農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 6

<<   作成日時 : 2015/06/19 15:46   >>

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「はい……はい……。分かりました。すぐ行きますので―――――」

 そう言って、キョウジは携帯の通話を切る。
 はあ、と、ため息を吐きながら顔を上げると、同じく複雑な表情をしてこちらを見ているシュバルツと視線が合った。
「……行くのか?」
 そう聞いてくるシュバルツに、キョウジも頷く。
「仕方がないよ。アカサカ教授の頼みじゃね〜………」
「まあ、確かに……断れないよなぁ……」
 しみじみと返してくるシュバルツに、キョウジも『だろ?』と、言った後、大きなため息を一つ吐いた。
「それにしても……研究室に、できればミーコちゃんは入れないで欲しいんだけどなぁ……」
「そうだな……。アカサカ教授も、あれが無ければいい人なのだが……」
 二人が同時に大きなため息を吐いた所で、キョウジがおもむろに手元の携帯電話を操作しだした。
「……仕方がない。ドモンには断りの電話を入れて――――」
「その必要はないぞ、キョウジ」
「えっ?」
 驚いたキョウジが顔を上げると、にっこりと微笑んだシュバルツと視線が合った。

「教授の研究室には私が行こう。キョウジは、ドモンの所へ行って、夕飯を御馳走してもらえばいい」

「で、でも―――――!」
「こういう時に遠慮する必要はないぞ、キョウジ。それにお前には、栄養が必要だろう?」
「そ、それはそうかもしれないけれど……! でも――――!」
 この局面で、変に遠慮しようとするキョウジにシュバルツは苦笑する。彼からしてみれば、面倒くさい事、嫌な事を自分に押し付ける様で、気が引けてしまっているのだろう。だが逆だ。こういう時にこそ、自分はキョウジに頼って欲しいと願っている。アンドロイドである自分には――――実際、固形物の『栄養』など必要ないし、キョウジの役に立てる事こそが、自分にとっては何物にも代えがたい喜びなのだから。
「心配するな。ネズミを捕まえるだけだろう? すぐに終わらせて、私もドモンの家に行くから」
「うん………」
 まだ曇った表情をしているキョウジにシュバルツは苦笑すると、その肩をポン、と、叩いた。
「じゃあキョウジ。一つお願いをして良いか?」
「何? シュバルツ」

「レインの料理を、少しでいいから私のために取っておいてくれ」

「――――!」
 目をぱちくりとさせるキョウジに、シュバルツはにっこりと微笑んだ。

「レインの料理は……『愛情』が沢山入っているから、好きなんだ」

「なるほど……!」
 シュバルツの言葉に、キョウジも合点がいったように頷いた。シュバルの身体を構成しているDG細胞は、人の『ココロ』を動力源(エネルギー)にする物だ。だからシュバルツは、食事を採る時はそれ自体の栄養を食べているのではなく、それに込められた『ココロ』を消化するのだろう。レインの料理はシュバルツにとって、そういう意味では間違いなく『極上の料理』と言っても過言ではなかった。
「分かったよ! シュバルツ! そう言う事なら喜んで!」
 キョウジの表情に、ようやく笑顔が宿る。それを見てシュバルツもまた、満足そうに頷いた。
「じゃあキョウジ、ドモンとレインによろしく言っておいてくれ」
「シュバルツこそ――――アカサカ教授の事よろしく」
「余計な仕事が増えても、文句は言うなよ?」
「仕方がないよ。多分教授は、『そういう』仕事も用意して、こちらに電話して来ていると思うから……」
 キョウジの的確すぎる分析に、シュバルツも苦笑するしかない。あの『おじいちゃん先生』は、キョウジによく微妙な雑用をついでに持ち込んでくる。それだけ当てにされていると言う事なのだろうが、こちらの仕事が増えるのは、多少困りものだった。もしかしたら教授に、キョウジがどれだけ仕事をこなせるのか、測られている気がしないでもなかったが。

「じゃあ、また後で」

 そう言って、キョウジとシュバルツは別れた。


 その日の夜更け。
 シュバルツは、やれやれとため息を吐きながら、キョウジのアパートの玄関までたどり着いていた。
(……案の定、遅くまでかかってしまったな……。結局、ラットの捕獲だけじゃなく、データの取り直しや整理の作業にも付き合わされたから……)
 そんなシュバルツの手には、他の実験のデータも持たされている。これらのデータも、改めて整理しなおさなければならないらしい。流石に今夜はもう遅いからと、教授の許可を得て、シュバルツはそのデータを家に持ち帰っていた。キョウジの仕事が増えた事になるのだが、これぐらいの量であればキョウジならば問題なく対処できると、シュバルツは判断していた。逆に仕事を持ち帰らずに手ぶらで帰った方が、キョウジが却って変わり身を頼んだ事を恐縮してしまう事をシュバルツは知っていたのだ。
(しかし、随分夜も更けてしまったな……。どうする? レインの手料理は食べに行きたい所ではあるが――――)
 時計は、もう夜の12時近くを指している。いくら兄弟とは言え、訪問するには、いささか遅すぎる時間だとシュバルツは思った。特に早寝早起きが習慣化しているドモンなどは、とっくに寝入ってしまっている事だろう。
 こっそり家に侵入して、キョウジに声をかけて、レインの料理を少し分けて帰って来ようか――――と、シュバルツが考えていた時、いきなり背後に何者かが降り立つ気配がした。
「―――――!?」
 シュバルツがばっと振り向くと、その視線の先にリュウ・ハヤブサの姿が在ったから、シュバルツはかなり驚いてしまう。
「ハヤブサ!?」
 シュバルツが声を上げると、ハヤブサが少しばつが悪そうにしながら声をかけて来た。
「悪い、シュバルツ……。その……『約束の日』まで、まだ日にちが在ることは承知しているのだが……」
「……………」
 じっとこちらを見つめてくるシュバルツの視線を感じながら、ハヤブサは言葉を続けた。
「その……気に食わなければ殴ってくれていい。だが……どうしても、お前に会いたくて」
「――――!」
 息を飲むシュバルツを、ハヤブサがじっと見つめてくる。
「少しでいい。触れたいんだ」

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