバルツはしばし呆然と、その砕けた木刀を見つめていたが、やがて、背後の木の幹に、その身をトン、と、凭れかけさせた。
「ハハ……。弱いな……。私は………」
 邪念と雑念だらけの己が剣に、シュバルツは苦笑する。泣きたくも無いのに、勝手に涙まで零れおちて来た。
 ハヤブサに想いを寄せている『人間』が居る――――
 たったそれだけのことで、何故ここまで動揺しなければならないのだろう。自分の心の弱さに、シュバルツはほとほと嫌気がさしてしまう。
(このままではいけない)
 そう強く思ったシュバルツは、己が顔を上げた。こういう時にこそ行くべき、己のもう一つの『修行の場』が在る。それに、思い至ったのだ。
 シュバルツは静かに、その森から姿を消した。。
 後には木立の間を縫う風だけが、残されていた。

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