農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 5

<<   作成日時 : 2015/06/18 23:40   >>

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「ごめんなさい! 私がもっと確認してドアを開けていれば――――」
「いや……私たちも、周りの状況確認を怠っていた。レイン、君に怪我はなかったか?」
 シュバルツの言葉に、レインは「はい」と頷く。
「そうか……良かった………」
 シュバルツは軽く手足を動かして、身体の異常がないかを確認する。幸いにして、どこにも異常は見当たらなかった。あった所でこの身体は治ってしまうから、さして問題にもならないのだけれど。
 そしてシュバルツは、ドモンと手合わせをする前よりも、自分の心が落ち着いている事を自覚する。やはり――――弟の存在とその拳が、自分には一番良い薬だとシュバルツは思った。
(それにしてもこの状況……やはり、私の方が弟離れが出来ていない事になるのかな。いったい私は何時になったら、弟から卒業できるのだろう……)
 そう感じて苦笑する。この様子だと、自分が弟から卒業できるのは、まだ当分先の様な気がしないでもなかった。服についていた汚れを軽く落とすと、シュバルツは二人の方に改めて振り返った。
「邪魔をしたな、ドモン。じゃあ、私は帰るから――――」

「えっ? 帰っちゃうの!?」

 シュバルツのその言葉に、レインが素っ頓狂な声を上げた。「えっ?」と、シュバルツが振り向くと、レインが縋るような眼差しでこちらを見ている。
「お願い、シュバルツさん! 夕食を食べて行ってくれない? マスターから野菜を大量に送られて来て、その処理に困っているの!」
「へっ?」
と、言って固まるシュバルツの横で、ドモンもまた目をぱちくりとしばたたかせている。
「えっ? 師匠から野菜って……」
「あの台所に積み上げている段ボール全部よ!! 貴方見てないの!?」
「えっ? あれ全部!?」
「そう! あれ全部!」
(『あれ全部』って……どれぐらいなんだろう……)
 2人の会話を聞きながら、シュバルツは多少引き気味になる。このぶんだと夕食を食べた後、絶対手ぶらでは帰れない流れになりそうだった。
「なんだ。俺はてっきりあれ全部レインの美容セットの類かと……」

「それだけ気を遣わなきゃいけない程、私の肌がぼろぼろだって言いたいの!?」

 ゴイン! と、小気味いい音を立てて、レインの鉄拳制裁が飛ぶ。哀れドモンは、頭に巨大たんこぶを作って突っ伏す羽目になってしまった。
「と言う訳でシュバルツさん。夕食を食べて行ってくれないかしら?」
 ドモンを殴り伏せたレインが、とてもいい笑顔で振り向きながら誘ってくる。これは、絶対に断ってはいけない流れになってしまったとシュバルツは悟った。
「わ……分かった……。だが、一度家に帰っても良いか?」
「えっ? どうして?」
 小首をかしげて疑問を呈するレインに、シュバルツは宥める様に言葉を続ける。
「私一人だけ、そんな贅沢に預かる訳にもいかないだろう? キョウジも呼んでくるから」
 シュバルツのその言葉に、ドモンもレインも、その面にとても嬉しそうな表情を浮かべた。
「えっ!? 兄さんも!?」
「そうね! ぜひ、そうしてくれる? 待ってるから!」
 二人のその言葉に、シュバルツもまた、その面に笑みを浮かべた。キョウジは本当に、この二人に慕われていると思った。
「じゃあ、また後でな」
 そう言うと、シュバルツはキョウジを呼ぶべく、踵を返してそこから立ち去って行った。


「えっ? レインが?」
 数刻後、シュバルツに買って来てもらった本を読みながら、実験のデータをまとめていたキョウジが、少し驚いた様な声を上げていた。
「ああそうだ。夕食を振るまいたいと言われて――――」

「やった――――!! 久しぶりに、まともな夕食が食べれる――――!!」 

「喜びすぎだ! キョウジ……。まあ、気持ちは分からんでもないが――――」
 キョウジが手放しで喜ぶ様に、シュバルツも苦笑しつつも嬉しくなってしまう。無理もない。キョウジはここのところ実験が忙しくて、まともに家に帰れていない状態が続いていたからだ。
「でかした! シュバルツ! でも、どうしたんだ? ドモンの所に行っていたのか?」
「ああ。まあ――――」
 キョウジからの質問に、シュバルツは少し視線を泳がせる。
「……ドモンも、もうすぐ格闘大会が近いだろう? だから、稽古をつけに行っていたんだ」
 当たらずとも遠からずの事を言う。本当は、自分の気持ちを整えるために、ドモンの拳を求めに行ったのだが。
「ふ〜〜ん?」
 キョウジはしばらくそんなシュバルツをじっと見つめていたが、フッと笑顔を見せると、いそいそと立ち上がった。
「じゃあ、急がないとな! ドモン達も待っていてくれているんだろう?」
「ああ。そうだな」
 シュバルツがそう返事をした時、キョウジの手元の携帯電話が鳴った。

「はい、もしもし」

 キョウジが電話に出ると、その向こうからアカサカ教授の声が聞こえて来た。アカサカ教授とは、キョウジ達の父であるライゾウ・カッシュの師に当たる人で、キョウジがこの研究室に復帰するにあたって、かなりの尽力をしてくれた人物でもある。相当な高齢で人当たりも良く、研究室の皆に『おじいちゃん先生』と呼ばれて慕われている存在でもあった。

「教授? どうしたんですか?」

 キョウジの問いかけに、アカサカ教授の、か細い、頼り無さげな声が聞こえてくる。
「キョウジ君……。今から……研究室の方に出てこられないかのう……?」
「えっ? ど、どうしたんですか……?」
 若干嫌な予感を感じながらも、キョウジは教授に問いかける。すると教授が、途方のくれた声で返事して来た。
「じ、実は……この前、キョウジ君がデータをまとめてくれた、ラットの一群が居ったじゃろう……?」
「ええ、あのラットたちですか? あれはちゃんと分別して、ゲージに入れた筈ですが……」
「そ、それがのう、キョウジ君……」
 アカサカ教授が泣きそうな声で言葉を続ける。
「さっきうちのミーコが、ラットのゲージをひっくり返して……」
「へっ?」
「せっかくキョウジ君が分別してくれたラットが、ごちゃ混ぜになってしまって……」
「へっ?」
「ミーコを押さえて、部屋も閉めて……ラットは研究室から外に逃げてはおらんと思うのじゃが……わし独りでは、どうにもならなくてのう………」

「――――――」

 あまりの事態に、キョウジは思わず絶句してしまう。割と、研究室に閉じこめられて、そのまま帰れなくなるコースが決定したように感じた瞬間だった。

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